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第25話 騎兵の進化

中華民国軍の侵攻初日、5月6日の戦闘では敵中央軍を粉砕して、敵右翼軍2万に対しては第68歩兵師団が対応して余裕を持って撃退していた。敵左翼軍2万は奮戦していたけど、第1予備役歩兵師団が進軍を食い止めて、翌日になって第1騎兵師団が到着。蹂躙が始まって敵左翼軍は崩壊したらしい。


結果、初日こそ手間取ったものの、翌日の5月7日は全戦線で日本軍が圧倒し、5月8日になって中国軍は国境まで撤退したと今日の朝まで現地にいた品川さんから教えて貰った。


「明日にはその、遼寧地方の瀋陽市(しんようし)?に着くから、そこで中華戦線を構築している第6軍の軍団長と北方大陸軍の元帥と合流か。

……瀋陽市って、どこだよ」

「朝鮮半島の付け根の辺りですよ。

中国国境に配備されていた第6軍の軍団長は中将の豊森 秀一郎(しゅういちろう)様です。第16歩兵師団師団長の秀二郎様の兄でもあります」

「……兄の下に弟がいるのか。というかこのネーミングセンスって、六さんや七海さんの兄?」

「いえ、六様や七海様と直接的な関係は無いはずです」


軍編成はわりとややこしいけど、元帥が率いる北方大陸軍という大きな枠組みの中に、大将や中将が率いる軍があって、軍の中には少将が率いる複数の師団がある。たぶん俺が書いていた階級表と同じ階級制度を使っているだろうから、書き忘れていた上級大将は存在しないはず。


元帥は方面軍のトップ、という意味で使っているようだから、たぶん改変前の元帥とは役職の意味が違っていると思う。将寛さんも日本本土の軍団のトップ、みたいな感じだったし。


「それで、騎兵って今はどんな運用をしているのか教えてくれる?」

「現在の騎兵の主な役割は戦線の突破、包囲、渡河攻撃などです。威力偵察としても運用しますね」

「騎兵で渡河攻撃か。まあ、川底が浅ければ歩兵が渡るより良いな」

「いえ、川幅が広くて川底が深くても騎兵で渡河攻撃を行いますよ?」


第1騎兵師団という言葉を見て、少し騎兵について気になったので愛華さんに騎兵の運用方法を聞くと、渡河攻撃で使うという返答があった。どうやら、この国の馬は人を乗せたまま泳げるらしい。


……えぇぇ、流石に馬に乗った兵士が川幅の広い川を泳ぎながら突撃してくる姿を想像したら、シュール過ぎる光景が脳内に浮かんだ。


「もしかして、馬に乗ったまま銃を撃っても大丈夫なの?」

「乗った人が銃を撃ったぐらいで動揺するような馬は日本軍にいません。泳いだままでも銃が撃てるよう訓練されていますし、泳ぎ切った後にすぐ走り出すことも可能です」

「……マジか」

「特に第1騎兵師団は馬も人も強者揃いなので、黄河の渡河攻撃も可能だと思います」


現在の騎兵師団の馬は人を乗せて一日に100キロを走破しても疲れを見せず、泳げる上に、隣で大砲を撃っても動揺しない精神力を持つ、従順で賢い馬らしい。どう考えても馬ではなくてUMAである。馬だけは着実に進化していっているのか。


そんなUMAに乗った8千人もの軍が、敵左翼軍と交戦して大戦果を挙げるのは当然、か?そもそも大砲や銃の精度、飛距離はともにこちら側が上なのに、騎兵が敵の有効射程に入るのはアホだろう。実際に、1番被害が大きかったのは第1騎兵師団だ。被害が大きいと言っても全体で見ればかすり傷程度だけど、それでも人が死んでいることに変わりはない。


まず騎馬鉄砲隊って防御側だと運用方法でかなり悩む存在なんだけど、移動しながら射撃とかしているのかな?移動後に下馬するならもう歩兵とそんなに変わらないし。


「追加で瀋陽市にいるだろう元帥と中将に騎兵での追撃禁止を伝えておいて。中国に侵攻するなら、歩兵と砲兵だけでゆっくりと進むわ」

「騎兵の損失を抑えるつもりなのですか?」

「いや、純粋に砲弾で人の命が買えるならそっちの方が良いだろ。無理に騎兵で突っ込む必要ないし、敵が見えたら砲兵で薙ぎ倒す、って方が効率は良い」

「かしこまりました。急ぎ、連絡をいたします」


とりあえず中国軍が弱そうなことはわかったので、騎兵で無理に大戦果を挙げるより大量の砲で殲滅しながら進む方が良いと判断。レールを敷設しながら、ゆっくりと進むように伝える。


「あと、京都にいる仁美さんに海軍を使って中国の沿岸都市に砲撃を続けるよう言っておいて。最終的には中国の沿岸部を全部占領するから」

「そこまで侵攻するおつもりでしたか。それならば、インドシナ方面からも進軍を開始させましょう」

「それは……南方大陸軍を大きく動かすとイギリスが動くだろうから、助攻程度で良いよ。南の方にも進軍されてそうだけど、中国軍がここまで弱いなら心配しなくても良いか?」


中国から仕掛けて来たことだし、この機に北方大陸領と南方大陸領を鉄道で結び付けるようなことはしたい。それにしても、ここまで大勝できる国にずっと日本が警戒していたのかと思うと、違和感が凄い。俺が明に手を出すと戦争が泥沼化すると言ってなかったり、ノートに中華は想像以上に広いから手を出すな、という旨を書いてなかったら、中国全土を占領していたのかな。


しかし技術格差が酷くても敵が銃を使っている以上、こちらにも被害は出ているから慎重に行こう。陽動や罠だったら嫌だし。だらだらしていると他国の介入が怖いけど、中国への侵攻に使う軍は防衛のための常備軍のみにする予定だし、突然の事態への対応も大丈夫だと思いたい。


……中国は、石油の採掘基地の事を知って侵攻したわけでは無さそうか。石油を持っても、活用出来なければ意味は無い。何処かから石油の有用性を知らされて石油地帯が欲しくなったのであれば、まずは自国内で調査するだろうし、中国の河北には石油があったような気がする。無理に日本に攻め入る必要は無いはずだ。


何処かの国が中国を操ったのであれば、それはイギリスかロシアかのどちらかかな。もしもイギリスが動かしたのであれば、これからイギリスも来るだろう。下手すれば、二正面作戦どころか三正面作戦ぐらいになるのか。

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