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第20話 電池と電気

「美雪さんは26日から来るのか。その頃には予算案が纏まるの?」

「例年では、25日までに纏まります。今年は新規事業が多いのでどうなるかわかりませんが……」


豊森家の会議に当主の美雪さんがいないことに疑問を持ったけど、後半から参加するようで今は北海道に行っているとのこと。休暇じゃなくて仕事で行っているようなので、一緒に愛知に行った時から休み無しで行動してそうだ。


「豊森家の人間って、休まずに働く人間が多いの?」

「秀則様もそうじゃありませんか。目覚めてからずっと働きっ放しですよ?」

「え?……えっ?」


仕事好きな人間が多いんだな、と愛華さんに言ってみたらお前もそうだろ、と返された。確かに目が覚めてから……初日は状況の把握確認をしていたか。2日目以降は愛知行って、美味い料理を食って競馬して、造船所の見学をして……幼い姿をした女の子を拾った。こう考えると、本当に何もしてないな。


暇な人を見つけて話を聞くということも出来なさそうなので、行き来する人を眺めながら新設する研究機関で何の技術開発を優先するか今のうちに決める。軍縮によって溢れる人員と俺に任された予算で、思っていた以上に色んな研究を同時に行えそうだ。今の日本軍にいる人って、全員がある程度の学歴を持つエリート集団だし。


「無線技術、冷凍技術、製鉄技術……いや、その前に電気か。

発電所って、タービン回すだけで良かったっけなぁ」

「電気、ですか。発電技術や発光技術など、電気に関する研究は進んでいますよ」

「電池と豆電球の再現には成功してたからな。進んで無かったら困るわ」


電気に関する技術は一応、進んではいるようなので複雑な回路の研究をさせよう。というか電気の存在の認知はしていて電灯もあるのに、その先に技術が一切進んでないのが謎だ。


「発電所って、タービンで何を回転させてたのかな」

「磁石でしょうか?」

「ああ、磁石だ。コイルの真ん中に磁石、だっけ?それで、火力発電所みたいなものはあるのか」

「はい。しかしコストが……秀則様が発電所の増設に取り組まれるのであれば、本土全体が明るくなるのに時間はかからないと思います」


発電所の建設にいくらお金がかかるのかわからないけど、コスパが悪い発電所を乱立させるわけにはいかないので、発電所の改良も必要になるのかな?とりあえず電灯は街の中心地や駅で見かけるので、悲惨と言うほどの状況では無い。しかし電気は光らせるためだけ、という認識で止まっているのは不味いとしか言いようがない。


電気の有用性を認識して貰いたいけど、電気分野はわりと苦手だからどうしたものか。本当に何で電気の存在が認知されていたのに電灯以外の研究開発が止まっていたのか謎。通信関係の技術も早く開発したいので、電気分野には人員を多く雇おうか。


……俺自身が、電池を開発し終わって満足してたから、か。電池と豆電球を再現したい、と意地になって実験を続けていたけど、なかなか結果が出なかったことは確かだ。最終的には試行錯誤の末に銅と亜鉛と塩水と竹で何とか成功したけど、それ以降は電気に関する研究をする暇も無かったし、放置気味だったことは確かだ。


そう考えると、発電所があるだけマシか。電池の研究が一切進んでないのはまだ納得出来ないけど。


「電気関係の技術もノートに書いておくべきだったな」

「それほど重要な技術なのですか?」

「この国の発展が遅れた原因は電気分野の軽視、と言えるぐらいには、まあ」


電気分野に関して一切ノートに書いてなかった俺が悪いのだけど、せめてもう少し発展していてくれたら楽だったのにとしか思えない。一応、今でも電気分野の研究を続けている人は少なからずいるらしいけど、割り振られている予算が人員の規模に対して少なすぎるから、人員の数を10倍、予算を100倍にするよう指示を出した。


たぶんこれでも予算は少ない方だ思うけど、足りなかったら随時投資、という形にする。他の研究所も同様に随時投資という方針を固めて、豊森家の本邸に帰った。


……忙しそうにしているのに俺がいるというだけで一々頭を下げに来る人や自己紹介をする人が多かったから、罪悪感が凄かった。自己紹介してくれた人の名前とか覚えきれなかったし。


何人か、インパクトのある名前の人は覚えたけど。鉄道の運行を管理しているという豊森(とよもり) (ろく)さんとか。間違いなく六番目に産まれた、ということがわかる良い名前だ。


下の妹は七海(ななみ)さんで、少しは工夫されているから悲惨さが目立つ。ちなみに七海さんは貨物船の運行を管理して指揮している人。六さんと七海さんの兄妹が今の日本の物流を掌握していると言っても過言では無い。


「気になったんだけど、六さんと七海さんって仁美さんから見てどういう関係になるの?」

「六さんと七海さんに関しては私の方が血筋は近いですね。仁美様のお爺様のお爺様の弟の子孫、でしょうか?」

「……ん、私のお爺さんの弟の子供だから、私が一番近い」

「凛香さんが一番近いのか……家系図の把握は止めとくわ。余裕があったら覚えてみたかったけど」


愛華さんに六さんと七海さんが豊森家でどういう位置なのか帰りがけに聞いてみると、仁美さんから見ればかなり遠い親戚だった。重要そうな役職を遠縁の人に任せてるってことは、豊森家内で主家筋に近い遠いの差別はしていない感じなのかな?家系図は重要人物だけでも頭に入れておきたかったけど、軽く聞いただけでも複雑そうな感じが伝わってきたので諦めた。


……あの別邸の人達、数百人規模でいたけど、ほぼ全員が俺の子孫と言っても過言じゃ無いんだよな。そして全員が、国有企業の社長とか地方の領主とか。どうやらこの国では、偉くなればなるほど忙しくなるようだ。それが良い事なのかはわからないけど、悪い事では無いだろう。

予告:第24話から戦争が始まります。

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[一言] 異世界転生者は馬車馬のように働く シュートする女神さまもニッコリ 似たような境遇の時間逆行者を神聖視した子孫もまた…
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