第328話 アフリカ
アフリカの植民地とは、どういうものなのか正しく現実を知っている状態では無かったかもしれない。イタリア王国軍残党による強襲上陸のお陰で、そう思えた。なので、同じアフリカの植民地から小国として独立を維持し、戦いを続けていたオーレリーさんに話を聞く。
この人、元々は自由フランス国の大統領補佐官だったんだよね。そして、近年までアフリカでオスマンやイギリス、イタリアを相手に戦い続けていた。その時の戦闘について、聞いてはいたけど詳細には聞いてなかったし、意識もしていなかった。そんなことよりも、技術の方が重要な時期だったしね。
しかし、今になってアフリカの大地がどうなっているのかを聞いておくことは重要だと思った。案外、アフリカも豊かな都市へ発展しているのかもしれない。そう思ってオーレリーさんを訪ねると、久しぶりに会ったからか結構老けたような印象を受けた。
……やっぱり、異国の地で余生を過ごすのは辛いものがあるのかな?
「イエイエ、ムシロ、トテモ良クシテクレテイルノデ助カッテマス」
「……そりゃ、正面切って文句を言えない立場であることは分かってるよ。だけど、もうちょっと色々な物を要求しても良いからね?」
オーレリーさんを含めて、年配の人はわりとのんびり過ごしながら技術開発に協力してくれている。たぶん、飛行機とか自動車はオーレリーさん達が居なかったら、確実に完成は遅れていた。
そんな研究に携わったオーレリーさん達にはそこそこの報酬を渡しているのだけど、子供達の割合も多いから苦労はしている感じかな。そんな子供達も自立はしていっているから、生活は楽になっている模様。
亡命時に8歳だった山田アリスちゃんは、既に12歳で来年からは久仁彦の家庭教師にもなる。4歳から外国語教育を始めるのは早いなという印象だけど、よく考えたら改変前の世界でも4、5歳頃から英語をしていたって人はそれなりにいたな。
世間話はほどほどにして、早速アフリカ大陸の発展具合について聞く。
「自動車ハ少シデスガ、走ッテイマシタヨ?都市モ数万人ガ住メルヨウナ街ガ幾ツモアリマス」
「数万人の規模の街は、点在するぐらいには発展してたと。首都の人口は、30万人ぐらいだっけ」
「自由フランスの最後の土地であったソマリアを侵攻され始めた時、自由フランスは8隻の内燃機関がある船を持っていました。その船で、2500人以上が亡命しています。
……そう考えると、イタリア王国の残党は侮ることの出来ない国力でしょうね。三国同盟の会談に、呼ばれなかったことを気にしているのかもしれません」
「イタリア王国の位置の都合上、どうやってロシアまで来るんだという話になるから誘わなかったのは仕方なかったけどね。でもまあ、イタリア王国の要求は認めないといけなさそうだな」
彩花さんが思い出したかのように伝えてくれたけど、滅亡寸前の自由フランスでも8隻の大型船を保有していた。となると、アフリカ領へ国力をそれなりに持った状態で逃げたイタリア王家と残党達は、かなりの戦力を保有していそうだ。元々無視する気は無かったし、味方が思っていたよりも強かったことは素直に嬉しい。
しかも、彼らの要求はイタリア本土の回帰以外して来ていない。もしかしたらオスマンに占領されたエジプト領をイタリア王国軍が取り返した時に欲が出るかもしれないけど、日本としては気にしなくても良さそうだ。
……国力が僅かなら、オスマン軍が簡単に蹴散らしていただろうしな。オスマン軍がイギリス軍をエジプト領へ追い払ったから、イタリア王家の植民地と国境を接し、それがきっかけでイタリア王国は戦争へ本格的に参戦したのだから、戦争というのは何が起きるのか分からないものだ。
とりあえず、コンタクトはとってみたいけどソマリア沖まで日本の海軍の支配が届くかは微妙。制海権を確保するのは難しいし、とりあえずはイタリアとオスマンを相手に艦隊決戦を挑んでからだな。
今フラコミュと共闘しているイタリア社会主義共和国と、アフリカ領へ逃げたイタリア王国の国力差はそれなりにあるはず。イタリア王国の逆襲が、上手く行けば戦況は大きく変わるか。フラコミュ陣営は地中海を警戒しないといけなくなるし、砂漠での消耗戦を狙うことも出来る。
厄介なのは、その位置だけか。南アフリカ王国がアフリカ大陸横断鉄道を手に入れたということは、更なる北上も狙ってくるだろう。このまま行けば、エチオピアの南から侵攻されそうだな。
一応、日本も南アフリカ王国と僅かな繋がりがあるから交渉はしてみるけど、駄目だった場合は頭が痛い。反イギリスだからフラコミュ陣営入りした国を、引き戻すだけの外交力は無いしな。
「植民地ヘノ投資ハ、ドコモ積極的ニ行ウハズデス。ダカラ強奪シタリサレタリ……イタリア王国ハ、ソマリアマデ保有シテイルナラカナリ戦エルハズデス」
「イタリア王国の国力は、どこまでイタリアの植民地だったか、だよね。フラコミュがアフリカへ手を出していないから、スペインとイギリス、イタリアとオスマンが主な取り合いをしていたと。チュニジアも保有しているなら、小規模な艦隊ぐらいは持ってるか」
地中海でも、イギリス艦隊は活躍していた報告は届いている。インドが独立するまでの間、各地に点在するイギリス艦隊はそれなりの戦果を残していた。その陰で、隠れていたということか。
日和見というよりは、機を待っていたようにも見える。正直に言うとアフリカでオスマン軍の足止めをしている、ぐらいしか認識していなかったけど、大きな役割を担える存在かもしれない。
出来ればオスマンを挟み撃ちにしたいし、紅海やソマリア沖の制海権のために海軍基地も置きたい。色々と見えて来たものも多いし、イタリア王国は復活させておきたいな。




