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織田信長の天下統一を手助けして現代に帰った俺が何故か祭り上げられている件について  作者: 廃れた二千円札
第十一章:世界大戦 2年目

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第318話 疑心暗鬼

12月21日。今日の会談はイギリスの世界大戦への参加を決定付けたロイズさんの演説の再現から始まった。資料として貰った、前のロイズさんの演説内容は頭に入っていたけど、より世界平和を願うような演説に変わっているな。他国の肥大化を、許したくはないような内容になっている。この部分でロイズさんは、スペインという味方がいるのも大きい。


「敗戦国に過度な賠償金や領土の割譲を迫れば、それが次の戦争を引き起こすことに何故気付かないのですか!……みたいな内容です」

「あー、やっぱりロイズさんは色々と頭の回転が早そうだな。バルヘルム元帥が凄い勢いで反論してるけど」

「バルヘルム元帥の主張も一理あるんですよね。過度に搾り取り、荒廃させ、反抗の意思を摘み取ることは大事ですから」


いよいよロイズさんが本格的に領土割譲の制限を訴えようとして来ているので、日本側も美雪さんが主張を開始した。その内容は、イギリスの自分勝手さについてだろう。


「美雪さんも、英語やロシア語がペラペラなのは羨ましいな。

……何て言ったの?」

「イギリスはこの世界大戦の参戦時にオスマン帝国の庇護下にあるヒジャーズ王国やスカンディナヴィアのノルウェー領を要求していたことや、現時点での日本の侵略主義はイギリスの妄執であることを主張していますね。プロイセンやロシアに、受けは良いみたいですね」

「あ、じゃあロイズさん達の主張は通らないな。そもそもこの同盟の核となるのはプロイセンとロシア、それに日本だ。案外、心配をしなくても良かったのかな」


スコットランドとスペインの存在は、プロイセンやロシアにとっても鬱陶しい存在だ。既にプロイセンは残っていた旧デンマーク領の回収や、旧ノルウェー領の併合を行なっている上に、スウェーデンを実質的にはプロイセンの傀儡国家にまで仕立て上げた。


ロシアも旧フィンランド部分を併合しているので、ロイズさんとスペインの存在は鬱陶しい限りだろう。しかし、スコットランドとスペインが敵に回れば厄介だということは3国の共通認識だ。スペインは無傷の軍隊がいるし、スコットランドは英艦隊を引き継いでいるからな。


「では、各国家の代表による多数決の採決を行ないましょう。今までの会談で決まっていた分割案に関して、再考するかしないかを。ちょうど5ヵ国の代表団がいることですし、各国1票でよろしいですね、と美雪さんが提案しました」

「美雪さんは、議論の誘導が上手いな。多数決なら、イギリスとスペインは呑むしかないし。

……あれ?俺が手を挙げる流れなの?」

「秀則さんが手を挙げて良いと思いますよ。日本国の、代表なのですから」


さっさと多数決をしてしまうと、再考の余地無しとしたのがプロイセンとロシア、そして日本だ。当たり前の答えなのだけど、ロイズさんの取り巻きやスペインの外交官連中が声を上げる。


「……イギリスも含めた全会一致でないと、スペインは認めないらしいです。スペイン自体は投票を放棄しますが、スコットランドも認めることが出来る現時点での和平案と戦勝時の分割案を作製しろと」

「うわ、本当に鬱陶しい」

「それに、今までも重要な物事は全て全会一致で決めていたこと。これだけを多数決で決めるのは、違うのではないかと主張しています」

「今回も、主要国だけで見れば全会一致なんだがな。スコットランドの案は、戦勝時に戦勝国側の利があまりにも少ないから、プロイセンもロシアもまともな相手はしないだろ」


戦争は、一時的な解決に過ぎない。改変前の世界で、戦争がありふれていたのは戦勝国側の要求が少なかったからだと俺は考えている。お互いに屈服するまでの絶滅戦争には、最早発展しなかっただろうし、あの世界はきっと永遠に戦争を続けるのだろう。


戦争の連鎖を終わらせるための世界の統一、その正念場の1つであることも自覚しようか。スコットランドは、もう、日本の拡大を拒むだけの国家だ。この戦争が終わったら、日本が倒すべき国リストのトップに据えよう。現状のトップであるメキシコは、何故かフラコミュの民兵組織に手痛い反撃を受けて一部で逆侵攻を受けているようだし、打倒スコットランドを最優先にしても問題は無い。


……いや、これだけ日本のことをよく知っているなら、外交でスコットランドを降すことは出来ないだろうか。既に、ロイズさん達は日本の強大さに感付いている。恐らく、ロイズさんの日本への警戒心が強くなったのは中国を併合した辺りだろう。あの時期にロイズさんは日本へ手紙を送っているし、パイプを作りに来た。


祖国を一度、簡単に亡ぼせる女だ。感情的にならなければ、上手く交渉は出来るかもしれない。ロイズさんの一派である海軍大臣が存在することは、日本でも把握している、そのイギリスの海軍大臣が艦船を全てスコットランドへ送り込んだのだから、イギリスには経済の崩壊に対するある程度の計画が存在していたことが容易に想像出来る。


「……イングランドの情勢の方が分からないって、どういうことだろうな」

「イングランドはイギリスから色々な負の面を引き継いでいそうですね。きっと、潰れさせるために生まれた国なのだと思います」


リバプールとマンチェスターがスコットランドに属するなら、いずれ起こるだろうブリテン島統一戦争は完全な出来レースとなる。……イングランド国民になってしまった人達の貯蓄や私財は、まとめて吹き飛ぶのだろう。


スペインは恐らく、フラコミュ陣営にも接近している。どちらの和平案がスペインにとって都合が良いかで、敵味方がはっきりとすることは分かっている。現状、スペインの外交官達を、強く追い詰め過ぎても不味い。……スペインがフラコミュ側で参戦して来たら、コロンビア王国や南米の国々まで敵に回る。


それでも勝てる可能性は当然残っているけど、可能な限り回避したいシナリオであることには違いない。

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