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織田信長の天下統一を手助けして現代に帰った俺が何故か祭り上げられている件について  作者: 廃れた二千円札
第十章:世界大戦

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第234話 自動車社会

8月7日、会談5日目に挙がった話題は自動車についてだ。フラコミュが高速道路の敷設をしているように、イギリスでも車は既に実用化している。話している感じだとベルトコンベヤーを活かした大量生産にも着手しているようで、一般人も購入できると言っていた。


そこで資格や標識をどうしているのかロイズさんに聞いてみると、困ったような顔をされた。どうやら免許制度なんて無いようで、車を買える大人であれば誰でも運転が出来るらしい。交通事故はわざわざ数を数えていないようで、恐ろしい社会になってそうだと思った。流石に事故を起こせば犯罪者として捕まえるらしいけど、本当に捕まえているのかは疑問である。


会談が終わった後は、仁美さんと情報整理。今までの会談を通じて分かってきたことだけど、中々にイギリスの社会も愉快なことになってそうなので、イギリスが戦争から脱落する時期は早いかもしれない。


「……改変前の日本も、おおらかな時代というのが存在したのは知っているけど、流石に無法地帯過ぎないか?」

「法整備の整っていない製品が、勝手に市場へ出るのは困りますね。イギリスの自動車を輸入することは止めませんが、安全性でも日本の方が上かもしれません」

「安全性、か。そう言えば走破性のテストと言って、1メートル以上の崖から落とすのは無理があると思うのだけど。そりゃ、エンジンが止まるレベルの衝撃を受けるはずだよ」

「それぐらいは耐えないと、いざという時に困りませんか?」

「その『いざという時』は何を想定しているのか、聞いても良い?」


今日の話し合いではイギリスの自動車を輸入できるようにして、日本の車の性能アップに繋げようとしていた。法整備が整っていないとは言え、日本よりも先に自動車が開発されて、市場に出回っているのだ。当然、参考になる部分はあるだろうし、少々高値でも買って損は無いと考えていた。


しかし値段が法外なほど高い上、日本の安全テストが異様に厳しいので無駄骨になる可能性も高い。崖から落としたり、大砲を乗せて砲撃をするのは流石にアホとしか言い様がないけど、お陰で日本車の安全性は高い。戦車を作るなとは言っていたのだけど、戦車の基礎研究は始めていたみたいだ。


……ノートに、戦車の絵は書いてしまっていたしな。何気に空間装甲とか、傾斜装甲の概念を得ているのは大きいのかもしれない。この2つを組み合わせるだけで、かなり頑強な戦車が作れるだろうし、キャタピラーの概念もある。


アメリカ戦線で、戦車は使えそうか?アメリカ戦線で戦車の活用する際の最大の問題点としては、輸送することが難しいことだろう。戦車師団としての運用は、生産力を考えるとほぼ不可能。戦車大隊を、師団に組み込めるのかも怪しい。


数十台程度なら、生産させるべきかもしれない。しかし今から開発を推し進めたところで実用化は来年の春以降になるだろうし、研究費もカツカツだ。アラスカ戦線は山と川が多いし……やっぱり装甲車になるのかな。自動車の販売で得られる利益を、装甲車の開発に当てることで何とかしよう。


「イギリスの車が、どれだけ進んでいるのかは気になるし、輸入に関しては前向きに検討しよう。向こうもこちらの大砲を買いたいそうだし、良い貿易になることは祈る」

「シベリア鉄道を経由するか、インドを経由するかは悩みますね。英国艦隊が健在ならばインドルートも悪くはないのですが」

「アフリカ大陸横断鉄道って、今は無事なのか?イギリスはアフリカ大陸でイタリアと覇権争いをしていた気がするのだけど」

「アフリカ大陸では未だに戦闘の気配が無いようです。イタリアの王室が逃げ込んだのはアフリカにあるイタリア領とのことですし、南アフリカが暴れている以外は平穏なのでしょうか?」


アフリカ大陸はスペイン、イギリス、オスマン、イタリア、ドイツが大部分を占有しているが、今大戦のせいで一時的に平和が訪れているらしい。アフリカ横断鉄道というイギリスの持つ鉄道は、共産圏の手に落ちかけている地中海を通らなくても済むような、貴重なルートだ。


輸送能力も高いようだから、イギリスはスエズ運河とジブラルタルにこだわらなくても良いのように思えるけど、やっぱりコストを考えるとアフリカ大陸横断鉄道を利用する方が面倒そうだ。南アフリカ王国の目的は、この鉄道かな?


鉄道の沿線の都市も発展はしてそうなので、イギリスはアフリカ大陸にもある程度の拠点がありそうだな。その全てを教えてはくれないだろうけど、後で聞いておこう。


「イタリア王室はシチリア島に逃げ込んだと聞いたけど、その後はアフリカに逃げたのか。巻き返しは、無理そうだな。後はオーレリー達の祖国みたいに、磨り潰されるだけか」

「いえ、今大戦で我々が勝てば正当な政府として認められると考えます。イタリアは1番不安定なので、付け込む隙があるとすればイタリアでしょう」

「アメリカ戦線が片付いたら、イタリアに強襲上陸を仕掛ける計画でも立てようか?数年は先のことになりそうだけど」

「共同で行うぐらいなら、イギリス単独で上陸作戦を決行した方が良さそうですけどね。問題は、イギリス陸軍の規模が小さすぎることですか」

「島国だから、海軍偏重になるのは分かるけど……陸軍が明らかに軽視されていたのは、大問題だよ。結局、欧州戦線には16個師団までしか派遣しなさそうだし」


欧州で陸軍の規模が1番大きいのはフラコミュだけど、1番小さいのはイギリスだ。イギリス軍は練度こそ高いけど、数が少なすぎるせいで、陸軍力での比較をすればイギリスが1番弱くなる。その分をインド軍で埋め合わせてはいるのだけど、国としてどうなのだろうか。


……とりあえず会談が終われば当分の間、ロイズさんと関わることは少なくなるだろうな。観光はちょこっとだけして、さっさとイギリス本国に帰るそうだ。何だかんだ言ってロイズさんの影響力というか、発言力は高かったのだと思う。それが今回の出張で、弱まった可能性はあるかな。


実質今日が会談の最終日だったので、最後は小規模ながらもパーティーを行う。そこで彩花さんがロイズさんを睨んでいたけど、初対面だとやっぱり匂いや化粧が気になるのかな。パーティー自体は何事も無く終わり、長く感じた日英会談は無事平穏に終わりを告げた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 史実だと大砲を載せたテクニカルが頑張ってますからな。
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