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第83話 遺産

とうとう真夏日を迎えた7月25日。中国国内で押収した書物や宝石類、布や金品が京都に送られてきた。船で舞鶴港まで移動させて、そこからは汽車で運んでいる。


「あまり、素手で触りたくないような代物だな」

「秀則さんが素手で触ったと知れば、値段が跳ね上がると思いますよ」


宝石類の中には、とても美しい首飾りや王冠のようなものまであった。中でも高そうなものを、軍手のような手袋を付けて確認する仁美さん。目利きの才能もお持ちなようなので、商品の値段を付けていた。


「秀則さんは、略奪行為の禁止をしてなかったですよね?」

「凌辱行為は禁止してたけど、略奪行為は黙認状態だったな。俺自身、最初は略奪が収入源だったし、略奪禁止にすると兵の不満が溜まるから禁止出来なかった」


略奪については、禁止することが出来なかった。兵の士気が保てなくなるのも理由の内だけど、俺自身が戦国時代への転移後に、最初は略奪を中心とした生計を立てていたから、という理由もある。自分がやっていたのに他人は禁止とか、都合の良いことは言えないからな。


「秀則さんは、1550年の美濃に降り立ったのですよね?しかしその後、1552年に織田家に仕えるまで2年の期間が不明瞭なので、何があったのか私達は知り得ることが出来ません」

「……知りたいなら話すけど、面白い話でも無いよ」

「知りたいです。戦国の世に降り立ってから、稲生合戦の時に先鋒を務めるまでの間、あまりにも記録が少ないので」

「勝家と殺し合った時までか。まあ、後で話すよ」


どうやらこの世界に残っている歴史書でも、1550年から1552年までの俺の動きは記録されてなかった。したことが悪人過ぎて削除されたのかもしれないし、単に状況証拠が少なかったからかもしれない。仁美さんが知りたがっているので、今夜にでも話そう。


「凌辱は今でも禁止だよね?ヤっているのは従軍中、見たことが無かったし」

「禁止ですね。軍内部に女性がいますし、性病の恐れもありますから」


凌辱は中国にいた時、見たことが無かったので心配はしてなかったけど禁止されていた。兵士の中に女性がいるから、解禁もされなかっただろう。性病の怖さは俺が戦国の世の時に説明しているので、過剰に警戒してくれている。


……子供を作りまくった俺が言うなって感じだったけど、俺自身は性病の心配が無いからあの動きが出来ただけで、性病のリスクがあるならもうちょっと躊躇したと思う。


当時の性病は南蛮船で運ばれて来ているけど、主に梅毒だった。というか南蛮船で運ばれて来る前から梅毒はあるような雰囲気だった。遊女が凄まじい勢いで広げていたので、一度梅毒に感染した遊女に関しては性交の制限を設けた。後は、梅毒に一度感染した男性の遊女屋の利用も制限した。


当時は潜伏期という概念も無くて反対派が多かったけど、抗争中に反対派の多くが梅毒によって亡くなったから次第に性交の制限を設ける流れになった。ゴムがあればコンドームを作ったかもしれないけど……そう言えば、今の日本ではコンドームを作ることが出来そうだから、後で作るか。


「AIDSとか、梅毒の予防は必須だからコンドームを作るか」

「エイズは、秀則さんの本にも書いていましたね。下手すれば国が傾くほどの病とのことでしたが」

「今の医療技術でAIDSが感染拡大するとか、人類が滅亡するレベルだからな。AIDSだけなら同性愛者の性行為の制限で何とかなるかもしれないけど」


今の日本で同性愛がどうなっているのか確認してないけど、一定数の同性愛者は存在するだろう。AIDSの感染拡大の主な原因は男性の同性愛者のせいとも言えるので、これを禁止は…………AIDSの感染者が見つかったらその地域限定で行おうか?いや、見つかってからだと遅いか。薬の開発は人体実験を解禁しても今の医療技術だと難しいだろう。


AIDSの登場は、1980年代だっけ?もしかしたら既に流行しているのかもしれないし、まだ感染者は出ていないのかもしれない。どっちにしろ、警戒はするべきだ。


「今の日本で、同性愛者はどういう扱いを受けているのか知りたい」

「……生産性が無いとして禁じられていますが、表だって反対する人はいませんね。同性愛者が存在したとしても、表には出せないでしょう」

「それなら、猶予はあるな。いずれ解禁するかもしれないけど、禁止なら当分の間は禁止のままで良い」


AIDSのことに関してはそれなりに知識があるけど、血が出るほどの性行為をすると感染率が急上昇する。そして血が出るほどの性行為は、大体が男性同士の交わりだ。これを禁止されていないのに禁止するのは難しそうだったけど、禁止されているなら放置で良いだろう。医療技術が発達するまでは、同性愛問題が表面化しないことを切に願う。


「俺が衆道を嫌っていたとか、そんな記録も残っているの?」

「はい。衆道を嫌い、息子達には衆道の悪い面ばかりを説いていたと記録に残っています」

「……確かに、デメリットしか話さなかったな。俺自身も、嫌悪感があったことは認めるよ」


俺自身は衆道の禁止まで踏み切らなかったが、息子達が禁止にしたようだ。反発は、凄いものだっただろう。しかし性病の感染リスクや、衆道にはまると子供が出来にくくなるという迷信まで使って禁止に追い込んだらしい。そこまで俺が嫌っているように見えたのか。単に俺自身がヤるのは嫌なだけで、他の人達が勝手にヤる分には寛容的だったはずだけど。


……今の日本社会に男色の人間がどれぐらいいるのかわからないけど、当分は我慢して貰うしかないな。

次の話から主人公の過去話が始まります。出来る限り短く纏める予定です。

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