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織田信長の天下統一を手助けして現代に帰った俺が何故か祭り上げられている件について  作者: 廃れた二千円札
第十ニ章:世界大戦 3年目

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第349話 家名

8月9日。彩花さんの妹である織田知永さんと、その夫がやって来たのでとりあえずもてなす。北アメリカ大陸戦線で活躍していた第3軍の司令官とその参謀なので、普通に今の社会的地位は高い方だな。というかその第3軍を放り出して、2人だけで来て大丈夫だったのか気になる。


「軍は、秀一郎さんに預けたのね。それなら大丈夫か」

「はい。あ、改めまして自己紹介致します。第3軍司令官の、織田竜馬と申します。本日はお招きいただき、ありがとうございます」

「あー、竜馬さんは楽にしていて良いよ。北アメリカ大陸での活躍も聞いているし、後で戦地でのお話や知永さんとの馴れ初めでも聞きたいかな」


竜馬さんは30歳で、知永さんは22歳なので8歳差の夫婦か。今の日本なら、別に珍しくもない年齢差だ。女性側が10歳ぐらい年下という状況は、わりとよくあることだし。そしてこの夫婦は、この年の差なのに知永さんが竜馬さんを尻に敷いてる状態だよね。


知永さんの外見は、彩花さんと一部を除いて瓜二つといった感じ。でもその一部分の差が大きすぎるから、見分けるのは容易だけど。姉妹なのに、メロンと蜜柑ぐらいの差があるのだから世の中は非情だ。それと彩花さんの方が、ほんの少し背が高いかな。顔の造形は、本当にそっくりだし姉妹であることは間違いない。


「で、そっちが色々と壊そうとしている知永さんか。織田家を頼ったのは、謀反でも起こす気だったから?」

「……私はただ、日本をより公平でより良い国にしたいだけです」

「知永!」

「彩花は怒らなくて良いよ。どうせ知永さんの要求は、ある程度推測出来ているし」


豊森姓を捨てたのは、日本の社会を批判したかったからだと俺は推測している。となれば批判先は当然、豊森家の持つ特権や社会的地位についてだろう。豊森家の権力や地位を、元豊森家の人間が批判するのだから極まっているとしか言い様がない。


「完全にその人個人の能力によって仕事を割り振りたいと言ってたことは、どちらかというと後付けした理由だと感じたよ。本命は、豊森家の保有する特権的地位と権力を捨てさせたい。違うか?」

「……概ね、その通りです。そのために豊森姓を捨て、今の豊森家が支配層として本当に正しいのか考えていました」

「その結論は?」

「やはり、正しくないです。豊森家というだけで上の立場に昇進しやすいというのは、日本にとって癌でしかないと思います。後、織田家もそうですね。織田家の方が人数は少ない分、能力が足りていないことも多いです」


知永さんは、随分とはっきり物事を言い切る。豊森家の人間しかいないような環境のど真ん中で豊森家批判をしているのだから、隣の竜馬さんは顔色が真っ青で俯いたままだ。現役軍人がそれで良いのかと思ったけど、この人も織田家だからという理由である程度は考慮されている人間か。


織田家も罵倒されているのに怒らない時点で、竜馬さんは会話に追い付いていない可能性もある。第3軍司令官としての竜馬さんの活躍は、知永さんによるものだろうなと推測することは出来た。


……竜馬さんは、扱い易そうな人間ではある。知永さんの寄生先としては、都合が良かったのかな。元々、知り合いではあったのだろうし、潜伏先として好都合だったから織田家を選んだようにも見える。本当にこの夫婦、上手く行っているのだろうか?


で、知永さんの言い分は管理社会を目指す上で重要なことではあるから反論が難しい。実際、豊森家だからと犯罪を犯しても内々で処理されたり、軍での昇進もしやすい。軍の中核を占める豊森家の比率は、非常に高いしな。でもそれは、豊森家の人間が多いからでもある。


人間は、一定以上の能力を持っていてもそれを十全に活かす機会が少ない。特に軍では、それが顕著だろう。1番上以外、それなりに仕事が出来ればそれで良いのだ。決まった水準以上の能力を持っているのであれば、後は信頼できるか否かで決めて行ける。その結果、豊森家だらけの上層部という構図になっているんだけど。


「最終的に、家名を無くすべきだと思います。特に民間企業では、稀代の天才が築き上げた会社を、無能な2代目、3代目が潰すことも多いです。私は、個人の持つ能力で社会的地位が決まるべきであると主張します」

「……家名を無くす、か」


知永さんの提案は、家名を無くすということ。家名を無くしてしまえば、血縁関係が希薄になり、豊森家優遇政策も無くなっていく。今よりも、効率的な社会になっている可能性は高いかもしれない。


「出来るわけないでしょう。誰もがあなたのような思想を持っているわけでは無いんです。そもそも今の日本で、これ以上効率というものを上げる必要はあるのですか?」

「彩姉は、分かってるでしょ。もしも軍の上層部に豊森家が多く無ければ、この戦争の被害はもっと軽くなっていたって。特に彩姉は、元海軍だったから私以上にそれを感じたはずだよ」


横から彩花さんが口を挟み、それに知永さんが反論する。豊森家が軍の上層部に多かったから、被害が多かったというのは彩花さんが黙ってしまった時点で肯定したも同然だ。海軍の方では、世界大戦で起こった海戦でも有望な船乗りや若い高級士官が次々と船と供に沈んでいった。


もしも豊森家以外の人材が艦長クラスまでどんどん昇進するなら、もっと被害は少なかったのか。少なくとも軍は、根本的に考え直す必要があるレベルで豊森家優遇処置が為されている。そしてそれは、俺には出来ないことだな。

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