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織田信長の天下統一を手助けして現代に帰った俺が何故か祭り上げられている件について  作者: 廃れた二千円札
第九章:開戦とそれに至るまでの経緯

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第215話 自転車化歩兵師団

当然のことだが、一度に数十隻の駆逐艦を同時に出港させるわけにはいかないので、何日かに分けて艦隊は出港していく。清州港以外からも戦闘艦や輸送船団は出港しているし、本当に大規模だ。


そしてその最終便には、自転車を大量に積み込ませることにした。完成品を積み込むと固定するのが面倒なので、部品を纏めて輸送する感じだな。組み立ては、向こうの大陸に上陸してからになるのかな?


……実際に自動車をアスファルトで走らせた去年の結婚式から、1年が過ぎようとしている。あの結婚式以来、実際に自動車の製造、販売をするための動きは活発だった。しかし免許の制度や歩道と車道の整備をしている間に販売開始時期はずれ込み、実際に国民へ販売する自動車の製造が始まったのは今年の4月からだ。そしてまだ、実際には販売していないという。


一方で自転車は公開当初から量産化を見据えており、早くから商品化が始まっていた。それでも実際に商品として国民への販売を開始したのは去年の12月からだ。自転車免許も昨年の3月に案が纏まった後は、講師を育てたり国民全員へのルールの周知に尽力した。開発したものを、実用化して、商品として売り物にするためには、結構な時間を要する。


「その自転車を軍人に使わせること自体は行なっていたけど、自転車化歩兵師団にしてしまうにはやっぱり時間がかかったか。移動に使えれば良いとは思っていたけど、侵攻にも使うとなれば戦術の最適化が必要だし」

「自転車に乗ること自体はさほど難しく無いのですが、それでも乗れない人間は少なからず存在しましたし、人員と自転車を用意するのは手間がかかります」

「……結局、1個師団分だけになったしな。第6軍に捻じ込むか」

「了解しました。秀一郎中将の方にも急ぎ伝達をします」


それでもようやく自転車化歩兵師団を編成出来たのだから、喜ぶべきだ。この師団は、強引に第6軍へ編入させるように怜可さんへ指示を出す。秀一郎さんなら、きっと上手く活用してくれるはず。訓練では僅か3日で、100キロもの距離を走破することも出来た。


……ただし突破、進軍した師団が孤立した場合、補給は1週間ほどで切れる。そんなに多くの荷物を、自転車に搭載することは出来ないからだ。そのことを伝えられた時は、むしろ1週間分の食糧を積めることに驚いたけど。


自転車のカゴは使っているが、背負った荷物と積んだ荷物だけでは1週間分の食糧と水を確保するのに精いっぱいの様子。武器弾薬の装備をしたままの状態だから、凄く重いはずだけど、そこは軍人としての筋力体力でカバーしている。


出来れば自動車化歩兵師団も間に合わせたかったけど、自動車の走破性が上がらないのでどうしようもない。ちょっとした段差から降りただけでエンジンが動かなくなるのは、少しポンコツ過ぎる気もする。衝撃に弱いエンジンは、流石に改良しないと飛行機の方が危ないな。


……田中さんを戦闘機開発に回したけど、自動車の方が良かったか?あの人に任せたい仕事が多すぎるけど、優先順位は見誤らないようにしたい。自転車化歩兵師団はこれからも活用方法を見出すために、色々と考えていく。


「食糧と水をある程度は運べるから、自転車自体に輸送能力はある方だよね。輸送だけなら馬車でも良いように思えるけど」

「自転車は本人の体力も消費するため、敵軍がほとんどいないということを確認した状況でしか扱えないのは問題点です。それでも後方での情報伝達の手段として、物資を運ぶ手段としては優秀ですが」

「フラコミュが、アメリカ大陸のインフラ整備にどれだけのお金を投資しているのかも影響しそうだな。インフラに投資しているほど、抵抗は頑強なものになりそうだけど」

「ある程度は道を整備していないと、イギリスとの戦争で優位に立てないはずなので、ある程度は整備されていると思いたいですね」


仁美さんが情報伝達手段として優秀とは言っているけど、有線の方が優秀ではあるので通信関係で自転車が使える範囲はかなり限定されるはずだ。無線でのやり取りは、国境付近では極力行わないようにしたから自転車の出番自体はあると思うけど。そもそも話で、通信関係は電力の確保が課題にもなるしな。


フラコミュの具体的な内部情報がほとんど取得出来なかったのは、素直に怖い。俺が指示を出す前の日本と同じで、徹底的に外国人を排除している気がする。その上で日本よりも規模の大きそうな陸軍を常備しているようだから嫌になるな。人口規模では負けて無いと思いたいけど、機械化は向こうの方が進んでいるから辛いものがある。


「自転車だけでも大量にアメリカ大陸へ運び込もうか。……何だかんだ言って、船での輸送能力は高くて助かった」

「七海さんの進言で、輸送艦隊の規模を拡大しておいて良かったですね」

「あの兄妹が居なかったら、物流管理部門自体がまだ整備されてなかったと思うよ。強引にでも出世させて良かったと思ってるし。あとはまあ、あの兄妹の進言を聞いて愛華さんと彩花が物流の規模の把握を手伝ったからだよ」

「秀則さんに言われるまで、どれぐらいの食糧が国民に行き渡れば良いのか、しっかりとした細かな計算にはまだ手を付けて無かったのが不思議なぐらいですよ」


物流管理部門の設立は、既に俺の最大の功績の1つになっていた。気が付けば何てことは無いけど、実際に動員を行わないと物流の停止の想像や消費活動の把握は行い辛い。元々配給制度に似たものが実在したから、物流の全容の把握に時間はそれほどかからなかったが。


「……ところで、プロイセンは動員するに当たって物流が止まっていたそうですが」

「軍人の移動だけしか考えて無かったから、物流が止まって国民の不満が早期から溜まってることは聞いたよ。何で想像出来なかったのか、プロイセンの首脳陣達には問い詰めたい」


仁美さんと会話を続けていると、プロイセンの方では実際に物流が止まったことが話題に挙がった。……多少の混乱は仕方ないにしても、想定すらしていなかったようで、色々と生活に支障が出た模様。鉄道網自体はかなり発展しているとは聞いたけど、現実的な対応策があるのとないのとでは大違いなのか。

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