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織田信長の天下統一を手助けして現代に帰った俺が何故か祭り上げられている件について  作者: 廃れた二千円札
第八章:外国との関係

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第198話 進水式

8月9日。北海道の釧路港で、進水式が行われた。初風型駆逐艦の4番艦となる『潮風』の進水式だ。ややこしい名前を付けるなとは言っておいたけど、どうやら潮風は文書でややこしくなる名前だとは思われなかったらしい。まあ、今の日本にネーミングセンスがあるとは思えないし、俺も人のことを言えないネーミングセンスだけど、他に候補は無かったのか。


潮風の進水式の方は無事に成功し、この船は日本で4番目に進水した内燃機関搭載型の艦艇となった。これからは艤装の取り付けや部屋の内装をしていくそうで、潮風の就航は10月末日が目標とのこと。大きな船だから、工事するのも大変なのだろう。


「砲は従来の戦闘艦のものよりも大型化して、15センチ砲を積む。

……魚雷は間に合わなかったし、これは駆逐艦か?」

「大型の船とも渡り合える船を目指して、設計段階から大型化したとは聞いています。それでも速力は目安となる時速40キロを超えるそうで、問題は無いかと」

「いや、完全に巡洋艦の枠組みに入ると思うよ。あと、船の時速は駆逐艦だと最終的に60キロは欲しい。駆逐艦は小回りの利く速い船という認識でしか無いけど、流石に違う気がする」


船の速度を表すのにノットという単位があるけど、今の日本では採用していない。完全に、時速で表記している。確か1ノットで1.8キロぐらいのはずだから、時速40キロの船は約22ノットか。第二次世界大戦時に造られた島風が出した40ノットの、半分ぐらいの速力しか無いな。


「こういう船が増えるから、維持費も増えるし建造費が増大していくのは確定だ。新税の投入先は、大体が海軍関係になるのは確定だな」

「その点は海洋国家の性でしょう。今までも建造費に国費は注ぎ込まれていましたから。

アメリカ大陸まで侵攻するのに、やはり船は必須です」

「……愛華さんは陸軍の出身だよね?やっぱり、陸軍が海軍に理解を示しているのは凄まじいことだと思うよ」

「それは、ロシアやプロイセンでも陸と海で対立しているからですか?」

「メキシコですら喧嘩してるし、普通は対立するものだと思っていたよ。仲が良いなら、それに越したことは無いから別に良いけど」


日本の陸軍と海軍の仲は、諸外国と比べればずっと良い方だ。お互いにお互いを理解し、日本の軍を客観的な視点で見つめることが出来る。そんな人材が数百人と参謀本部で勤務しているのは、今まで日本軍が強かった要因の1つだな。諸外国も、流石にこれは学べなかったらしい。……決して、日本の陸軍と海軍が仲良し小好しというわけでは無いが。


陸軍と海軍の関係はプロイセンに留学した日本の学生達が、1番驚かれたところでもあるし、1番驚いたところでもある。日本の陸軍と海軍の仲の良さを驚かれ、プロイセンの陸軍と海軍の仲の悪さに学生達が驚く。普通は予算の取り合いになって必然的にギスギスするから、普通じゃないのは日本の方だ。


そう言えば、別の話になるけどプロイセンへ留学した日本の軍人達が、同じくプロイセンに駐在していたイギリス人の外交官と接触出来たのは個人的に大きいと思う。そこからインド経由で送っていた日本の外交官は、基本的に投獄されていたことが判明したため、怒りの親書を出したら開放してくれた。イギリスのギリギリまでプライドを保とうとする性格は、何とかならないのか。


返さなかったらインドを攻める準備をする、という意思を込めた手紙をイギリス人の政治家であるロイズさんに送ったら、あっさりと返還されたことからよっぽどイギリス国内も情勢は危ういと見える。単に、インドの情報が本国まで到達して無かった可能性もあるけど。一方でフラコミュは、メキシコを相手に軍事演習をするぐらいには余裕があることを考えれば国力の差は歴然だ。


どんどん、力関係が明瞭になって来たな。イギリスはインドに縋り付いているだけなのか?何で十数年前に、インパール会戦で日本軍と戦う力が残っていたのかは不思議だ。あれはインド軍が主体だったと参謀本部が推測しているけど、小銃と弾薬はイギリス本国で生産されているそうだから何とも言えない。


外交関係で言えば、ロシアとプロイセンの駐日外国公館が完成したことも世間で話題になっている。完成したのは7月30日で、先日の新聞には一面のニュースになっていた。メキシコは日本本土へ船を派遣する暇が無いようだけど、ロシアとプロイセンは日本にお金を落とすぐらいには余裕がある。ロシアとプロイセンには日本も大使館を設立する予定なので、こちら側もお金を落としに行くこととなるが。


……この大使館を設立し合っている国同士というのは、この世界ではかなり少ない。国際法がまだだから仕方のないことだとも思うけど、捕虜の扱いや大使の待遇はずっと雑だった。宣戦布告の明確なルールすら制定されてないから、勝った者がルールだったと言っても良いだろう。


本来であればプロイセンとロシアの他に、この2国と仲が良いと言われていたオーストリア=ハンガリー帝国とも接近をしたかったが、内部の不和が凄まじい勢いで増大しているそうなので回避させた。民族間の対立が日に日に増しており、その諍いをおさめると断言した政治家は、オーストリア=ハンガリー帝国民のに4分の1もいないドイツ人の政治家だ。


オーストリア=ハンガリーにいるセルビア人は多くの民族から嫌われているそうだし、南部にはイスラム教徒も多い。まさしく多民族国家としての欠点が浮き彫りになって来ている。外資に至ってはプロイセンに依存しており、各民族の自治要求も増えて来ているとのこと。


……分裂したら周りの強国に食べられるだけだと理解している人が、何人いるかだな。1番意味不明なのは、1つの国なのに2つの政府が存在することだ。そんな政治体制で内政上の問題が生じないのか、興味はある。今後はオーストリアにより重点を置いて、諜報員を派遣することにしようか。

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