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織田信長の天下統一を手助けして現代に帰った俺が何故か祭り上げられている件について  作者: 廃れた二千円札
第十ニ章:世界大戦 3年目

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第363.5話 夢の国

「何もかも、可視化して……平等性を上げる……」

「秀則さん?」


10月11日の未明、豊森仁美は秀則の寝言で起きる。秀則の寝言はまるで演説をしているかのような話し方で、仁美は思わず聞き入ってしまった。


「監視カメラを大量に設置し、AIによる見張りをすれば犯罪は格段に減ります。バレないと思っているから、犯罪が増えるのであって、100%犯罪者が捕まる世の中ならば…………。

万引きという大したことの無いように思っている人が多い犯罪で、日本の経済は崩壊します。この世の中には、悪人が…………」


途中で黙り込む場面もあるが、その度に何故か自己紹介から入る秀則に、仁美は不自然さも感じる。その自己紹介も毎回工夫をしており、新鮮味があった。


「国が、働く場所を提供するべきです。しかし私は、共産主義のような世界を望んでいるわけではありません。人の能力は、不平等である。そのために生まれる貧富の差は、許容するべきでしょう」

「世の中の全てを透明にするのです。そうすればどこが巨悪か、把握することが出来ます。腐ったヘドロを、見えやすくしましょう。真面目な人が損をする社会なんて、潰してしまいましょう」

「確かに、行き着く社会は管理社会でしょう。そしてそれは決して、フィクションで描かれるような打ち滅ぼされるための悪の管理社会ではありません。個人の自由を尊重する、悪を許さない管理社会です」

「別に食べる物に制限が加わることもありませんし、職の選択が無くなることもありません。自由時間は何をしても良いですし、労働時間は今よりも格段に短くなります。そうですね、今の日本は無駄を省けば、1日5時間の労働を週4日でも十分に豊かな生活を送れるでしょう」


時々口を開く秀則の寝言は、明確な意思を持って話していると仁美は感じる。口調の変化や、寝言なのにはっきりと話していることは気にも留めず、話している内容を記憶するよう、仁美は必死になって秀則の言葉を聞く。


「上級国民達は、この国を駄目にしてしまいました。しかし今ならまだ間に合います。下級国民の方が多いにも関わらず、多数決で物事を決められる今の日本の内に、私達を国会へ送り込んで下さい。そうすれば必ず、日本を改革します。改革が成し遂げられれば、自由な時間は今までの倍以上となり、働く時間は半減するでしょう」


寝言の中で新日本改革党という名前が何度か出ており、それは秀則が将来的に立ち上げるかもしれないと語っていた政党名に近かったことに、仁美は薄ら寒いものも感じる。これは改変前の今の時期の秀則が、演説をしているのかもしれないと思った仁美は、記録員を呼び出し全ての寝言を記録しているか確認する。


「……ただ今、交代をしました。秀則様は夜中の3時頃より喋り続けており、内容は多々あれど、基本的には改変前の日本を批判するような内容です」

「何か、多用していた言葉などはありますか?」

「下剋上、が1番感情の籠っていた言葉でしたね。それとどうやら、これは演説だけでなく、会話らしきものをしている時があります」

「何度か、相槌を打っている時もありましたからね。ただ何か、政治的な活動をしていることは伺えます」


下剋上という言葉を聞き、仁美は秀則が改変前ではただの一般家庭で産まれた一般人だと語っていたことを思い出す。しかし、どうしても仁美は秀則がただの一般人だとは思えなかった。秀則とは違い、仁美は元々秀則が改変前の日本でも何かを成し遂げる偉人なのだと考えていたからだ。


今回の件で、秀則は改変前の日本でも何かしらやらかしていたことをはっきりと認める。もしかしたら、有名になっていたかもしれないことまで秀則は話し、それでも今とは関係ないと言い切った。秀則にとって、改変前の世界は消え去った世界だからだ。


「……何か、変なことを喋ってた?」

「いえ。変なことは喋っていませんよ。時々、改変前の日本の悪口は聞こえてきましたけどね」


秀則は何か口走ってしまったか確認し、仁美の解答に3割ぐらいは喋っていたかなと判断する。実際には、夢で見た動画を撮っているシーンや生放送をしているシーンで喋っていたこと、全て露呈していたが、それに秀則が気付くのは当分先の話になる。


「どんな悪口だったのか、凄く気になるんだけど」

「巨悪を潰し、ヘドロをお掃除する、みたいなことを言ってましたよ。それだけ改変前の日本は、腐敗が進行していたのですか?」

「社会全体が腐敗して、腐り落ちた部分が大量発生していたかな?……透明性の向上が、必須であるとは思えないけど、必要ではあると思ったよ」

「悪いことをしていなければ、透明にしても問題無いですからね」


改変前の日本の社会全体に対する腐敗について2人は話すことになり、秀則は改めて告発制度の有用性を把握する。腐敗を指摘すれば一攫千金という社会体制であり、告発する人が偉いという風潮は、一朝一夕で作れるものでは無い。ここに至るまでの過程と結果を秀則は思い出し、再度思考を巡らせる。


「……世界大戦が終わり、国際連盟が設立されれば『国家』という言葉が重たい言葉になる時代が来るかもしれない。その時に日本は、世界を相手に戦えるか?」

「……確証が無いので、その問いに頷くことは出来ません。ですが、その時になれば私は頷くような気がしますね」


秀則は世界を統一するという大雑把な最終目標を、より鮮明なものへと変えていく。そのために必要な国力は、既に十分揃っていた。

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