第345話 ルーマニア参戦
2024年7月13日。真夏が目前に迫った時期に、ルーマニアがプロイセン陣営として世界大戦に参戦した。フラコミュやオーストリアがルーマニアに対してプロイセンへの石油の輸出を停止しろと言い、またオーストリアがルーマニア国境へ向けて軍を展開し始めたので、ルーマニアから先制パンチを貰った形だ。
……実際はプロイセンが、ルーマニアに喧嘩を吹っ掛けるようオーストリアを誘導したんだけど。戦争が長期化したからこそ、国の誘導合戦や国民への扇動合戦も激しい。でもまあ、ルーマニアの軍規模が大したこと無いとはいえ、フラコミュにとって敵国が増えるのは辛いだろうな。
ルーマニアも勝ち馬に乗りたいという思惑はあっただろうし、この参戦は大きい。自国への被害が少なくなりそうだと判断してから参戦するのは、少し卑怯な気もするけど味方なら歓迎するしかない。そもそも、プロイセン寄りの国家だったし。
「……ルーマニアの軍規模は、40個師団だけどほぼ旧装備って感じか」
「今までも壁として機能はしていましたし、これからも壁としての役割に期待する感じですかね?」
「いや、日本やロシアから物資の援助して、ハンガリー方面へ侵攻して貰うつもりらしいよ?統一司令部から、格安で日本の武器や装備を売ってくれという依頼があったし」
「……日本軍の旧世代武器をそのまま流すよりかは、フラコミュ軍から鹵獲した武器と複製した装備を送り付けましょうか?」
ルーマニアの陸軍は大したこと無いと聞いたけど、動員すれば40個師団も戦力として提供してくれるなら活用しない手はない。フラコミュ製の銃や装備を売り払って、ルーマニアにも戦って貰う。これでブルガリアもプロイセン陣営として参戦してくれれば、オスマンとオーストリアへの圧力は相当なものになるだろう。
と思っていたらルーマニアと仲の悪いブルガリアはフラコミュ陣営として参戦。そもそもブルガリアはオーストリア寄りの国家な上に、ルーマニアには領土を分捕られた過去もあるため、ルーマニア側での参戦は出来なかったのだろう。これでは実質的な戦力は変わらないというか、下手したら状況は悪化したか?
いよいよヨーロッパの方ではスペインとスイス以外、血を流してない国家が無いような状況だ。戦後の復興は時間がかかるだろうなと思いつつ、日本の災害の方も復興を急がせる。あの大震災から半年経ってもまだ半分が避難所生活だから、早くどうにかしてあげたい。
こういう時に被災地で国有企業に務めていた国民を大工として扱えるのは良いんだけど、それでも人手は足りて無い。あと、仕事を憶えるのにもやっぱり時間はかかるし、作業効率自体は悪い。まあ、北アメリカ大陸で家を建てまくらないといけない以上、現場の職人は何人増えても良いから問題無いか。
「ブルガリアの戦力は、25個師団程度ですね。オスマンから独立した国家ですし、ルーマニアよりかは装備の質も軍の精強さも上だと思います」
「あー、結局は戦線が増えた分、統一司令部の仕事が多くなっただけだか。バルヘルム元帥と文人さんの働き次第だな、これは」
「……そのお父さんが、今後は統一司令部のトップになりそうとのことです。なので階級が見合うよう、大将への昇進が話し合われてます」
「え?この状況で交代するのって大丈夫なの?欧州戦線に送っている日本軍の規模、多少は増えたと言っても20個師団程度でしょ?」
彩花さんとルーマニアやブルガリアの参戦について話していたら、文人さんが統一司令部のトップになりそうだということを聞く。分からなくは無いけど、プロイセン軍がプロイセン王家の元帥の命令にも従わなかったのに、日本人が指示を出して大丈夫なのかとは思う。
まあ、現地には現地にしか分からない事情とかもありそうだし、日本としては素直に受け入れて文人さんを昇進させるしか無いのだけど。そう言えばプロイセンに留学した今川さんは、現在大佐まで昇進しているそうで、そろそろ欧州戦線にあるプロイセンの軍団の司令部に入る模様。優秀な人は、外国でも勝手に昇進するんだな。
一方で海軍の士官としてプロイセンに留学した明佳さんと香保子さんは、現地でセロハンテープの会社を立ち上げて大儲けを始めた。明佳さんに至っては現地でプロイセンの株式を勉強して株に手を出し、軍資金を5倍ぐらいに増やしているので明佳さんも普通に凄い。
軍人として見るなら何をやっていると言いたいところだけど、プロイセン海軍はもう潜水艦艦隊しか存在していない上に流石に潜水艦の艦隊については触らせて貰えなかったらしく、暇らしいので大丈夫なのだろう。現地で女性や子供の雇用促進もしているようなので、プロイセン側にとっても有り難い存在だと思う。
セロハンテープは1年以上前に明佳さんへ案を送ったけど、半年以上に渡る試行錯誤の末、何とか現地で開発出来たみたい。日本にもセロハンテープの作り方は伝わって来たし、非常に便利だと好評だ。そして何より、プロイセンでバカ売れしているのが凄い。
「プロイセンは物資が少ない状態だから、修理とかにセロハンテープを使いたい状況は多いんだろうな。明佳さんと香保子さんに商才があったことも相まって、莫大な利益を築いているよ」
「……こればかりは、日本で開発しても良かったのではないかと思ってますよ。それに、また新しく依頼をしたんですよね?」
「うん。似たようなものだし、バンドエイドの開発を依頼したよ。手当とかにも活躍できるから、日本で開発したいのだけど、そのための費用や研究員が尽きているから仕方ない」
セロハンテープの次は、バンドエイドの開発も依頼する。使える天才を、放置する手は無い。資金も十分に溜まっているだろうし、世界の発展のために頑張ってくれと伝えた。




