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第74話 スカンディナヴィア連邦

オーレリーさん達がいた自由フランスの独立時の支配地域を世界地図に示して貰うと、ソマリアの他にもアラビア半島の先端部やサハラ砂漠の西側付近は保持していたらしいことがわかった。それを次々と奪われたせいで、ソマリアの上半分だけになってしまったのだろう。


また、気になっていたスカンディナヴィア連邦について聞いてみると社会主義国家だった。デンマーク付近はほとんどがプロイセン王国の領土だから、スカンディナヴィアはデンマークの一部、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドがくっついて出来た国だ。コペンハーゲンはスカンディナヴィアの領土とのことなので、バルト海への入り口はスカンディナヴィアが保持していると考えて良い。


北欧諸国はロシア帝国やプロイセン王国に狙われていたようなので、集まるのは不自然では無い。国家が形成される時、国民の団結度が1番高まるのは共通の敵がいることだ。この世界ではドイツとロシアの仲が良いから、コウモリ外交も出来なかったのだろう。北欧にある国々で独自に力を持とうとした結果、連邦化したのかな。


……スカンディナヴィアの存在を認知出来ていなかったとか、流石に日本の情報収集能力が低すぎる。新興国とは言え、大国並みの力を持つ国が形成されていたことに気付かなかったのは酷い。ロシアが意図的に隠していたのかも知れないけど、隠すメリットが無いように思えるから、ロシア側もまさかスカンディナヴィアを知らないとは思っていなかったのだろう。


スカンディナヴィアはフランス・コミューンと仲良くしているようなのだ。もしかして、フランスが率いる共産主義勢力が1番大きいのか?フランス・コミューン、イタリア、オスマン、スカンディナヴィアの四ヵ国が本当に協力関係にあるなら、プロイセン側が今まで復讐に動けなかった理由も分かる気がする。


「北アメリカ大陸の覇権争いで、フランスがイギリスを追い出したら次はアラスカを占領している日本が標的だろうし、今から自由フランスの人達を抱え込む以上、フランス・コミューンとは敵対の姿勢を貫きたい」

「たった、2600人のために外交方針を決定なさるのですか?」

「……自由フランスは小国ながらも国だったんだ。人口は最盛期で1500万人を超えていたそうだし。そんな国の、上流階級の生き残りを保護するんだ。数以上に利用価値は高い」


と言っても、プロイセン側もオーストリア=ハンガリー帝国やロシア帝国と協力関係にあるし、プロイセンの国力が把握し辛いからフランス側と差があるのかわからないな。ロシア帝国とフランス・コミューンなら、ある程度の情報が揃ったけど。この2国は、結構両極端だ。


ロシア帝国は一応帝国主義だけど、近年は統治能力の限界からか派閥が出来ていて内部が面倒なことになっている。皇帝がいる立憲君主制の国だけど、まとまりが悪い印象だ。シベリア鉄道は上部と下部で2本開通していて、下が第一シベリア鉄道、上が第二シベリア鉄道と呼ばれている。日本よりかは技術水準が上だろうけど、機械類が寒さに弱いせいで発展は遅れてそうだ。


内部に不和を抱えているロシア帝国とは対照的に、フランス・コミューンの団結度は高い。自由フランスが出て行ったこともあるだろうけど、一党独裁体制で新大陸重視の政策が功を奏しており、欧州一の強国になっている。近年、本国では高速道路の建設まで始まっているそうだ。日本と似た体制だけど、イメージ的には改変前の世界のソ連の方が近い。大粛清に近いこともやっているみたいだし。


「フランス・コミューンって一々言い辛いから、フラコミュと略して呼ぶことにしようか」

「自由フランスの人達の方を、フランスとするのですか?」

「そういうことだね。彼らを正式なフランス人とするよ」


仁美さんに、フランス・コミューンをフラコミュと呼ぶように言って、自由フランスの人達を正当なフランス人だとするように通達する。今までフランス・コミューンのことも、自由フランスのことも、フランスと言ったりしていたから分かり辛い面もあった。これからは、フラコミュ人とフランス人に分けられるから楽になると思いたい。


「秀則さんは、フランス人の懐柔が念頭にあるようですね」

「……懐柔というか、気分良く技術を吸収したいだけだよ」

「気分良く、ですか。

……私達が秀則さんの考えへ至るには、まだ何かが足りないようです」


外国人問題は、仁美さんの様子を見るに解決しそうで解決しなさそうだから、教育の現場で矯正するしか方法が無いと思う。改変前の世界でも、白人は未だに異種族を嫌っている人が多い。簡単には解決できない話だから、白人至上主義の人間が一定数存在し続けているのだろう。


名誉日本人の参考にした名誉白人という言葉を生み出した南アフリカ共和国では、1994年になってようやく全人種参加選挙が成立している。人種間の問題は、改変前の世界ですら未解決だ。差別的な意識の根絶に至っては不可能だろう。しかし、差別的な意識が悪いと言う風潮は生み出すことができるはずだ。まずは、それを目指そう。




自由フランスの人達を正式なフランス人だということにしても、結局、亡命して来たフランス人達はフランスへの帰還を望んでいないようで、むしろソマリアの方に帰りたいようだった。もう移住して100年以上が経っているようだし、フラコミュからフランスを奪還することは諦めている感じだ。


祖父からフランスへの想いを受け継いだというオーレリーさん自身もフランス本土には拘っていないみたいだし、少し早まったのかもしれない。でもアフリカ全土にフランス人達は広がっているから、オーレリーさん達を技術以外の面で頼る日も来るだろう。


日本を頼るという選択肢を選んだオーレリーさん達を、後悔させたくはない。他に選択肢が無かった、ということも大きいだろうけど。ソマリアから東へ脱出するとして、行先なんてオスマン帝国かイギリス領のインドか日本しか無い。


……利用できる時には、思う存分利用するつもりだけど。共存関係は日本の存在が大きすぎて無理かもしれないが、それに近い関係になることは可能なはずだ。

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