第65話 教育制度
この国の教育制度は、小学校に相当する教育機関が5歳から10歳、中学校に相当する機関が11歳から13歳、高校に相当する機関が14歳から16歳となっている。大学は日本本土に2つしかない。大学は4年制だから、現役なら17歳から20歳までだな。
……本土にある2つの大学が、京都と東京にあるのは作為的なものを感じる。ついでだから、名前を京都大学と東京大学に変えておくか。
この制度を変えるとして、いきなり改変前の日本の15歳まで義務教育、に合わせると11歳から働かしている社会が混乱してしまうので、一先ず小学校の6歳から12歳までを義務教育にする。いや、今までも小学校は義務教育だったけど。中学校が義務教育になるのは当分先のことになるな。ついでに3ヵ月ごとの区分も排除。無駄にお金がかかっているから仕方ない。4月生まれと3月生まれで差が出ることは確かなんだけど、教育の現場では3月生まれに合わせるよう通達を出そう。
「……教養を高めたところで、ほとんどの者は社会に出てから活かすことは出来ませんよ?」
「そんなことは分かっているけど、それでも勉学の場を多く確保したいんだ。中学校、高校、大学の入学試験については面接を入れずに、完全に試験の点数だけで合否を決めるようにするよ」
「完全に、能力だけの試験ですか」
「面接を入れたら、どうしても容姿と家柄で差が出てしまうからね。真に頭の良い人間がそれで勉強を続けられなくなったら困る」
仁美さんから、どんなに勉強しても職場で生かせることは少ないと言われるけど、そんなことは無いと思いたい。物理や数学は軍事兵器にも関わるし、単に問題を解くという能力だけでも培って欲しい。
受験からは面接を排除。完全に頭の良さだけで合否を出すようにシステムから作り直していく。奨学金はどうしようかな?中流階級だと小学校を卒業すれば親からは生活費が出ない感じだし、就職優先な考え方だから、本当に勉強をしたい天才にだけお金を渡す感じで良いのかな?
「奨学金は、無償の分だけ作るか」
「奨学金、とは?」
聞いてみると奨学金みたいな制度が無かったので、一先ず成績が抜群だった生徒のみ、無償の奨学金を渡す方針にする。学費は実質教科書代だけだから、その分だけでも出そう。余裕が出てきたら無利子の奨学金の枠も作ろうかな。有利子の奨学金は……要らないか。改変前の日本でも問題になっていたし、無償か無利子の枠に入れない方が悪い、という態度で制度を作ろう。
あと国立大学を増やすとともに、私立大学が無いので私塾を大学にするよう通達を出して、日本の発展に役立つ人材を輩出するように命令。大学、高校の受験に関しては私立校の設立も見越して共通一次試験の導入を開始。マークシートなんて無いから採点を頑張れとしか言えない。経営難からアホが高校に行けてしまうという将来の遺恨を無くすために、共通一次試験での合格最低点も設けることにした。
研究者を増やしたいのは山々だけど、急いで育てても基礎が足りなくなる可能性があるから、教育に関しては一定のラインまで引き上げるだけで、後は他職から有能な研究者を引っ張ってくることで対応しよう。教員免許みたいな制度が無いのは不安だから、資格は必要にするか否か……これはこの場で決めるか。
「教員免許みたいな制度は、教師に必要だと思う?」
「我々に聞かれても、教員は採用の時に試験と面接で採用か否かを決めていますから、既に実施していると言えます……」
「あー、そりゃそうか。でも、教師が学生相手に発情するような人間だったら困らない?」
「何か、問題ですか?」
「えっ」
「えっ」
とりあえず、既に行っている試験の通過で教員免許の取得とするけど、もう少し時世が落ち着いたら見直そう。仁美さんがロリコンでも問題は無い、と言ったけど、手を出さないなら問題は無い、という雰囲気だった。性に対する趣味嗜好は寛容でビックリしたけど、まあ実際問題、手を出さないなら問題は無い。
「教師と生徒の恋は多いでしょう。私も学生時代に、可憐な女教師に告白しましたし」
「逆に、私は教師から告白されました。断りましたが」
そして思っていたより豊森家の人間で、教師と恋仲になったという報告が多かった。この国では教師という職に就いていること自体が優秀な人である証だから、豊森家の人間だと多いのだろう。不純だと騒ぐ人間がいないので、教える側と教えられる側で親密な関係になるのも納得はできる。
女性の出産についてのデータの中には他の年齢と比べれば少ないが、13歳とか15歳での出産も多くあった。22歳での出産を推奨していて、低年齢での出産についての危険性も周知させているのにも関わらず、幼い年齢での出産がある。つまりは、そういうことだ。
「ロリコンが異常性癖だという認識が無ければ、やっぱりそうなるのか」
「ロリコンは、未熟な幼女に性欲を覚える稀有な人、という意味でしたか。流石にそれは問題があるように思いますが、実際に存在するものなのですか?」
「何で、仁美さんがロリコンって言葉を知っているのかが疑問なんだけど、未熟な幼女って何歳ぐらいを想像しているの?」
「……3歳前後でしょうか?」
「それはペドフィリアだ。というか無理に英語を使わなくても幼児愛好者で良いな。まず、3歳児に性的興奮を覚える人とかいるはずが……いるのかな?」
仁美さんがロリコンの意味を知っていて驚いたが、考えてみたら俺が戦国時代の時にロリコンという言葉をよく使用していたから、言葉として残っていたのだろう。戦国時代にロリコンは多かった、というかそれが正常な世の中だったから何とも言えない。12歳の嫁を身籠らせた人もいたしな。流石に早いという認識はあったみたいだけど、我慢出来なかったらしい。
「秀則さんは基本年上……年上?の女性が好みですよね?」
「単に身体の大きな女性の方が見ていて安心するだけだよ。
……年齢一桁の幼子に手を出す人間だけは罰則を設けるか。合意の上でも、流石にアウトだ」
教師に関しては下手に基準を上げると目指す人がいなくなってしまうので、どう見てもアウトな年齢一桁の男女に手を出した人間への、罰則強化だけにしておく。罰則強化と言っても、教師への再就職を制限する程度だけど。教師の数が足りていない気もするので、国が教育職員養成学校みたいな機関を作るしかないかな。教師の数自体は増やす予定だ。公務員を減らすために、教師の数を削減するようなことだけはしてはならない。
……第二次世界大戦までは起こると思っているから、今の内から教育に力を入れれば、戦争勃発までには人材の育成が間に合うかな。世界統一を目指すとして、第一次世界大戦と第二次世界大戦、この間隔がどれほどかが問題になりそうだ。