第374話 パナマ王国
2025年6月16日。世界に平和が訪れてから、急激に暇になったのでゴロゴロしながら今後の展望でも考える。まず日本国内では緩やかなインフレと、目覚ましい経済成長を始めるはず。改変前の世界で第一次世界大戦後、アメリカは欧州各国の復興を支援し、債権を回収していた。
その欧州から回収された債権は、アメリカの各企業への投資に回され、瞬く間にアメリカは発展を遂げた。その後、紆余曲折はあるものの限界を超えた市場の成長を続けて、一気に株が暴落。世界恐慌が始まり、第二次世界大戦に繋がった。
……世界恐慌は、必ず起こるものだと思っている。日本以外の世界全体が民主化をしようとしているんだから、国の手から市場は離れ、暴走する。その暴走の後、確実に弾けて不況が訪れる。
日本でもこのままだと敗戦国側からの賠償金やドイツ、ロシアからの返済金がどんどん研究開発に投資されて、設備に投資されて、建築方面に投資される。……国有企業に勤めている人が多いから、そう簡単に大不況に陥るとは思えないけど、注意はした方が良いだろうな。
「軍の装備や制度も見直し続けないといけないし、やるべきことは多いか」
「1番の最優先事項は、北アメリカ大陸の領内開発を急いで行なうことですね。それと、北アメリカ大陸の完全な統一ですか」
「大コロンビア王国まで攻め入るつもりは無いけどね」
「パナマ運河だけ独立させるなら、大コロンビア王国とは全面戦争に入るでしょう?」
仁美さんには伝えていたけど、現在はパナマ運河を独立させようとしている。コロンビアとは、全面的な戦争状態に入るだろうな。パナマ運河だけを独立させた後は、パナマ運河の主権を奪い、パナマ運河を日本のものにする予定。
既に、パナマ地域に住んでいる人達から野望に塗れた人材を現地採用している。パナマを軍事的に支援して、コロンビアから独立出来るかは五分五分かな。国際連盟に早速目を付けられそうだけど、アメリカを発展させようとしたら、あの運河は手元に置かなければならないから仕方ない。
「本当に独立した後、言うことを聞くのかは不安だという声も上がっていますが……」
「独立してしまったら、後は日本の言うことを聞くしかないと思う。下手したら後ろ盾が無い状態で、コロンビアとの戦争状態に突入してしまうのは避けたいだろ。日本に反抗した瞬間に潰されるなら、どうしようもないと思うけど」
「国際連盟を頼ったりは、出来ないでしょうか?」
「日本が却下するから無理だね。そもそもパナマ王国の政府になる人間と、コロンビアの人間は同じ民族だし、民族自決の精神も関係無いただの内紛になるはず」
独立後、物事がそう上手く運ぶかは、正直に言うと分からない。だけど俺は、独立さえさせてしまえばこちらのものだという認識だ。独立した時点で、コロンビアとの和解はあり得ない。そして日本の意向に背くことも、またあり得ない。
時間が長引いたり、隙を見せていると第3国からの介入があるかもしれないから、それは警戒しないといけないか。とりあえずはパナマ王国が独立するまでの間、工作員達が頑張ってくれるから信じて待とう。予想ではあと1月半ぐらいで蜂起出来そうだから、年内には独立している可能性がある。
パナマ運河を手中に収めることが出来れば、非常にメリットが大きいことは言うまでもない。西海岸から東海岸へ資材を運ぶのにも重宝するし、軍事面でも大きすぎるメリットがある。
パナマ運河が無かったら、南アメリカ大陸を回り込まないと大西洋に行けないしな。あとたぶん、北アメリカ大陸の北側は通れない。少し調査して、すぐに現地へ派遣した人達が無理だと判断したし、海路として利用するのは無理だと思う。
「ちなみに、メキシコは戦争準備をしているの?」
「日本が戦争準備に入ったのと同時に、慌てて準備に入っていますね。一部の強硬派以外、諦めている雰囲気です」
「あ、問題があるのはその一部の強硬派だけなのか。フラコミュとの戦争はいきなり戦争を仕掛けられたメキシコが可哀想だと思ったけど、これなら自業自得という可能性もあるな」
「ですが、すぐに戦争をすることは出来ないですね。今ここでメキシコへ侵攻すれば、日本の方が悪くなってしまいます」
メキシコに関しては、動員している状態で既に経済へダメージが行っている状況だし、このまま待てばそれだけでメキシコに嫌がらせをすることが出来る。フラコミュに領土を荒らされ、軍は疲弊している今、日本が戦争準備をしているというだけで反日感情が高まりそうだから、メキシコは扱いやすい国だな。
日本軍は、あくまでも攻撃が飛んで来たら応戦しろとだけ言っている。現地の緊張度は高まっているみたいだし、案外早くに開戦する可能性はあるけど、まだ戦争を回避する可能性も残っているか。その時はその時で、言いがかりを考えようかな。
「……まだ、テキサスが欲しいという言い分は取り下げてないんだよな。あの砂漠地帯にも石油は湧いたし、都市も作る予定だから譲る気は毛頭無いけど」
「あ、石油に関してですが、採掘量が多すぎるので調整が入りました。このまま採掘し過ぎると、価格を維持するのが難しいです」
「ペルシア湾沿岸地域と、北アメリカ大陸の大部分を保有すればそうなるか。石油製品をどんどん開発するのも環境悪化に繋がるし、匙加減は難しいな」
石油から作られる石油製品は、現在凄い勢いで増えている。自動車の普及率は下がることが無いから右肩上がりだし、石油の消費量自体は増え続けているはず。それでも駄々余りということは、油田地帯を確保し過ぎたか。
石油依存社会は早めに抜け出すつもりだけど、それでも30年ぐらいは石油製品が天下を取るだろうな。電気自動車の開発も始めたけど、流石に色々と技術的に難しいし、開発するなら先にソーラーパネルからになりそうだ。それもまだ構想段階だから、改変前の日本の技術力は本当に遠く感じる。




