第267話 親衛隊員
親衛隊は、若い女性しかいない。仁美さんが公言してしまっているから言うけど、妾候補でもあるから女性だけで構成されている。全員、教養があって事務処理能力も高い。容姿の良さに関しては、言及する必要も無い。
だけど、いつまでも若い女性というのはいない。外見的にはまだ若いという女性も多いけど、親衛隊は25歳までという上限があるようで、今年度で4人の人が辞めるようだ。凛香さんも25歳になるため、この4人の中に含まれている。
「……いやまあ、凛香さんと愛華さんについては責任を取るけど」
「他の3人に関しては、もう良いのですね?」
「そう聞かれるのは、何か嫌だな。俺が手を出さなかったら、25歳で引退ってこと?」
「そういうことです。親衛隊員の条件は16歳から25歳までですので」
凛香さんは今年、愛華さんは来年になれば上限を超えるので、その時に責任をとることとなる。子供に関わることで、彩花さんに対しては仁美さんが第二子を産むまで待ってくれと言われているけど、凛香さんと愛華さんに対してはさっさと第一子を産んでくれとも言われている。
「彩花さんは、子供を3人欲しいんだよね?」
「私がというより、女性なら誰しもが思いますよ。最悪でも2人は欲しいですし、出来れば3人、なので本音はもっと欲しいです」
「……最高で、何人産んだ女性がいるか聞いても良い?」
「豊森家の人間ですが、数十年前に7男9女を産んだ女性がいますよ。お互いに優秀な人材だったので、子供の数は無制限でしたが、当時はかなりの話題になったそうです」
……あまりに子供が多いと、将来的な遺恨になる。だけど、ここまで来たら2人ずつぐらいは子供を作ろう。彩花さんも3人は子供が欲しいと言っているし、俺は自他共に認める好色家だ。遠慮はもう、しなくて良いだろう。
「仁美さんが不妊気味だから、遅れていたことではあるね」
「……あまり大きな声で言えませんが、秀則さんには問題が無いので仁美さん側に何かしらの問題があるのかもしれません」
「……体外受精って、試験が始まったんでしょ?可能なら、試してみたいけど」
「動物で実験している最中の技術を、仁美さんで試すわけにはいきませんよ。
これからは時期関係なく、子作りに励んで下さい」
彩花さんが若干、仁美さんに対して負の感情を持ち始めていることは理解している。彩花さんは仁美さんを差し置いて2人目の子供を授かるわけにいかないので、ちょっとした溝が出来てしまった。俺や仁美さん的には別に彩花さんが先に産んでも問題は無いけど、豊森家的に問題が生じるようで面倒くさい。
体外受精に関しては、動物で試験が行われている。その内、人でも実験をするだろう。人体実験ではあるのだけど、これは必要性の高い技術だから黙認はしている。数年後には人でも可能だろうから、その時にまだなら検討しよう。
行為の推奨期間が、夏場なのも子作りが遅れていた原因だから、その制限も取っ払う。4月に生まれるよう調整するのはかなり面倒だし、それが不妊気味な原因でもあるだろうという考えだ。生まれる日をこだわるのは分かるけど、こだわる必要性は低い。
凛香さんと愛華さんとの結婚式は、来年度中に行なうことにした。2024年度なら、前の結婚式から3年が経過しているし、美雪さんの親戚達も険悪なムードにはならないとのこと。それまでにまた色々と準備をしないといけないけど……インフラが更に発達しているから、見物客は何万人になるのか予測も出来ない。
凛香さん以外の親衛隊の3人は、普通に民間企業の方へ就職するようだから、退職金を渡してお別れになる。その内、一般家庭の籍に入るだろう。3人とも美女だし惜しい気はするけど、独占する気も起きない。兄妹が多すぎて、収拾がつかないのも困るしな。
3人とも優秀だったし、彼女達に合ったパートナーを見つけて幸せになって欲しい。……ここで彼女達には彼女達と釣り合う男性が見つかれば良いなとか、そういう考えだから俺も優生思想寄りではあるのだ。
「……この退職金の包み、随分と分厚いね」
「親衛隊員の退職金は一律で200万円と定められています。秀則さんの親衛隊員の場合は、最長でも10年ですので決して低くはありません」
「3年働いて、退職金が200万円はかなり出ている方じゃない?
ああでも、来年からはどんどん勤続年数が増えるのか。10年働いて退職金が200万円は、そんなに高くもないな」
愛華さんから、退職金が200万円ということを聞いて、親衛隊の給与システムは複雑だということを思い知った。そう言えば、基本給は安い方で時間外手当で稼ぐようなお仕事だったな。
入れ替わりで入って来る女性陣は、全員16歳のようだ。今の親衛隊の最低年齢である19歳の怜可さんや鈴香さんの、年下が入って来るとのこと。少し、感慨深いな。怜可さんや鈴香さんも、16歳で親衛隊に入って来ていたことを思い出した。
「新しく入って来る女性4人は全員が16歳で、内2人は軍属経験がありますね。11歳に入隊して、現在は1等兵です。日本本土を防衛する師団に配属されていた女性達なので、優秀な成績は納めています」
「士官では無くて、普通に入隊した一等兵か。護衛としては1番良さそうではあるね。その2人は、凛香さんの代わりってこと?」
「そういうことです。凛香さんが妊娠期間中、護衛が手薄になるのは目に見えているので」
愛華さんが新しく入って来る親衛隊員について説明してくれるけど、元軍人が2人、国営企業の元秘書が2人だった。元軍人の方は身体能力が高いそうだけど、2対1で何とか凛香さんに勝てると言っている。
……何を持って勝ち負けを決めているのかは分からないけど、それだけ凛香さんは凄いということだ。そんな凛香さんは来年度から秘書になる予定だけど、親衛隊と何が違うのかはイマイチ分からない。




