第271話 労働時間
3月25日。予算の会議中だけど、俺自身は全日出席するつもりが無い。今日は親衛隊員の入れ替えをきっかけに考えるようになった、労働時間の見直しを行なう。今の日本は改変前と同じく、1日8時間労働になっている。個人的に改変前と大きく違うと思っている部分は、スーパーなどでも1日を2分割にしている点だろう。
大型の商店などは、朝の5時から労働が始まる。仕入れ作業や品出しを行ない、朝の6時や7時には開店をしている。そして店内で働く人は、朝5時から昼の13時までの朝型の人と、昼の13時から夜の21時まで働く夜型の人に分かれる。両方、途中で1時間の休憩が入っているから、きっちり8時間労働だ。
豊森家の本邸の近くにも、朝の6時から夜の21時まで開店している商店がある。改変前のスーパーマーケットに似ている商店は、食材や日用品が取り揃えられていて非常に便利だ。親衛隊に物を買って来てとお願いしたら、まずはこの商店に行っている模様。
造船所や稼働時間が長い工場などは、全てこの2交代制を導入している。基本的には休憩時間1時間を含めた8時間労働だ。労働時間や負荷を、減らす工夫は見て取れる。農作業だときっちり8時間にはならないようだけど、一年を通じて平均したら大体は8時間になっている。
「誰でも仕事が出来るように簡略化、マニュアル化をしているから、これでも大丈夫なのかな」
「誰でも出来る、というわけでもありませんけどね。親衛隊など、入れ替えの時に徹底的に指導を行ないますし」
「それでも始末書を書けと言われて、すぐに書ける新人って凄くない?」
「始末書の書き方ぐらいは、小学校で習うものですのでそこまで凄いと思いませんが」
親衛隊で1番労働時間の長い愛華さんと、色々と労働について見直す。いや、単純な労働時間だと常に背後にいる凛香さんが1番長いけど、実務を時間的に1番長くこなすのは愛華さんだ。最近は怜可さんに任せられる仕事量も増えて来たので、負担はかなり減ったはずだけど。
何だかんだ言って、教育機関で色々と詰め込むのは良いことだと思う。小学生の時から始末書を書かされるという情景は思い浮かべ辛いけど、上手くいっているならありだろう。
最初から格式ばった書き方を学ぶことに、マイナス点は無いように思える。俺が小学生の時は、反省文すら無かったしな。中学からは、遅刻常習犯などが書かされていたが。
国有企業の受け皿は、しっかりとした仕組みで成り立っている。ここを改善して、赤字垂れ流しを何とかしたいという気持ちは大きいのだけど、1人当たりの作業量を増やすのも難しいから悩ましい。
「……歩合制にする?」
「すでに歩合制ではあるのですが……基本給に対する歩合率の割合について見直しますか?」
国有企業の平均年収はこの世界に来た当初、50万円ほどだった。だけど近年は60万円を超えている感じで、かなり国民全体の所得が増えて来ているようだ。と言っても、基本給が軒並み上がったわけではない。成果量で出す分の報酬が、増えている感じだ。
国有企業は、働かない者と働く者に明確な差を給料で与えている。働かない者は欠勤の数によって給料が天引きされるし、逆によく働く者には多めに給料を払っている。歩合制の割合が高い企業では、単純に成果を計算して、その分の賃金を払う企業もある。
この歩合率が低ければ低いほど、赤い思想というわけだな。だけど追加の報酬に関しては企業ごとに線引きがあるだけで、明確な基準は存在しない。各種産業ごとにその基準を設けたいけど、今このタイミングで提案することでは無いか。
「歩合率を高くして、人の数を減らせば人件費の削減には繋がりそうだけど、過労死されるのも嫌だから難しい」
「1人当たりの仕事量を増やして、人数を減らせれば最高なのですが、そう簡単にはいきませんね」
「給料を1.5倍にしても、2倍量の仕事をしてくれれば総合的に見て得ではある。問題は、1.2倍量の仕事をするのでも精一杯ということだな」
人件費を減らすために、4時間労働を採用するところが民間では出て来た。まだ実際に導入している企業は少ないけれど、人を多く雇って、基本賃金は半分にする方向性だ。4時間労働でも、集中的に作業を行なえば8時間労働に比べても0.7倍量の仕事はこなせる。そして給料を半分にすれば、実質的な人件費削減は出来ている。
……結局のところ、人件費を減らすには人を減らすより払う賃金を減らす方が効率は良いということだ。しかしそれだと労働者側は満足な生活を送れない。今は貯蓄のある老人を中心に4時間労働を取り入れているから何とかなっているけど、これを20代30代に導入するのは無理があるだろう。
達成した仕事量を、目に見える形として報酬に変えるには、ボーナスという形で出させるのが1番良いか。自分自身、現代社会で働いた経験は無かったからボーナスについて詳しくはないけど、達成した仕事量に応じて半年ごとの手当てを出すのは仕事に影響を与えそうだ。
とりあえずは、各産業の企業の社長に半年ごとのボーナスを出すようにと言っておこう。これを達成した仕事量の比で出すことが出来れば、明確な差にもなるので精神的な活力を生み出せるはず。
今までも、特別手当という形で成果に対して報酬は払って来た。でもそれは、不定期だったはずだ。定期的に支払われる成果量に応じた手当は、モチベーションに繋がると思いたい。




