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織田信長の天下統一を手助けして現代に帰った俺が何故か祭り上げられている件について  作者: 廃れた二千円札
第九章:開戦とそれに至るまでの経緯

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第210話 大英帝国の決断

『珍しいことに、議員達の中には立って議論を行っている人もいる。何故なら大英帝国の議場は議員全員が座れるような建物では無いからだ。元々、欠席が多い英国議会では議員全員分の席が無い。そしてプロイセンやフラコミュ、ロシアや我々日本などからの大使が見守る中で、英国の今後を決める会議が開かれた』


「6月11日の、イギリス国内の様子だな。オーストリアが国交断絶を宣言して、動員を始めた日の次の日だ。……イギリスの議会って、席が少ないのか」

「頻繁に欠席する議員が、選挙で選ばれる理由が分からないのですが。これが民主主義では当たり前のことなのですか?」

「いや……それは分からないな。イギリスが特別欠席率の多い国なのかもしれないし、改変前の日本でも欠席率は高かったのかもしれない。流石に、議員全員分の席自体はあるだろうけど」


『壇上に立ったのは、イギリス議会の中でも若手で、しかも女性であるロイズ=ジョージア氏だ。今日の最初の演説で、彼女は議員全員に語り掛けた』


「ロイズさんの演説内容は愛華さんが翻訳してくれる?」

「かしこまりました。


『これほどの人数が集まったことに驚きを隠せないが、今はその事に言及する時間も惜しい。プロイセンとオーストリアは互いに動員を開始し、戦争の回避が難しい段階まで来てしまった。恐れていたことが、最悪の事態として、現実になったのだ。これはフランスの陰謀であり、いずれフランスもプロイセンに対して宣戦布告を行うだろう。そうなれば、ヨーロッパはフランスのものになってしまう。


どうか皆さんは冷静になって考えて欲しい。悪魔の教えが大陸中に広まり、ヨーロッパを手中に収めたフランスが、イギリスにも襲い掛かるその姿を。今ここでプロイセンを見捨ててしまった時の、その結果を。


イギリスの立場、今後の情勢、国益。全てを鑑みて、私はプロイセンのために、悪魔の教えを広めないために、フランスに宣戦布告をする必要があると考えている。ヨーロッパをたった1国が支配した時に、イギリスが被る被害は計り知れないものである。その結末を防ぐためにも、フラコミュが参戦した時に、イギリスも参戦するという意思を表明する必要がある』


後は、優しい口調で下院議員に語り掛けているだけですね。長々とは喋って無かったようです」

「そうか。悪魔の教えは、共産主義のことだろうね。自由主義のイギリスとは、間違いなく対極にある考え方だ。悪魔の教えと、そのまま書いていたとしても驚かないよ」


ある日、イギリスに送られていた人から手紙が送られて来た。内容は、イギリスの参戦が決まった時の詳細な様子についてだった。前日には中々に激しい論争があった後、徐々にプロイセンを助けるべきだという流れになって、議論が打ち切られた日の翌日の演説だ。


ちょうど数時間前に、オーストリア政府が国交断絶を宣言して動員を開始した、という情報が飛び込んで来たようなので、大慌てでの招集だったのだろう。それでも議員全員が参加したことを考えれば、どれだけ重大な出来事だったのかということが分かる。


その場での最初の演説はロイズさんが行なったようで、ロイズさんの演説が流れを決定づけたと報告者は書いている。実際、この演説はプロイセンを助けようという気持ちが湧いて来るな。


しかしながら、この時のイギリス本土に存在する常備軍は僅かに12個師団。イギリス本土を丸裸にするわけにはいかないので、プロイセンに援軍として派遣する軍隊はその後の議論で8個師団規模となった。フラコミュの軍規模がイマイチ分かって無いけど、焼石に水じゃないかとか思わなかったのだろうか?


一応、イギリスの正規軍が精鋭であることは分かっているし、プロイセンの常備軍の規模も50個師団弱であることは把握している。問題は、一般国民からの動員を行った後の軍規模だ。日本だけが人口爆発しているわけでは無いなら、フラコミュもプロイセンも人口は1億人規模だろう。


もしもそうであれば、この戦争は改変前の第一次世界大戦より凄惨な戦争となる。スカンディナヴィア連邦も、この機会にコペンハーゲンの確保を行うだろう。スカンディナヴィアの情報は少ないけど、プロイセンとスカンディナヴィアの丁度中間にあるシェラン島、コペンハーゲンに固執していることは知っている。襲うには、絶好の機会だな。


……この戦争が長期化するとはイギリスもプロイセンも、フラコミュですら考えていないだろう。いや、予想をする人はいるかもしれない。だけど、その対策まではしていないはずだ。世界が2陣営に分かれて戦ったことが、未だに無いのだから当然の話になるが。


「長期化すれば4年……いや、6年という可能性もあるな。2028年ぐらいまでは戦い続けそうだ。そうなれば、欧州からは成人男性が根こそぎ消えるな」

「プロイセンが、それだけの期間持ち堪えられるでしょうか?」

「持ち堪えさせるよ。国土防衛のための戦争なら士気は高いし、背後の心配は無い。食糧はどうせ日本が供給することになるだろう。こういう時に、シベリア鉄道はとても便利だ」


この戦争を長期化させることが、日本にとっては1番大事かもしれない。愛華さんが持ち堪えるか不安だと言ったが、日本が持ち堪えさせる予定だ。欧州が焦土になるまで戦ってくれれば、戦後に動きやすくなる。……フラコミュがプロイセンに対して宣戦布告を行えば、対フラコミュ戦への参戦の見返りに、アメリカ大陸の利権を全てプロイセンに要求するつもりだ。


この吹っ掛けが通るか通らないかで、日本の行く末も決まる。既に状況が交渉していた時とはまるっきり違う。それでも通るか微妙だし、日本が危険視されれば欧州が団結する可能性も0では無い。……プロイセンまで行った外交官達による、交渉が全てだな。こればかりは、信じるしか無いか。

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