第42話 共産党の影
共産党軍が壊走した6月20日の夜、愛華さんに共産党軍の使っていた小銃を見せられる。
「どうしても見て欲しかったので持って参りました」
「……螺旋溝、あるのか」
愛華さんが昼間に捕虜の装備を見るように言ったのは、螺旋溝がある小銃があったからだ。捕虜にした3万5千人の内、1400人が使っていたとされる小銃には螺旋溝があった。サイズは日本軍の小銃より大きくて重いかな。精鋭が使っていたと共産党軍の隊長達は説明していたようだ。ついでに、ロシアから流れ着いた武器とも喋っていた。
思っていた以上に共産党軍の兵士が情報をボロボロと吐き出してくれるのは嬉しいけど、問題はロシアから提供された武器だということだ。
「ロシアはまだ動いてないよね?北方大陸領が侵攻されたら、鉄道網があるからすぐに情報が伝わるはずだし」
「ロシアが軍事的な行動をしていればわかるはずですが……そもそもロシアから日本との交易を始めたいと申し入れがあったのに、中国軍へ武器の供与をしていたのはおかしな話です」
「……ロシア内部で、共産主義者が活動をしているとか?」
「ちょうど100年前の1920年にロシアでは共産主義者による大きな暴動が起きましたが、その時に結成された"評議会"は軍によって鎮圧されたはずです」
ロシア帝国の政府とは今の所、手紙のやり取りしか行えていないようだけど、友好的な印象を受ける内容だった。これが演技なら笑えないが、そうではないと感じたのでロシア内部に反政府勢力が存在しており、それが中国共産党に武器の供与をしているのだろう。
ロシアの小銃は装弾数5発と日本軍の小銃より1発少ないものの、飛距離の面で優れており、貫通力は高いことがわかっている。精度も同じぐらいかな?重いのと長いのが欠点だけど、それ以外は日本軍と良い勝負をするだろう。信頼性だけは日本の圧勝するだろうけど。
中国軍にこのライフルを使いこなせる人材が少なかったのは、日本軍にとって非常にありがたいことだった。しかも、供与された2000挺の内、1400挺が手に入ったのは大きい。ロシアの反政府勢力が共産党軍に供与した2000挺という数は少ないようにも思えるけど……無料で2000挺の小銃と弾薬って気前が良いのかな?
問題はそのロシアの反政府勢力が、どこまで中国の技術レベルや軍事レベルが低いことに気付いているか、だ。中国軍は弱いということが広まってしまったら、中国と国境を接している国は遠慮なく中国との国境を越境して侵攻を開始するだろう。既に軍力の全てを日本国境に回した中国がそれを防げるとは思えない。
「……ロシアの中に反政府勢力がいるはずだから、探るように言っといて。たぶんロシア自体が支援をしている訳じゃないと思うよ」
「それは、ロシア国内の共産主義者達ですか?」
「たぶんね。あり得ない話じゃないと思う。元々、共産主義ってソ連……ロシアのイメージだし」
愛華さんにロシア帝国内にいるはずの共産主義者達を探るように指示を出す。一応、北方大陸領とロシアは陸路で繋がっているから、ある程度の内情を探ることぐらいはできて欲しい。ロシアとの国境付近にある村や町ではロシアと交流があったみたいだし。
「共産党軍を先に潰さないと不味いか。いや、どちらにせよ国民党軍にもいずれ技術は伝わるから、早期決着しか道は無いな」
「北京までの線路の敷設は1週間後に終わる予定です。それが終われば、北京から素早く各方面への侵攻が可能となりますが、線路の敷設を待たずに進軍を開始しますか?」
「……そうだね。もう北京に攻撃して来ないことを確認したら、休養が終わり次第、南東方向へ進軍を開始して欲しい」
「かしこまりました」
鉄道の敷設は侵攻と並行して行われていたが、最近は侵攻ペースに対して敷設ペースが遅れている。今でも1週間以上北京で足止めされているにも関わらず、さらに1週間がかかるということはレールの生産が追い付いていないようにも思える。簡単そうに見えて線路の敷設は大変なのだろう。
それでも1週間後には国境から北京まで汽車で人や物を運べるようになると言われて、かなりの人手を使って線路の敷設を行っていることが伺えた。
「……今日はゆっくりと休まれてはどうですか?」
「うん。流石に眠たいから、今日は早めに寝るよ」
眠たくなって目を擦っていたら、愛華さんから早く眠るように言われる。一応、俺の体調面での管理も行っている訳だし、睡眠不足だと心配になるのかな。新規加入した親衛隊員の1人が、お香のスペシャリストのようで、よく眠れるようにとお香を焚いてくれた。たぶん、北京市内にあったものを接収したのだろう。
万が一身体に悪影響があったとしても、寝て翌日になってしまえば癒えてしまうし、そもそもそんなお香は焚かないだろう。しばらくすると、言葉では表現できないような香りがしてきた。優しくて上品な、少し柑橘系のような匂いも混ざった香りだ。今日は深く眠れそうだなと思っていたら、意識が落ちる直前、傍にいる誰かが衣服を脱ぐ気配を感じた。
……頑張って薄く目を開くと、そこには下着のみとなった凛香さん、上だけ脱いで恥ずかしがっている彩花さん、それと既に全裸な愛華さんがいた。
「まだ、起きていますね。意識はある状態でしょうか?秀則様はそのまま微睡みの中、流れに身を任せて下さい」
「て、抵抗しないでくれると嬉しいです」
「……動かなくても良いよ」
完全に貞操の危機だけど、抵抗する気力も湧かない。愛華さんが上に跨り、快感を与えてくれる中、どうしてこうなったのか薄れていく意識の中考える。
……不破野さんに自分から近寄ったせいかな?それとも、少し前に本当の意味での抱き枕を愛華さんに対して実行してしまったからかな?原因は幾つか考えられるけど、心地の良い感覚に陥りながらの微睡は、3人が満足するまで続いた。
R-18なシーンや描写はカットしますが、気が向いたらノクターンノベルズの方で投稿するかもしれません。次回は日本の性意識についての話に入るので、飛ばして読んでも問題の無いようにします。