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織田信長の天下統一を手助けして現代に帰った俺が何故か祭り上げられている件について  作者: 廃れた二千円札
第十章:世界大戦

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第235話 イギリス競馬

8月8日に無事会談が終わり、日本側もイギリス側も多くの情報を得ることが出来た。貿易というか、物々交換に関する話し合いも終わったし、為替に関する決め事や戦略の確認など、実際に直接会わないと中々話が進まないことは多くあった。ようやく解放されたという気持ちになったところで、唐突に今日の午後には俺の馬が走るということを聞かされる。


……ここまで、俺の持ち馬であるロードカナリアは9戦8勝2着1回という異次元の成績を残しており、本日は1位の賞金が1億円というレースに出る。息抜きを兼ねて見に行こうとしたら、ロイズさんが食い付いた。


「日本にも、競馬があるのですかと聞いていますね」

「俺の始めたこととして、競馬が無いということは、イギリスに正確な俺の功績は伝わって無さそうだな」


イギリスでも競馬が行なわれているそうだけど、どんな状態になっているかは不明。レース前にロードカナリアに会いに行ったら、とてつもない馬体になっていた。全身が筋肉達磨だし、鹿毛なのに黒い。


勿体無いことに、適正外の距離である2400メートルの皐月賞に出して2着になってしまったから、連勝記録は途絶えている。でも、以降はちゃんと2000メートルまでのレースに出して勝っているから強い馬だ。


「その口ぶりは、豊森秀則が始めたということですか?」

「え?ああ、うん。俺が始めたことに…………えっ?」

「……日本語が喋れるのなら、通訳の意味はありません。何故、日本語が喋れないと嘘を言ったのですか?」


イギリスには俺の情報が正しく伝わってないな、と口にしたらロイズさんが日本語で質問をしてきた。それに対して、愛華さんが少し怒っている。何故、日本語を喋れないと言っていたのか。そしてどのレベルで、日本語が話せるのかを問い詰める。


……あれか、日本語で相談していた内容は、全て向こうに筒抜けだったのか。愛華さんは嘘を言ったな?と怒っているけど、日本語が喋れないとは一言も言ってないと、ロイズさんは主張しそうな気がする。


「いやまあ、日本語が喋れるのであればそれで良いのだけど。一応、そういうことをしていた理由に関しては聞きたいし、何で明かしたのかも教えてくれる?」

「その国の言語を話せないフリをしていると、よりその国の本性が見えるのですよ。

……あと、この話を切り出した原因は秀則さん、あなたの奥さんが怖かったからです。何で、日本語を話せないフリをしていると見抜けたのか、後で聞いておいて下さい」


ロイズさんの日本語は、わりと流暢だった。元から日本には興味があったらしく、日本語は日本人の捕虜から学んだとのこと。紅海海戦で日本海軍がボロ負けした後、自由フランスに流れ着いた団体以外にも、日本人の生存者はいるのだろう。


そして日本語を喋れるということを明かした理由は、彩花さんがロイズさんの分かってないフリを見抜いたからだった。昨晩、ロイズさんから彩花さんに接近したら、彩花さんから脅されたらしい。ちょっと目を離した隙に脅すとか、彩花さんの新たな一面を見た気がする。


たぶん彩花さんは分かってないフリが得意だから、ロイズさんの演技も見破ったのだろう。ロイズさんが日本語を分かるのであれば、今までの会談で何か地雷を踏んでそうだ。


日本語が話せた件については一旦置いておいて、競馬場に向かうとロイズさんご一行もついて来る。まあ、賭け事はイギリスでもしているみたいだし、馬は持ち帰らせないから大丈夫だろう。


そんなことを考えていると、競馬場に到着。それと同時に、ここに最大級の地雷があることを思い出した。


「凄く、良い匂いがしますね。肉の焼けるような、香ばしい香りが……!?!??」

「……出店には、馬肉の串カツや蒲焼みたいな料理がありますが、食べます?」

「……日本人は、随分と、無神経な、ぇえっ?」


日本の競馬場には、出店が多い。特に8月の北海道は競馬が盛んな上に、デビューして駄目だった2歳馬や成績の伸びない3歳馬が量産される時期だ。当然、出店の中身は馬肉料理一色になる。


そんな光景を見て、ロイズさんは困惑する。外国でも馬肉は食べられている地域があるはずだけど、イギリスはタブーだったか。感情の問題だから、個人差も激しいだろう。現に彩花さんを始め、日本人でも100人に数人ぐらいは食べられないし、無理して食べることもない。


……しかしまあ、競馬飯として馬肉料理を出すのは止めさせた方が良かったか?今の日本人が割り切り過ぎているから当たり前の光景だったし、俺も受け入れていたけど、世界から見れば狂気の沙汰に見えるかもしれない。


試しに甘辛いタレでじっくりと煮込まれた馬肉を買い、山椒を付けて食べる。……ロイズさんが何か言いたげだけど、競走馬と馬肉は切り離して考えるべきだという思考に俺は賛成している。周囲には馬肉のたたきを頬張りながら観客席に向かうおっさんや、競走馬のデータが載っている本を見ながらぶつぶつと呟いているヤバいお姉さんがいる。


ロイズさん達は連れて来るべきじゃなかったかな、と思いつつ、レース前の馬が見れる場所に行く。大きいレースだから既に客がいっぱいだけど、ロードカナリアの元気な姿は確認出来た。多少太ったらしいから評価は落ちているけど、それでも1番人気だ。


……狂っている集団の中に、正常な人を入れると、狂っている集団からは正常な人が狂っているように見える。その逆も、同じことが言える。結局のところ、その集団にとっての常識がどうなのかが問題だ。

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