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織田信長の天下統一を手助けして現代に帰った俺が何故か祭り上げられている件について  作者: 廃れた二千円札
第九章:開戦とそれに至るまでの経緯

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第216話 前倒し

6月23日。欧州で行われた宣戦布告合戦の日から10日が経過し、ようやく初の陸戦が行なわれたという報告が入った。場所はスカンディナヴィアとプロイセンの国境地帯にあるコリングという都市だ。プロイセンから攻め込んだようで、スカンディナヴィア領であるフェン島のすぐ傍の都市だな。この攻め込んだ軍の中に、今川さんもいるとのこと。


……あの女顔を師団司令部の参謀部に所属させるとは、中々にプロイセンも人員不足だな。最低でも、大尉か少佐級の待遇で迎え入れられてる。今川さんは確か、陸軍士官学校を首席で卒業だったか。向こうでもそれなりに実力を見せていたら、抜擢されたという可能性もありそうだけど、若すぎる気もする。


流石に陸戦が起きている状況で呑気に「7月30日に開戦します」とは言えなかったので、プロイセンには7月23日にアラスカ方面で開戦予定だと伝えておいた。また、既に1個軍団の派遣をしているので、7月上旬にはオーストリア戦線に1個軍団を向かわせるとも伝えている。


本当に7月上旬までに間に合うかは明久さんの手腕次第。本人はたぶん大丈夫ですと言っていたから、信用しておこう。常久さんによると、明久さんのたぶんは絶対らしいし。


「第2軍の司令官は酒井(さかい) 龍牙(りゅうが)か。アラスカ国境地帯の領主の酒井(さかい) 龍太郎(りゅうたろう)の弟って、分かりやすい身内贔屓だな」

「酒井大将は司令官として優秀という評価ですが、いつも傍にいる参謀の方が優秀ですね。第2軍の参謀長は九鬼(くき)中佐です」

「司令官として優秀という評価なのは、参謀が優秀だからか?まあ、軍を実際に動かす計画を立てるのは参謀だから、参謀が優秀なのは良いことだ」

「司令官が方針を決めて、参謀が具体的な日取りや侵攻ルートを確定させる。これが基本的な軍の構造でしたが、近年は司令官が参謀としても機能することが多いです。そう考えると、酒井大将と九鬼中佐の関係は良い関係なのだと思いますよ」


アラスカでの国境地帯で最初に動くので、開戦の口火を切るのはアラスカ方面軍の第2軍になりそうだ。軍が多すぎて司令官や参謀が誰なのか把握し切れないが、彩花さんからせめて各軍の司令官と参謀ぐらいは頭に入れておいて下さい、と言われた。各軍と言っても、第15軍まであるので覚えないといけない名前は30人か。何気に、150万人規模の軍の全容がしっかりと把握出来ているのは凄いと思う。


……まあ、北アメリカ大陸侵攻軍の80万人以外は、日本の領土防衛のための軍なので、今回の戦いには参加しない。今の場合だと、70万人の軍を非常用として抱えていることになる。勿体無いとは思うけど、これを全部アメリカ大陸に派遣して本土を無防備にするわけにはいかない。


イギリスとかロシアは裏切りにくい状態ではあるけど、内乱が続くアフガニスタンから飛び火したり、オスマンやイタリアがビルマやインドネシアを狙って来る可能性は0では無い。実際に一度、セイロン島までイタリアの艦隊が来たことはあるそうだし。


もちろん、追加で送り込む後詰の部隊の準備もしている。しかし一度に輸送出来る戦力が60万人なので、わりとどうしようもない。戦地までの食糧を輸送しないといけない問題も残っている。食糧面ではサンフランシスコ方面軍とサンディエゴ方面軍はそれぞれ最大でも50万人規模しか派遣出来ないという結論が出ている。


輸送艦隊を拡大したとは言っても、船が無限にあるわけではない。無限に船があるのなら、最初から200万人規模の軍勢を輸送している。それが出来ないから最大限の輸送能力を把握し、どれぐらいの規模での戦争になるのか、どうローテーションするのか、輸送できる規模の戦力で勝算はあるのか、色々と考えた結果が30万人規模の2つの軍勢だ。初動では、これが限界で最良という認識だ。


……そもそもハワイに60万人の軍人を置いておけるのかは疑問だったけど、しっかりとハワイの島々を活用すればかなりの人数を駐屯させることが出来るようだ。元々軍事拠点としての活用も視野に入れていたから、60万人ぐらいなら置いておくことが出来る。


駐屯させる人数は100万人規模でも何とか出来ただろう、と常久さんは言っていた。流石に軍人を100万人も置くのは食糧がネックになってくるそうだけど、俺が考えていたよりもハワイは大きい島なのだろう。というか、幾つかの島が連なっているから総面積は広いのか。


「ハワイって、具体的にはどれぐらいの大きさ何だ?」

「全ての島を合計すると、四国と九州の中間、ぐらいの大きさですね」

「ああ。それなら60万人の駐屯は本当に余裕なのか。そこでしばらく休ませてから、アメリカ上陸作戦に移ると」

「日本からハワイまでは多めに見積もっても1ヵ月半ですので、先週出港した艦隊が到着するのは8月の上旬ですね。そこから上陸目標地点まで1ヵ月という計算です。最速で行動すれば、9月7日まで早めることはできますよ」

「いや、そんなに急がなくても良いよ。9月10日に上陸を決行するとして、数日は休めそうか?アラスカ戦線の状況次第では、もう少し遅らせても良いと思ってるけど」


アラスカでの戦線構築はプロイセンの負担軽減という目論見もあるけど、北アメリカ大陸の軍をアラスカ方面に集中させるという目論見もある。常久さんの結論では最速で9月7日に決行出来るとは言われたけど、海の天候にも左右されるし9月10日からは動かさないことにした。作戦自体を変えたくは無かったし。


フラコミュ本土と北アメリカ大陸は、フラコミュの船で何日かかるのか。それが今1番知りたい部分だったけど、プロイセンの諜報員ですら把握出来ない情報を知るのは難しい。大西洋では、戦争を開始したイギリスとフラコミュの艦隊が激突しているはず。フラコミュの輸送能力がどれぐらいか、艦隊規模がどの程度か分からないが、イギリス海軍の健闘を祈ろう。

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