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第70話 外国人

外国人問題について、いきなり外国人を日本人扱いすることは日本人の多くが反対するだろう。一部の混血人の日本人化でさえ、言ってみただけで愛華さんが珍しく露骨に嫌そうな顔をしていたしな。かなり根深い問題でもあるけど、それでも優秀な外国人のことを考えると、制度だけでも作っておきたい。


「……名誉日本人、という枠を作ろうと思っている」

「名誉日本人ですか。外国人を、日本人とするのですか?」

「そうしないと、外国人が働く意味を失うからね。

名誉日本人と外国人の結婚も認めようと思う」


ということで、名誉日本人という枠を作ることにした。1番大きいのは、名誉日本人と認められた人物の結婚について制限されないことだろう。名誉日本人と外国人の結婚を可とした。子供は、実質外国人なのに混血人となりそう。


一応、これなら愛華さんの顔色は少し変わった程度だし、凛香さんも彩花さんも不服そうな顔はしなかった。この場にいる3人はタイプが違うけど、全員が真っ当な今の日本人の価値観を持っているから、判断基準としても使える。


「本当は出生地主義にしたいんだけどな。日本で産まれたら全員日本人って。でも、そんなのは豊森家の人間だけじゃなくて、日本人全員が認めないよね?」

「……秀則様の指示であれば、認められると思います」

「愛華さん、顔が歪んでいるよ。

彩花さんは、あまり興味無いの?」

「私は祖父の祖母がイギリス人なので……一応私は日本人として認められていますが、祖父までは混血人です」


彩花さんは母の父の母の母がイギリス人らしい。クォーターのクォーターは何て言うのか知らないけど、彩花さんの母は日本人となったのに風当たりが強かったとか。彩花さんの母親はそんな逆境にも負けずに心身共に強い軍人だったため、豊森家の人間の正妻になれたようだ。両親が軍人だったから、その子供の彩花さんも軍人を目指していたのだろう。


「とりあえず名誉日本人の規定を作って、外国人の3割は取得できるようにしようか」

「外国人同士の結婚が叶えば、その家庭内で異国の言葉が使えてしまいますが……」

「……ああ、外国人同士の結婚を禁止していたのは、子供に外国の言葉を覚えさせないためか。

外国語をそこまで徹底して排斥していれば、外交なんて夢のまた夢だったわけだ」

「一応、日本人が外国語を学ぶことは制限していません。豊森家の人間の中でも外国語を学んでいる人間は多数います」


名誉日本人の規定を作製し始めた所で、外国人同士の結婚を禁止していた理由が判明した。どうやら混血人に外国語の使用は禁止させていたらしい。えげつないほど、効率化を最優先している社会だ。


言語の問題は、生活や教育に関わってくる。例えば改変前の世界で、小学校から授業は全て英語で行うようになったとしたら、日本人の半数以上がドロップアウトするだろう。歴史や物理の授業が英語で行われるとか、寒気がしてくる。


言語が統一されないと、どうしても言葉の壁のせいで授業について行ける人とついて行けない人に分かれてしまう。だから国は基本的に1つの言語に絞る。日本なら日本語が公用語なのは当たり前だけど。そこまでは良いとして、外国語を排除しているのは良いのか悪いのか。


確かに外国人同士が結婚すれば、子供は自然とその外国語が話せるようになって、母国語になってしまう可能性がある。早期教育を始めている日本で、それは致命傷だ。


亡命して来るフランス人には、技術を持った人が多くいるだろう。自由フランスの旗を掲げていた人達が、フランス語を取り上げられることに素直に従ってくれるだろうか?……これで外国人同士の結婚が無理だと知れば、最悪、わざと足を引っ張るようなことをしてくる可能性もある。将来的なことを考えれば、名誉日本人にはある程度権利を持たせて融和を図りたい。


「……亡命して来るフランス人の数は合計で2600人だから、香港にでもフランス人街を作ってそこで生活して貰おうか?」

「外国人同士の結婚を認めるのですか?」

「そこは認めなくても良い。フランス人街でも日本人が見える範囲では日本語を使って貰う。看板とかは全て日本語だ。ただし名誉日本人として認められたフランス人とフランス人の結婚は認める。名誉日本人は基本的に日本人扱いだ。この場合の子供は混血人扱いで、名誉日本人と名誉日本人が結婚した場合のみ、子供は名誉日本人としよう」


流石に名誉日本人と名誉日本人の子供は日本人、にすると反発を食らいそうなので、名誉日本人とした。ここら辺は妥協しないと、日本人側が受け入れられなくなってしまう。日本語強要に関しては仕方ないけど、結婚に関してはなるべく自由にさせたい。


基本的に、名誉日本人は日本人と同等の権利を持たせるつもりだ。下策か上策かわからないけど、少なくとも外国人の立場は今より改善されるだろう。


「3割という線引きは、何処で行いますか?」

「日本語の上手さ、貢献度、在住年数とかで点数化して、外国人の上位3割ぐらいに任命していこうか。最初は少数で良いけど。今回の戦争で中国を丸々併合すれば外国人は凄く増えるから、3割という数には固執しなくても良いよ」


何とか話がまとまりそうなので、名誉日本人の規定は日本語が十分に話せること、日本に一定の貢献をしていること、心身共に優れていることの3つを条件にして、細かいところは愛華さんや彩花さんに任せよう。結局、外国人の男性が日本人の女性と結婚するための条件を低くしたような感じになりそうだけど。


……外国人に対する偏見って、いつの時代もどこの国でも変わらないから困る。とりあえず新しい枠を設けることで、解決への第一歩としよう。

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