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第26話 破綻

中国が攻めて来てから4日目となった5月9日の夜。ようやく遼寧地方の瀋陽市に到着した。平壌に着いた時も思ったけど、本土の外なのに日本の都市と同じつくりで街にいる人は日本人しかいない。汽車での移動中、日本の浄化政策の具体的な方法を聞いていたので、気分はかなりブルーだ。


「外国人、混血人、日本人に区別して、外国人や混血人が子を残すには相手が日本人である必要があって、さらに外国人や混血人には色んな制約や条件が盛り込まれるって、そりゃ民族浄化されるわな」

「日本人の定義は、外国人が3代前までにいないことが条件でした。現在は緩和されて2代前の4人の内、混血人が1人ならば日本人として扱うことが条件に加わりました」

「それじゃあ……今でもクォーターは日本人じゃないってことか」


ついでに言うと、外国人と混血人の男は総合的に見て優秀で無ければ、結婚できないという恐怖。家畜よりえげつない管理をされている。女は言うまでもない。


「では中国人に関しては、ハーフを混血人とし、それ以降は日本人として扱いますか?」

「ええ……そもそも分けるという概念が、いや、もう、これこのままで良いか」


愛華さんからハーフまでを混血人とし、それ以降は日本人とすることを提案されたけど、その時の愛華さんの顔が悲壮感溢れる顔だったため、しばらくは現行のままで行くことにした。きっとクォーターですら、日本人として認めたく無いのだろう。外国人そのものに対して嫌悪感がある感じではないけど、外国人や混血の人が日本人を名乗るのは許せない、って感じなのかな。


国に対する帰属意識と一緒でこれは根深い問題になりそうなので、少しずつ意識の改革をしていかないといけないのだろうか。全世界の人間が日本人化するのが先か、日本人の精神が円熟するのが先か、どちらが早いかな?


「それで、今回の中国の暴走について原因とかはわかる?」

「北京に潜入させていた工作員に、今回の侵攻について原因をまとめさせたものがこちらにあります」


どうやら中国に対しては珍しく人を潜入させているようで、今回の中国の侵攻原因についてまとめた報告書のような、メモ書きのような紙を対中国戦線の軍団長である秀一郎さんから渡された。その紙を愛華さんと一緒に読むと、色々と中国国内についても理解してしまった。




……とりあえず今の中国、中華民国は民主主義を謳ってはいるけど、実質的には中国国民党を率いる大統領の一党独裁体制だ。対抗馬として中国共産党が存在しているけど、国民投票で共産党が国民党に勝ったことは無いので、共産化はしていない。ちなみに国民投票の結果は自称公正明大な国民党が発表している。


もちろん、新しい政党をつくることも出来る。議会の承認が得られれば。また、デモや抗議活動をすることも出来る。大統領は聞く耳を持たないし、軍が鎮圧に動くが。そんな感じで数十年続いているようで、3代に渡って独裁政治を続けた国民党だったが、近年は軍部が権力を持ち暴走を始めたそうだ。


「今回の日本侵攻は、軍部を掌握する李金士将軍の独断行動だったようです」

「李金士将軍ね。まあ、頭が足りてない人が上に立つのは珍しく無いけど……」


中国の李金士将軍が、今回の侵攻を計画した人間らしい。現代史とかあまり詳しくないから名前を言われてもわからない。チベットやモンゴルでは無く、なぜ日本に攻めて来たのか。その理由はイギリスの入れ知恵やロシアからの圧力とかでは無く、単純に日本へ金を払いたく無かったから、とのこと。


「……去年の輸出分の代金、回収してないの?」

「今までは一括前払いだったのですが、数年前に一度後払いとなってからはどんどん支払いが遅れているため、このままでは今年度は輸出は行わない、と通告を出しています」

「それで侵攻って、その李金士将軍って人はどんな神経の持ち主だよ。……頼むから、この情報が間違いであって欲しい」


愛華さんによると、今まで中国は自国民の食糧を日本からの輸入に頼っていて、その代金は後払いだった模様。昨年度分の金を払えと言ったら逆切れするとか頭悪い。そもそも、中国って豊かな土壌を持っているから食糧を日本に頼るという状況になることが考えられないのだけど。


「何で、中国はそこまで食糧で困窮してるんだ」

「それは、詳しくはわかりませんが、内戦が続いた影響で土地が荒廃したとは聞きました」

「私は中華にそれなりに詳しいのですが……現在の中華では田畑を耕しても、無事に生きてはいけないようです」


中国が困窮している原因を聞くと、愛華さんは詳しく知らなかったけど、秀一郎さんがよく知っているようで教えてくれた。どうやら今の中国内部では盗賊、夜盗の類が頻繁に出没して、収穫前の田畑から強奪したり、最悪の場合、食糧を求めて戦をしているらしい。漢王朝末期かな?


確かにそんな状況で日本に払える金があるわけないな、と思ったところでロシア帝国との国境にいた北方大陸軍の元帥が到着した。


「遅れて申し訳ありません……あなたが秀則様ですか。私は豊森 将伯(まさたか)です」

「うん?もしかして将寛さんの兄妹?」

「本土にいる将寛は私の兄です」


兄弟で中将と少将とか凄いな、とか思っていたら、兄弟で元帥がいた。世襲制のヤバい部分を知ってしまった気がする。元帥枠が5人しかいないのに、兄弟で元帥とか随分と優秀な家系だな。


……将伯さんは将寛さんとは違って少しふくよかな方で、威厳が無かった。俺より中国国境に近い場所で報告を受けたのに、俺より遅くに着いた時点でちょっと怪しい。いや、何か準備とかしていたのだと思うけど。


一応、面子は揃ったので昨日と今日の分の戦闘報告を受ける。5月6日から、5月9日までの期間で、戦線を離脱した日本軍の兵士は1000人に近い数となった。


一方、中国の戦傷者は4万人近い数となった。あくまで推計だけど、キルレシオ1対40とかもう虐殺みたいなものだな。

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