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第58話 子供の価値

障害者が戦国時代にどういう扱いを受けていたのかは所説あります。この小説では「どのような身分の子でも、肉体的な障害者は赤ん坊の時に見て分かるレベルだと殺していた。精神的な障害者に関しても会話が成り立たないレベルだと殺していた」とします。


管理社会での障害者の扱いに関しては避けては通れない問題なので今後も触れていきます。

精神障害者の現状を知って、知恵遅れと判断したら殺す時代よりかは進歩したなと思ってしまった。いや、問答無用で幼い頃に殺されるルートと、大人になって何も出来ないという烙印を押されたら人体実験に使われるというルート、どちらがマシなのかはわからないけど。双子だと片方を殺そうとする風習があった戦国時代で、双子が生まれてしまった時には我が子を身を挺して守った。だけど、障害者に関しては守れなかった。


時代がそうだったと言えば言い訳になるけど、双子の方は救った以上、俺のエゴだ。会話や運動すら出来ずに太っていく我が子を見て辛かったのもあるし、殺された時には解放されたとすら、思ってしまった。……しかもそれ以降、障害者の殺処分を見て俺は何も言わなくなった。まだ倫理観は変えられないし、全てを救う余裕は無いと言い訳をしていた。


「肉体的な障害を持つ場合は、どうなるんだ?」

「重度で無ければ普通に社会に出て働いていますよ。重度の身体障害者は生まれません」

「……ん?」

「親が、殺します。親が殺せない場合は、代行の者が海に投げ入れます。四肢欠損レベルの場合、あまりにも周囲の人間の負担が大きいので」

「そう、か」


ついでに、現状の障害者の処遇についての問題も先送りするつもりだ。後天的な場合や重度ではない肉体的な障害者は配慮されているようだけど、先天的な場合、かなり悲惨な扱いを受けている。しかし今の制度を考えた人も、きっと最大限の配慮をした上で、最終的に何もできない人間には小さな住処と食料だけを与える、という方針にしたのだろう。


犯罪者の中でも強制労働から逃げ出すような、更生の余地が無い反抗的な人間の場合は人体実験を行うという法を利用して、犯罪を犯したからという逃げ道を使って、今の仕組みを定めたのだと思う。責任能力の無い人に罪を負わせるのは、どうなんだろうとは思うけど、今の俺に突っ込みを入れる権利は無い。


「現行の制度は、何年前に出来たんだ?」

「1956年ですから、64年前ですね。それまでは問題を起こせばすぐに逮捕して収容していましたが、現在では全職種で不適合と判断されるまで、一定数の犯罪行為は看過されています」

「……まあ、少しずつ改善はされているのか。責任能力は、まだ概念が無かったな」


更生の余地の無い反抗的な犯罪者にも人体実験を行っているようだけど、これは強制労働から逃げ出した場合だ。強制労働の期間、きちんと従事していたら反社会的な思想でも解放されることになっている。実態を見ていないから何とも言えないけど、とりあえず死刑になることは少ないという認識で良いのかな?代わりに人体実験があるけど、死亡率は100%では無いから生き延びる可能性もある。


……皮肉なことに、この人体実験のお陰で人体の構造や臓器についての知識、栄養素の存在が広く認知されているのは大きい。全部、戦国時代に披露していたことだけど、うろ覚えだったし、正しい知識の裏付けがあるのはとても助かる。何気に細菌や微生物についての存在の認知も済んでいるから、今ならペニシリンが作れるかもな。アオカビから作るという知識しか無いけど。




「こちらが、岡山で稲作を行っている農場ですね。今の季節は雑草の除去や、畦道の整理が主な仕事でしょうか」

「10人で1組なのかな?随分と大きな田んぼだね」

「10人で1つの班です。若い人達の班は男性5人、女性5人が基本です」


話ながら移動していると、水田の方に着いた。作業している人達を見ると、男女比は1対1になっていることが確認できる。ここら一帯の水田の管理人は豊森家の人間なので、必然的に豊森家の思想を理解して実行している人間になる。桃園の方は男性が多かったけど、そもそも若い人があまりいなかった。桃の木の剪定や袋で覆う作業は大変らしい。


「あそこにいる、ブカブカの長袖の服を着たおじさんを連れて来て」

「かしこまりました」


その中でリーダーっぽい人間を指名して連れて来る。30代のおっさんかと思ったら、単に日に焼けた老け顔の24歳で、この農場に配属されてからは8年目らしい。


「農場に来る前は何をしていたの?」

「最初は軍人を志願して軍に入りましたが、射撃訓練で良い成績を残せず、二等兵止まりだったので5年で軍役が終わりました。16歳からはここで働いています。両親も米農家でしたし」


質問をして良いか尋ねたら、何でも聞いて下さいと返されたので、個人的な経歴から聞く。どうやら最初は軍人として働いていて、そこそこお金は稼いだみたいだ。8年前からは国営農場に就職してここの田んぼに配属されたらしい。既に奥さんが2人いて、片方はお腹が大きくなっていたから祝っておいた。


「180センチを越えている男が、150センチにも満たないロリっ子を孕ましている……」

「秀則様、彼女は22歳ですよ。彩花さんより年上です」

「ひっ、秀則様!?」


男の方が高身長で頭は良く、身体能力も良さそうなことを考えると、豊森家から女性をあてがわれたのかな、と思ったら単に男がモテているだけだった。家まで行き、紹介された嫁の2人はロリっ子体形だったので、そういうことだろう。高身長同士じゃなくて良いのか愛華さんに聞くと、あくまで推奨だからそこまで強制はしていないとのこと。重婚の方は男性側の身長が180センチを超えていれば、ほとんどの場合で認められるようだ。


「あれ、じゃあ既婚者なのに男性5人、女性5人の方に入れられているのか?」

「男性側が希望するなら、入れます」

「ああ……もっと増やすつもりか」

「いえ、そういう訳では、あのですね、男性だらけの方に入りたく無いと言うか……」


既婚者でも、男性側は未婚者グループに入れるらしい。既婚者で女性が働く場合は既婚者の女性だけのグループに入れられるそうだけど。既婚者の男性は、これ以上の結婚が認められない場合や希望者が既婚者の男性だけのグループに入れられるとか。


嫁さん達もOKを出しているみたいだけど、これは男の趣味が高身長の女性では無い、ということを知っている顔だ。どうやらこの男とは分かり合えないらしい。まあ、仲は良さそうで良かった。たぶん、幼い頃から3人は知り合っていたのだろう。農場で働き始めてからだと、この組み合わせは出会えなかっただろうし。


「3人はどこで知り合ったの?」

「えっと、こいつとは家が近かったので、それで。こっちとは一昨年の秋、京都で出会いました」


と思っていたら妊娠していない方はまだ出会って2年弱だった。京都まで行った時、帰りに寄った飲食店で出会ったらしい。コミュ力高いなこいつ。


とりあえず人となりは聞けたので、1日のタイムスケジュールや休みについても聞いてみようかな。この男は一応勝ち組っぽい感じがするけど、家はそれほど大きく無いというか、長屋の一室だから稼ぎはイマイチなのだろう。

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