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織田信長の天下統一を手助けして現代に帰った俺が何故か祭り上げられている件について  作者: 廃れた二千円札
第十章:世界大戦

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第232話 炎天下

日本には四季がある。そして当然、日本以外の国にも四季がある国は存在する。赤道付近と北極、南極以外は四季があると言っても良いだろう。アラスカにも四季は存在するが、平地では8月なのに炎天下でも20℃ぐらいと、わりと涼しいらしい。


しかし山の上だと直射日光が当たる場所では汗を流すぐらいには暑いようなので、山岳地帯で戦闘している軍人達は軍服の下が汗まみれになってそうだ。逆に日陰に行けば、打って変わって凄く寒いとか地獄のような戦場だな。


お互いに山越えをして裏を突こうとしている戦場があるので、実際に戦う人達は大変だ。山中での戦闘は、何気に日本軍の方が強いらしいけど。兵の体力はフラコミュより上だから、体力勝負では負けないということか。


去年の夏は比較的暑いという年だったけど、今年は北海道でも暑く感じるので去年より更に暑くなってそうだ。一方でプロイセンでは冷夏だから、世界各地が温暖化しているわけでは無い模様。プロイセンは生産活動を行う人でも容赦なく掻き集めて軍にしているから、冷夏の今年は飢饉が襲うだろう。


高値で売るわけじゃないけど、幾つかの造船技術と引き換えに食糧を送ることになりそうだ。シベリア鉄道の輸送量にも限界はあるけど、支援しないよりかはする方が良い。ロシアからも食糧は供給されそうだし、プロイセンが飢餓で戦えなくなるということは無いかな。


「イギリスは、食糧面ではインド頼りなの?」

『イギリスの食糧事情を教えて貰えますか』

『食糧事情ですか……本土での自給率は50%程度で、後は輸入ですね。インドからは多くの食糧も輸入しています』

「インド頼りであり、イギリスの食糧自給率は50%しかないようです」


愛華さんを通じてイギリスの食糧事情を聞いてみると、予想通り芳しく無い。50%という数字が本当かどうかは分からないけど、元々イギリスの土地は農耕に向いていない、みたいなことは知っている。なので、自給率が低いことは予想通りだ。しかし思っていた以上にインドに依存している。


「我々は、インド以外の全ての植民地を失っても生き延びることができるだろう。しかし、インドを失えば、我々の太陽は没するであろう」


ふと、有名なイギリスとインドの関係を表す言葉を思い出した。実際にイギリスはインドを失っていないからか、まだ列強の1国として数えられている。イギリスがインドとの交易ルートに固執する理由は、分かり切っていたことだけどインドが大きすぎるからだ。だからこそインドを直接狙える日本と、不可侵条約を締結出来たことは、ロイズさんの凄く大きな功績にもなっている。


プロイセンに派遣するイギリス軍の中にはインド人の部隊も存在するようだし、どんどんとインドの地で徴兵もしていると言っている。インドで独立の機運が高まるのは当然の流れだろう。インド人にとっては関係の無い欧州での戦争で、同郷の民が死んでいく。搾取され続けていたインド人達が、爆発を起こす未来はそう遠くないはず。


折り返し地点を過ぎた会談4日目は、アフガニスタンとペルシアの戦争についても話題となり、戦争全体での戦略についても話し合った。一介の外務大臣がどこまで権力を手にしているのかは分からないけど、ロイズさんはある程度戦争にも精通している。


だから、この報告が入った時にはロイズさんも狼狽えた。8月4日、イギリス艦隊がダンケルク港に奇襲を仕掛け、停泊中だったフラコミュの戦艦4隻を撃沈。しかし攻撃を仕掛けた側であるイギリス艦隊も旧式とはいえ戦艦が1隻沈み、巡洋艦が7隻も沈んだ。双方ともに、10隻以上の艦艇が沈んでいるな。


「いや、戦果だけ見たらイギリスの大勝か。イギリス側の被害は戦艦1隻、巡洋艦7隻、駆逐3隻に対してフラコミュは戦艦4隻、巡洋艦7隻、駆逐艦多数に加えて潜水艦が2隻轟沈している。奇襲は成功だな」

「確かに、奇襲は成功です。しかしその後、フラコミュ艦隊が逃げるイギリス艦隊に追撃しており、そこではイギリス艦隊が惜敗している感じですね。詳細は明日以降になりそうです」

「情報が2日遅れになるのは、仕方ない。それにしても、ロイズさんがあまり嬉しそうじゃないよね」

「どうやら、まだクイーンエリザベス級の戦艦2隻は就航していないタイミングのようですので、ロイズさんの想定外の奇襲だったそうです」


8月6日に、8月4日に起こった海戦の結果が届くのはプロイセンと京都を結ぶ直通電話のお陰だ。そしてそれが、そのまま北海道まで電話で送られてくる。ロイズさんが狼狽えた理由はまだ仕掛けるタイミングでは無かったからだと仁美さんから伝えられるけど、ロイズさんは軍の方針に口を出せる立場だったのかな。だから、勝手に一大決戦を挑んだことに憤りも感じているのだろう。


イギリスはインドとの交易ルートを確保する以上、常に艦隊を保有する必要がある。フラコミュが広い海を封鎖することは難しいとはいえ、輸送船団だけなら簡単に襲われてしまう。今大戦で、既にイギリスの艦隊は3度もフラコミュ艦隊と戦闘を行なった。ロイズさんの反応を見るに、今回の被害を合わせればイギリス艦隊は半壊したのかもしれない。


半壊してしまった艦隊を再建するために、また国債を大量に発行して経済を回そうとすれば、ハイパーインフレが起こってもおかしくはない。というかいつインフレが始まってもおかしくないような状態のはず。経済が貧弱とは言わないけど、艦隊規模が国力に似合ってない状態をいつまで続けられるのかは予測しておかないと不味そうだ。


……それにしても、フラコミュの潜水艦が太平洋に出て来たら詰みそうで怖いな。ハワイに軍人、物資が集中していることを見抜かれたら、一巻の終わりだ。

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