第3話 肥大化する軍事費
大日本帝国は現在、アラスカからインドネシア、オセアニア、東南アジア、ハワイまで広大な領土を保有している。既に原住民はほとんどが淘汰され、移住した日本人との混血が9割以上を占めている。
……過去、先住民の男は農奴として働かされたり、戦争に駆り出されたそうだ。1方で先住民の女は子を2人以上産むことを義務付けられ、移住した日本人の男とヤリまくったらしい。直球で言うと職業:子作りとか世界観が狂い過ぎていてもう援護が出来ない。そしてその結果、民族浄化がほぼ完了してしまっている。早々に進出したフィリピンやインドネシアはもう日本人しかいないレベルだとか。
実質的な日本の領土が広がったことで、大きな問題が1つ生じている。それは軍事費の割合が増大していることだ。
「北方大陸軍が大陸に8師団16万人、樺太に3師団6万人、アラスカに5師団10万人。合計32万人。
朝鮮軍が7師団14万人、九州軍8師団16万人、四国軍5師団10万人、本州軍11師団22万人、蝦夷軍9師団18万人。
沖縄4師団、台湾3師団、フィリピン13師団、インドネシア14師団、ハワイ6師団、オーストラリア12師団、ニュージーランド5師団、南方大陸軍は合計で21師団。
計134個師団268万人の歩兵師団か。多すぎるよねこれ」
「……歩兵師団の維持費は歳出の2割程度に収まっていますが、何か問題がありましたか?」
「部隊の維持だけで税収の2割が吹き飛んでいるとか、もの凄い無駄遣いをしていると思うけど。誰かこの異常事態に気付かなかったの?」
「今の大日本帝国は仮想敵国を多く抱えているため、多くの常備軍を維持することは仕方のないことかと」
「だからと言って平時でも維持だけで税収の2割が吹っ飛ぶ軍なんていらねえぇ……」
仁美さんから伝えられた国力に見合っていない数の歩兵師団の軍事費は歳出の2割を占め、その軍事費の大半が維持するために使われているため、新兵器の研究、開発にまでお金が回っていない。しかも歩兵師団だけでの話である。騎兵師団や海兵師団などの維持費も合わせると歳出の3割近くにまで維持費が膨れ上がる。誰か異常を感じる人間はいなかったのだろうか。
そもそもこの国境線だと本土に大規模な軍隊を置かなくても良いし、樺太や沖縄、台湾に駐屯している軍は間違いなく無駄である。内部に奇襲を受けたとしても敵軍の補給線は間違いなく切れるし、各地域でその都度徴兵しても問題無いほどの人口がある。というか都市の防御力もテンプレ通りに街づくりしたお陰か、そこそこ高い。
とりあえず軍人への給料をカットするため、1個師団当たりの連隊の数と1個連隊当たりの兵数を減らす。
「基本となる師団が師団司令部に3個歩兵旅団と砲兵連隊、工兵連隊、補給兵連隊ね。とりあえず1個連隊の人数を2000人から1500人に減らして歩兵旅団を2個にしたら?」
「大規模な改革をそんな簡単に言わないで下さい……すぐにそのように致しますが、他に師団編成で何かありますか?」
「補給兵って何?輜重兵と衛生兵と整備兵を組み合わせた感じ?」
「輜重兵が食料や衣類などを運ぶ兵のことであれば、その通りです」
「それなら面倒だろうけど、補給兵を輜重兵と衛生兵と整備兵に区分して欲しい」
軍事費削減の件を仁美さんに提案すると、少し困ったような表情になったけどすぐに真顔になって遂行すると言われた。本当に今までが正常だと思っていたのか。
今までは1個連隊2000人で1個師団2万人。師団の内訳が3個歩兵旅団(6個歩兵連隊)、1個砲兵連隊、1個工兵連隊、1個補給兵連隊だった。俺がノートに大雑把に書いていた未来の軍隊、を参考にして編成したらしい。
それを1個連隊1500人で1個師団1万人。師団の内訳が2個歩兵旅団(4個歩兵連隊)、1個砲兵連隊、1個輜重兵連隊、衛生隊、整備隊とした。工兵は各連隊に150人程度の工兵中隊を組み込むように指示。近代の軍の編成とかを俺はあまり詳しく無いので具体的な細かい数字の指示が何1つ出せないが、そこは仁美さんが具体的な指示を出してくれそうだ。
……戦国時代にいた時からふわっふわな提案しかしていない気がするけど、いつも形にしてくれる人が近くにいることは幸運なことなのだろう。
後は樺太、沖縄、台湾、フィリピン、インドネシアに展開している軍を可能な限り解散させるように提案する。これで相当な数の元軍人が生まれるから、新しく建設する研究所や工場での労働力に当てよう。元軍人だから頭の方はたぶん大丈夫。優秀な人ほど軍に入る思考のようだし。
「そういえばこの人口統計は正確なの?」
「間違いありません。日本本土に1.2億人、大陸に1.5億人、太平洋の島々に合計2.4億人、合わせて5.1億人の日本人がいます」
「……これでインドや中華を手に入れたら、間違いなく日本人は世界人口の半分を占めるね」
領土が広いせいか人的資源は凄まじいことになっている。ただ、質に期待してはいけない。四則計算程度は全国民が出来るけど、それ以上を学ぶには狭き門をくぐらないといけないことになっているため、大半が実質小卒だ。そのお陰で洗脳出来ているからタチが悪い。
今の日本で例えると中学受験を通る人が2割、高校受験を通る人が1割、大学受験を通る人が1割ぐらいになっている。卒業出来る人はそれぞれ入った人数の5割程度だから、最終的な割合としては中学受験を志す人の0.025%が大卒。100万人当たり250人か。そして狭き門をくぐる大半が面接試験で強い豊森家。そりゃ420年もの間、豊森家が支配するわけだ。
狭き門をくぐり抜けて学業を修めても、国営に関わろうとする豊森家以外の人間は早々に本土外へと飛ばされて地方の領主となり、教師役をさせられたり、延々と開墾をさせられる。本土への帰還は早くても十数年後でその頃にはもう日本を変えようとする気力を保っている人間がいない。
こんな状態でよく420年間もの間、国家として保ち続けたな、としか思えない。あとは研究機関への投資が少なすぎて研究者が育ってないのも問題かな。これだけ頭の良い人間を選別して最終的な選択肢が官僚か将校の2択しか無いのは勿体無い気がする。
どうせなら研究所を集中して作らせたいかな。でも工場も建てたいし、軍港も整備したい。造船所も改良したいし、正確な人口統計や思想調査も実施したいから、何から手を付けようか迷う。
……とりあえず、関係が冷え切っている諸外国との貿易を始めようか。
太平洋の島々=インドネシア、オーストラリア、ニュージーランド、ハワイなどの島々
島の定義がこの世界では違うため、このような言い方になっています。