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第62話 改変前の世界

7月12日の昼過ぎに豊森家の重要人物が豊森邸に揃った。予想通り美雪さんと仁美さんに加えて、予算会議の時に壇上にいた7人の人間が小さな部屋で一堂に会する。俺を含めてちょうど10人。たぶんこれで日本の上から10人が揃ってしまっているのだろう。


「じゃあ始めるか。最初に教えておきたいことがあるから確認するけど、俺のノートの世界大戦についての項目を読んでいない人はいる?」

「ここにいる人間は、全員があの予言書を熟読していると思います」

「そうか。

まあ、世界大戦なんてこの世界じゃ起こって無いから、予言と言う意味では外れた訳だ」


仁美さんに確認を行うと、全員が未来の事を記したノートを読んでいるという。まあ災害しか当たってない上に災害も西暦2000年以降はかなり精確に書いていたけど、それ以前は本当に大きな災害しか書いていなかったはず。


「……じゃあ、改変前の世界と改変後の世界の2つがあるという認識も全員が持っているの?」

「一応、概念は持ち合わせているかと。完全な理解は、していないかもしれませんが」

「詳しく話しておくと、俺が生まれた世界の歴史がこう一本道で続いていたとして、これが改変前の世界。

で、俺が過去に飛んで、分岐したのがこの改変後の世界。俺の書いていた未来の事は、この改変前の世界が基準だったから乖離していたことも多かったんだ」


次に、改変前と改変後の世界についての認識を再確認する。仁美さんは把握しているっぽいけど、全員がそうだとは限らない。とりあえず紙に一直線の線を引き、矢印を付ける。これを改変前の世界だと表現し、途中から分岐させて改変後の世界を表現する。ついでに予言書で色々と当たらなかった言い訳もしておこう。


「だから、2000年以降の災害については詳しく書かれていたのですか」

「そういうことだね。1995年の大震災以降の地震、豪雨、台風については印象に残っていたものも多いから、詳しく書くことができたんだ」


仁美さんが色々と推測をしているけど、災害に関しては覚えていたことだけを詳しく書いたから、一致した項目が多く感じたのだろう。一方で戦争については、的外れなことも多い。というか的外れなものしか書いてない。


「今から話すことは、改変後の世界では関係が無かった世界大戦のことだ。いつかきっとこの世界も体験する話だから、共有した方が良いと思ってね」


予言書の方では世界大戦について、参加国と勝敗結果、使われた兵器や戦術については書いていたけど、詳しい情勢や内容については書いていなかった。というか書く時間が無かった。この世界の人達とは一切関係無い話だけど、将来的に遭遇するであろう世界規模の大戦について、知っておくべきことは知っておいて欲しい。


「第一次世界大戦は、とある国の皇子が殺された事で始まった。結果、2000万人以上の人間が亡くなった」


オーストリア=ハンガリー帝国の皇子がセルビア人の暗殺者に殺され、オーストリア=ハンガリー帝国が無茶な要求を出す。その要求のほとんどをセルビアは受け入れたが、オーストリア=ハンガリー帝国は全て受け入れなかったことを理由にしてセルビアに宣戦布告した。


そして連鎖的に大国が宣戦布告を出し、世界を2つに分けた大戦争が起こったこと、初めは数ヵ月で終わると思われていた戦争が4年も続いたこと、二次災害も含めて2000万人以上の人間が亡くなったことなど、出来る限り多くのことを伝える。


「100メートルの前進に1万人の兵士が死ぬ計算、ですか。そのような戦争をこれから我々が経験すると」

「憶測だから、断言はできない。だけどロシアから聞いた西欧諸国の関係図と、亡命して来たフランス人達から聞き出せるであろうことを組み合わせると、世界大戦が起こるか起こらないかの判断はできると思う」


美雪さんが、これから世界大戦を経験するのか聞いて来たけど、断言はできない。もしも同じような規模の戦争をヨーロッパだけで経験してしまっていたら、こちらから仕掛けない限り起こらないだろう。……戦争は悪、という認識があっても起こってしまうのが戦争だけどな。


「第一次世界大戦が終わった僅か20年後に、第二次世界大戦が始まる。今度は1人の画家が、野心を持ったことで始まった。その戦争では5000万人以上の人間が亡くなって、人類史上最悪の兵器、核兵器が生まれた」

「……たった1発で広島では13万人、長崎では8万人が亡くなった爆弾、ですよね?」

「書いていた数字は推定だよ。正確な人数は戦争が終わってから75年が経ってもわからないし、被爆者が多すぎて正確な数を算出することは無理だったよ」


仁美さんが核兵器に興味を持っていたけど、開発自体を禁止する。対面に座っていた男性から、もしも敵国が核兵器を使って来たらどうするのか、という質問があったけど、その時は核施設にミサイルをぶち込む戦術をとる方針だ、とだけ伝えておく。


敵国に核施設を確認でき次第、軍で侵攻して破壊しに行く考えだな。あれは人類が手に入れてはいけない兵器だと個人的には思っているから、核兵器が開発されそうなら全力で止める。そのための諜報機関は必須なんだけど……亡命して来るフランス人の子供でも使おうかな。日本人と言うか、アジア人がヨーロッパの敵国に潜入することは現段階だと難しい。


第二次世界大戦では、日本がアジアの覇権を手に入れようとして失敗したこと、アメリカに喧嘩を売って敗北したこと、空母戦術が有効だったこと、潜水艦が凶悪になったことなど、ノートで伝えきれなかったことを中心に出来る限り多くのことを伝えていく。重要な資源である、石油の利用方法についてもだ。


第一次世界大戦と第二次世界大戦について、興味の持てない内容だから聞き流しても良いよと言っていたのに、全員が真剣に話を聞いて来るから少し話しが長くなる。今までの話を纏めると、第一次世界大戦と第二次世界大戦の結果、戦争は良くないとなって国際連合が作られた。この流れに違和感はないのか、みんな頷いて理解しながら話を聞いてくれる。


……本当に伝えたいことは、これからだな。

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