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第44話 軍法会議

愛華さん、凛香さん、彩花さんにいろいろと食べられた日の翌日。午後になって後片付けなどが一段落したので今後の方針を決めようとしたら、深圳で大突破を果たして東莞まで進軍したという報告を受ける。場所的には香港の奥に深圳、深圳の奥に東莞があるって感じだったので、順調な進軍なのだろう。捕虜も大量に獲得したようだ。


また、南部戦線より中国艦隊を壊滅させて海南島の制圧を開始したという報告を受けて、中国の海軍が地球上から消え去ったことを悟った。最終決戦は蒸気船未満が数十隻と蒸気船が数百隻という構図だったそうだし、負ける要素が無かったな。


各戦線の報告を受けて、中国の全体図を見渡す。俺の記憶が正しいのかはわからないけど、大体の形ならあっているはずだ。海岸線はほとんど一致してると言われたし、大きな都市の位置も合っているのが多いとのこと。


「あれ?チベットって、どのぐらいの大きさだっけ?」

「チベットはこの中国に描き加えるなら、この辺りとなります」

「……インドから中国って、もしかして国境が接してないの?それならイギリスの介入はそこまで警戒しなくても良いかな?」


その中国の全体図に、愛華さんがチベットの位置を描き加える。思っていたよりもチベットが大きいから、イギリスは中国の内情を知ることが難しいのかもしれない。チベット自体がイギリスの傀儡国家だから、チベットからイギリス軍が侵攻してくる可能性は残るけど、間に国があるなら情報の伝達は遅れるはずだ。


「この侵攻スピードだと南の方は国民党軍が少ないようだし、共産党軍が居ない地域だから、早々に戦線の一本化が出来そうだ」

「そうですね。問題は南京近郊ですが、海軍と共同での作戦を立案中とのことです」

「上海戦線は南京を落とすまでが勝負だな。

……愛華さん、彩花さんが目線を合わさないんだけど」

「私もかなり平静を装っているので、彩花さんが視線を合わせられない気持ちは良く分かります」


彩花さんが昨日の件のせいか恥ずかしがって目線を合わせてくれないので愛華さんに頼ったら愛華さんも恥ずかしがっていたという。凛香さんは背後にいるから元々目線が合わないけど、いつもの鉄仮面が破顔しているそうだから見てみたい。見ようとしたら雰囲気を察知して隠れてしまうから見れないのだけど。


部屋で報告書をまとめて読んでいると、ドアをノックされる。中に入らせると、何処かで見かけたような顔だちだった。


「失礼します。第16歩兵師団師団長の秀二郎少将の副官、品川中尉です」

「……ああ、品川さんか」


入って来たのは秀二郎さんの副官の品川さんだった。平壌で戦況報告を受けたっきり、会ってなかったので忘れるところだった。というか、姓に階級を付けるものだと思っていたけど、豊森家の人間の場合は名前に階級を付けるのか。まあそうじゃないと豊森中将や豊森大佐が複数いて、混乱する原因になるだろうし仕方ないか。


「不破野二等伍長の判決が出ましたので、ご報告いたします」

「俺に報告すると言っている時点で、俺が接触した人物だとわかってるよね、これ」


不破野さんも第16歩兵師団所属なので、秀二郎さんが判決に関わったのかな?軍法会議という言葉自体は知っているけど、実際にどうやって行われているのかは知らない。戦国時代だと裁判風に刑罰について話し合いをすることすらあまり無かったし。


「軍法会議って、軍人が裁判官役をするってことで良いんだよね?」

「はい。完全に国の司法からは分離されており、速さと機密性の保持を重視しています」

「そっか。なんとなくわかった気がする。

それで判決はどうなったの?」


愛華さんに聞くと、国の司法からはかけ離れた機関で、軍人が裁判官を担当することが分かった。たぶん秀二郎さんも判決に関わっているのかな?豊森家の人間であることに変わりはないし。


そして判決がどうなったのか品川さんに聞くと、神妙な面持ちで読み上げる。


「不破野二等伍長は勲章の授与の取り消し、昇進の取り消し、罰金50万に加えて、むち打ち20打です」

「……女性に、鞭打ち20打?」


その内容は、かなり残酷なものだった。


……いや、女に鞭打ちって鬼かよ。戦国時代にいた時、極悪人にキレて鞭打ち50回と叫んだら、その犯人は背中がずる向けになって死にかけていた記憶がある。赤ん坊……というか孫を攫って売ろうとするような人だったからギリギリ心は痛まなかったけど、不破野さんが鞭打ちって耐えられるのか?


でも殺人事件を故意ではないとしても起こしてしまったと見るなら、懲役刑じゃないだけマシなのか?誤射した先が重罪になりやすい偉い人だった訳だし、かなり酌量はされてそうだ。


「また、鞭打ちに関しては豊森家の人間が行うこととします。秀則様が希望なさるのであれば、秀則様自身が刑の執行人を担当することも出来ます」

「鞭を打った経験とか無いんだけど。

ああ、俺が決めろってことか」


どうやら、鞭を俺に打たせる算段らしい。おそらく、俺が鞭打ちを行うのならば全員が納得するし、力加減の調整もできるということだろう。


……鞭の特注でもするか。戦場に来て、跡が残らないような鞭を作る羽目になるとは思わなかった。確か鞭は一本だから、痛くて跡が残ってしまう仕組みのはずだ。だから鞭先が十本ぐらいの鞭を作れば、痛いだろうけど跡は残らないはず。


刑の執行は、流石に俺自身が行うのは無理があるというか、鞭を振ることすらもまともに出来ないだろうから彩花さんに頼もう。周りの人間の中だと1番非力だし、優しい子だからきつく叩くことは無いだろう。そんな優しい子に鞭打ちを強要する俺はどうなんだ、という話になるけど。


……形式だけの刑の執行、か。

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