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織田信長の天下統一を手助けして現代に帰った俺が何故か祭り上げられている件について  作者: 廃れた二千円札
第十章:世界大戦

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第231話 ユーコン川

8月5日の会談が終わってロイズさんと雑談をしていると、アラスカ戦線の話になる。現在、アラスカ戦線では北の方で活発なフラコミュ軍を川と要塞を利用して防衛しており、要塞線の2つ目は死守している状態だ。


その川の名前は日本名で栄路川(えいろがわ)。イギリスはユーコン川と呼んでいる川だ。第16軍は元々アラスカ領に駐屯していた師団が多く、早期から戦闘に参加出来た第1山岳兵師団が活躍をしている。冬季戦も対応できるように訓練を施していたが、訓練費が異様に高かった分、機能はしてそうだな。


『40個師団がアラスカ戦線で戦っているのね。それでも押されているということは、フラコミュはこれ以上の規模をアラスカ戦線にも投入しているということになるの……』

「日本は、アラスカ戦線に40個師団規模の戦力を投入しているのですか。それでも押されているなら、フラコミュはアラスカ戦線にも大量の戦力を投入しているのか、と言ってます」

「あ、日本は1個師団1万人ということを知らなさそうだから、勘違いしてそうだな。後、プロイセンにも2個軍団を派遣していることは伝えてくれ」


フラコミュの陸軍の規模は、本当に異常だ。昔、オーレリーさんが決めた欧州の陸軍力ランキングで迷うことなく1位にした理由がようやく分かった気がする。散々、陸軍力は警戒するべきだと言われていたのだけど、覚悟が足りなかったみたいだ。


ちなみに強襲上陸作戦の件はロイズさんに話してないし、プロイセンやロシアにも伝えていない。情報の流出が何よりも怖いし、上陸作戦の肝は奇襲となるか否かだ。上陸して早々に進軍が出来れば、フラコミュの対応が間に合わなければ、フラコミュが初戦で失陥する領域はかなり広域になるだろう。


そのため海軍は現在、旧式の戦闘艦をアラスカ戦線の海岸線に並べて第2軍の援護射撃を行なっている。第2軍には列車砲もあるし、倍以上の数のフラコミュ軍を相手に健闘している。第2軍が持ち堪えて無かったらと思うと、ゾッとするな。


フラコミュの太平洋艦隊は、未だに出しゃばって来ない。メキシコ戦での傷が深いのか、強襲上陸を警戒しているのかは分からない。ただ、アラスカ方面で制海権を喪失しっ放しということは無いだろう。日本はまだフラコミュの艦隊と戦ったことが無いから、せめて本番の前に一度、蒸気船で戦ってみたいという欲がある。


「アラスカ戦線は、北と南で随分と戦況が違う。北が劣勢で、南は優勢。これは参謀本部の予想とは真逆だから、戦争の予測は難しいということがよく分かるな」

「アラスカ国境の北にフラコミュが大軍を用意出来ること自体予想外ですから、見積もりが甘かったとしか言い様がありません」

「実際、山と寒さのせいで数十万人規模での進軍は難しいと俺も思ったからね。ただ、北に大軍を用意出来るということはかなり鉄道網が発達してそうだ」


愛華さんは、アラスカ国境の北部でフラコミュの大軍が押し寄せて来るのは予想外と言っている。俺自身、ある程度戦局が進めば北部の方が重点的に攻められるだろうという漠然とした予測はあった。しかしそれは開戦してから1ヵ月後の話で、今この段階で攻められているのは完全に予想を外している。


第16軍の加勢で勢いは止まっているようには見えるけど、フラコミュ側も増援は送るだろう。ユーコン川を利用した要塞線が突破されれば、間違いなくフラコミュは残り2つの要塞線も突破してくる。第17軍が本格的に参戦するまでの数日間が、アラスカ戦線の正念場か。


『歩兵と砲兵を分けられているのはどうしてでしょう?完全に分離しているのは珍しいと思います』

「歩兵と砲兵が分かれているのは何故ですか?」

「歩兵師団と砲兵旅団に分けたのは単に進軍の速度を考慮した結果だよ。砲兵を師団に組み込んでしまうと動き辛いし、歩兵師団を身軽にしただけだ」


会談が終わった後も、あれは何、これは何故と聞いて来るロイズさんは勉強熱心だ。勉強熱心なのに、日本語は一切学んで来なかったのか気になるな。ひとしきり日本の陸軍の編成を見てウンウンと呻った後、これは私が見ても良かったのですか?と聞いて来る辺りは天然さは感じる。


日本の陸軍についてはロシア人留学生達にも学ばれているので、今さらイギリスに情報が渡っても問題は無い。ちなみに、ロシア人留学生達は本国へ戻らず勉強を続けている。その内、アラスカ戦線に行って現地で色々と学ぶそうだけど、少なくとも日本人留学生みたいに師団の参謀部に所属させたり、連隊長として活躍することは無いだろう。


そもそも、日本では士官の数が多い。軍人にかかる給料はそこまで高くないので、多くの人員を抱え込むことが出来ている。師団の数を増やしたせいで将官は不足気味だけど、佐官や尉官は飽和気味だ。予備役となった士官も含めれば、300万人近くまで軍を編成することが出来るとのこと。あくまでも理論値だから、実際はもう少し少ないけど。


とりあえずは、ユーコン川に出た死守命令が守られるか否かだな。今までの日本で、圧倒的な劣勢時に死守命令が出たことは少ないはず。軍人として命令を守れるかどうかは見物だし、防衛側に立っているという利点を活かしてフラコミュ軍を少しでも削って欲しい。


常久さんは、死守命令と同時に戦力低下の隙は見逃さずに攻勢に出てくれとも言っているようだ。戦力低下の隙を咎めるのは、上陸作戦を見越しての発言だろう。隙があれば攻撃してくる日本軍、というイメージをフラコミュ軍に作らせることが出来れば、アラスカ戦線に張り付かせている師団を上陸してきた日本軍に向かわせ辛いはず。


常久さんが優秀なお陰で、上陸作戦自体は上手くいきそうだ。奇襲の効果も最大限発揮できるだろう。問題は、奇襲の効果が切れた後だな。どのぐらい進軍出来ているかは分からないけど、最高の結果でもロッキー山脈を超えた辺りで進軍は止まるだろうし、奇襲の効果も切れる。


そこから先は、地獄の消耗戦になると予測している。下手に攻撃して屍の山を築きながら進軍するよりかは、準備期間を設けて一気に攻勢を仕掛けたいところだ。

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