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織田信長の天下統一を手助けして現代に帰った俺が何故か祭り上げられている件について  作者: 廃れた二千円札
第十一章:世界大戦 2年目

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第323.5話 中東戦線異状なし

新年を迎えた祝いは、前線で戦っている兵士にまで届かない。2024年1月7日、中央アジア方面軍として空軍のトップに据えられてしまった島津千夜は、日々補給や隊員の練度のことを考えて一から航空隊を編成し続けていた。


自身が1番効率を追い求められると悟ったその日から、島津は常に爆撃のことを考えていた。戦場の空気を肌で感じ取り、同胞の被害を減らすために、敵軍を減らす最大効率を追い求め始めた。特に知人が死んだり大怪我をするほど、島津の策は残酷さを増し、大きな戦果が挙がる。


結果、空軍のトップに据えられてから僅か4ヵ月の期間でペルシア軍とオスマン軍の正面戦力は20万人にまで減った。ペルシア領内で衝突を開始した際、互いの戦力は日本軍が50万人、ペルシア軍が60万人だったが、オスマン軍が合流したのにそれが3分の1にまで減少したのだ。


ペルシア側は減った軍勢の全員が死んだわけでは無く、単に撤退をした部隊も多い。しかし正面戦力が20万人まで低下した上に、日本軍は80万人にまで膨れ上がったのだから、本来であれば素早く突破をしても良い戦力比だ。


現に陸の指揮官は前進をしたがっているが、今の日本では空の事情が優先されているため、日本側も正面戦力は減らし続けた。突破できるのに突破をしない理由は、単純に空軍の練度を上げれる時に上げようという島津の計画があったからだ。そしてそれは、秀則の許可を得てから本格的に始動した。


「……都市への爆撃は、昼間は精密爆撃、夜間は無差別爆撃が1番効率は良さそう、です。精密爆撃で軍事拠点を完全に破壊し切る方が、後々に良い影響を与えるので」

「夜は闇夜に紛れて無差別に爆撃する方がパイロットも楽ですから、事故に気を付けつつ適当な爆撃を続けるべきですな。逆に精密爆撃は、同じ空域を幾つもの爆撃機が通過するので、被弾率も高いのが問題点です」

「その被弾に関してだけど、被弾した場所について、データを集めるって言ってたと思う。その際に、一切被弾の無かった場所が、1番装甲の必要な部分だと、報告書に付け加えたい、です」

「……集まっているデータは被弾しても帰還出来ている機体ですから、確かに本当に不味い部分への被弾というのはデータに現れませんな」


島津の右腕として働いているのは、豊森家の文孝(ふみたか)だ。人望の厚い彼が、島津に1番扱き使われているのは当然の流れだった。島津が現状のポジションに慣れ、休みなくその頭脳を使い始めると、それを支える人の方が振り回されるようになったのだ。


島津の無差別爆撃は民間人への被害割合も高く、戦略爆撃で巻き添えを食らう民間人の数は数十万人に達しようとしていた。ペルシアは西部への難民の列が増えていき、徐々に経済が傾きつつある。


そして2人は帰還した機体がどこに被弾したのかのデータを見て、明らかな空白部分があることに気付く。被弾データとして集まるのは、被弾しても墜落しなかった部分だけだ。逆に言えば被弾していない部分がデータに現れれば、そこは被弾すれば帰還出来なくなる部分になる。


白黒の飛行機の絵に、帰還した機体の被弾部分を点として打って集まったデータには、エンジン部分とパイロットの操縦席周り、そしてプロペラへの動力部分への点が無かった。そこの部分の装甲を強化するよう、島津と文孝は本国へ伝える。そして新しく設計されている戦術爆撃機や戦略爆撃機に、そのデータは活かされる。


「合法的に爆撃ドクトリンを開発出来るチャンスだから、2月まではひたすら爆撃を続ける、です」

「……そうですな。空軍の力を思い知らせることが出来る上に、陸も将来的な被害が減るのであれば喜びましょう」


既に撤退した部隊も多いが、残っているペルシア側の軍も多い。撤退する瞬間を島津が完璧に読むため、撤退したくても出来ない状態が続いているのだ。空軍による敵歩兵への爆撃は、撤退時にこそ真価を発揮する。だからこそペルシア側の軍は要塞や塹壕に立て籠もっているが、島津は容赦なくそこへ爆撃を与え続けていた。


陸軍も砲撃を続けており、確実に被害を減らしながら日本軍は前進をしていた。そんな状況で、本国からの連絡が入る。


「ほう。オスマン軍を追い詰めるため、ペルシア湾近郊でオスマンとイタリアの艦隊に決戦を挑み、海からも支援砲撃を行なうそうですぞ」

「……もう、十分に追い詰めてると思う」

「おそらく、後方への強襲上陸も行なわれるのでしょう。塹壕や要塞へ逃げ隠れたために、包囲されるという最悪な状況に追い込めますな」


秀則はアバダン油田をいち早く確保しておきたいがために、ペルシア湾からの強襲上陸を計画してみてと参謀本部にお願いした。直接アバダン油田に乗り込むのであれば、放火や施設の破壊が間に合わないのではないかという淡い期待が込められている。そしてこの案は、豊森家の頭脳達が実行しても問題の無い段階にまで洗練された。


島津の意向も汲み取り、ペルシアへの上陸作戦は4月に行なわれることとなった。それまでの期間で、島津は如何に敵軍を減らせるかについて考える。決して、殺すとは考えない。あくまで島津は、敵軍の数を減らそうと考え続ける。


強襲上陸と大突破の日まで、ペルシア軍とオスマン軍は塹壕の中でやり過ごす日々を続けた。

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