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織田信長の天下統一を手助けして現代に帰った俺が何故か祭り上げられている件について  作者: 廃れた二千円札
第十章:世界大戦

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第269話 風船爆弾 

再現できるものは、極力指示を出して再現させた。改変前の日本の技術で具体的な構造や仕組みを知っていた物は少ないけど、その中に風船爆弾というものがある。改変前の旧日本軍が考え出した、ある意味で素晴らしい兵器だ。


……風船爆弾はアメリカ本土を空爆した唯一の兵器であり、アメリカの研究者は何を材料として用いていたのかさっぱり分からなかったらしい。まあ、材料は和紙とコンニャクなんだけど。可燃物だけで造られた兵器だから、燃え尽きて証拠が残らないメリットもあったらしい。


確か、日本本土から放流しても命中率はそこまで低く無かったはずだ。その風船爆弾をハワイから飛ばせれば、被害は大きくなるだろうという予測の元、戦争前から実用化へ向けて着手していた項目ではある。最初は、俺の頭がおかしくなったと思われたので、ちょっとその時のことは思い出したくない。


正直に言って、実用性はかなり疑わしい。それでもアメリカに脅威をもたらした風船爆弾は、作る価値のある兵器だと俺は思った。何よりコスパが良いし、構造が簡単なのは大きい。


サンディエゴ方面軍の東に突出した箇所から風船爆弾を飛ばせば、フラコミュの軍事施設や工場に大きな被害を与えられるかもしれない。冬休み中にせっせと造られた2万発の風船爆弾は、春の攻勢の前の日に、前線の各都市から飛び立つ予定になっている。


……たぶん、サンディエゴやサンフランシスコでも上空は西から東へ風が吹いているはず。それでも幾つかは自陣に向かって飛ぶだろうけど、仕方が無いと割り切る。効果があるようなら、続けて飛ばす価値はあるだろう。


対空兵器で撃ち落とされることが目的でもあるし、上空で爆発しても一定の成果は見込める。フレンドリーファイアは、気合いで回避してくれと言うしかない。


実際に風船爆弾を作ると、その価格の安さに驚いた。まあ、和紙をコンニャク糊で貼り合わせるだけだし、価格は高くなる方が不思議か。本来ならロケット砲をさっさと開発したかったのだけど、こちらでも成果はあるはず。


「鳥さんに当たったらどうするんですか?」

「……鳥さんって、言い方が何か可愛いな。

実際問題、鳥が1番の天敵かもね。でもそれは、空を飛ぶ兵器がみんな抱えている問題だと思うよ」


彩花さんに鳥とぶつかったら落ちることを指摘されたけど、覚悟の上だ。そもそも、飛行機だって鳥の問題を克服できたわけじゃないし、改変前の世界だって克服していないだろう。空飛ぶ兵器は、どうしてもその点が欠陥になる。


風船爆弾が成功したら、民間企業にも製造の委託をするとともに、コンニャクの生産比率を上げないといけないか。コンニャクもそこそこの量が市場に出回っているけど、コンニャクが好きな人はいるだろうし、軍が買い占めるわけにもいかない。


コンニャクは、俺も好きな方だな。おでんの具には確実に入っていて欲しい具材だし、戦国時代でも普通に存在した食材だから色んな料理に使用した経歴がある。そんな食材を、兵器にして使うのは食に対する冒涜かもしれない。でも、使える兵器かもしれないので使いたい。


……別に、コンニャク糊を絶対に使用しないといけないというわけではない。だけど、出来れば歴史が実用性を証明した元の作り方で開発したかったという思いはある。


コンニャク糊の作り方自体、元から存在していたしな。作戦の決行日は、サンディエゴ方面軍が前進を再開する2、3日前で良いだろう。風船爆弾が機能すれば、楽に攻撃を始められる。


「水素はわりと簡単に大量生産が出来るから、水素を詰め込むのも現地で何とかなるのは大きいか」

「電気を大量に消費するので、既に発電所を数ヶ所で建設しています。既に、日本人の移住も開始していますよ」

「不退転、か。向こうがアメリカ大陸に集中して軍を回すとは考え辛いけど、万が一を考えたら出来ない行為だ」

「その万が一を起こさないための参謀達です。既に高台へ砲台と防御陣地を敷き詰めているので、向こうからの進軍は難しいと思いますよ」

「それは日本の建築業界が、効率化と簡略化を追求した結果だな。また、判子のように同じ家がアメリカ大陸の西海岸に建てられているのか」


フラコミュは共産主義だから、建物もその中の部屋割りも全て同じだった。日本の方も、判子のように同じ建物が建ち並ぶけど、お金をかければ大きい家は建てられるし、内装は個性を出せる。別に、同じ形で無ければいけない理由は無い。単純に、建築し慣れている建物が1番安くなるというだけだ。


……フラコミュの建物を、そのまま使うというわけにはいかない。何度か無人の建物を爆破されて、日本軍人に被害が出ているからだ。どうやら撤退時に、時限爆弾を仕込んだ建物が少なからず存在するようで、日本軍はまずフラコミュの建物をぶち壊すところから始めないといけない。


というか、純粋にフラコミュの建物は狭い。高層建築を行なうにしても、間取りは余裕を持たせたい。人口が多くなったフラコミュで、建物の敷地面積を削ることで耕作面積や工場の敷地を確保していたことが分かって、何となくフラコミュがどういう国なのかも分かって来た気はする。


たぶん、フラコミュの本土は相当な過密状態だったのだろう。そしてアメリカ大陸に移住した者達を、本土の人間より裕福な暮らしには出来ない。土地はあるのに、建物が密集して都市が作られていたのはそのせいか。


……人が密集した都市に、風船爆弾が多く流れ着く可能性は高い。風船爆弾が機能すれば、日本史上初の無差別爆撃かもしれないのか。名前のせいで凄さは微塵も感じないけど、機能すれば凄惨な兵器でもある。もっとも、全てに「機能すれば」という前提が付く時点で、風船爆弾はお察しな気がしているけど。

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