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織田信長の天下統一を手助けして現代に帰った俺が何故か祭り上げられている件について  作者: 廃れた二千円札
第八章:外国との関係

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第193話 養殖業

7月21日。養殖業の実体の把握を行いたかったので、敦賀まで移動した。ここには俺の信者が大量にいるそうなのであまり来たくは無かったけど、養殖業が活発でかつ、京都から近いので現地まで赴くには都合の良い場所でもある。


昔の俺が敦賀を欲しがった理由は、日本海側の港として整備すればお金を稼げる拠点になると考えたからだ。そしてそのお金を使って、大量の人とシャベルとつるはしを用意し、琵琶湖までの運河を作り上げた。計画から実行、完成までには十数年の時を要したが、結果的に琵琶湖を介しての水運は巨額の富を生み出したと言っても良い。


わりとあの時、採算が合わないだとか無理だという否定的な意見を言う人は多かったけど、完成したら手のひらを返して俺を褒め称え、敦賀は予想を遥かに上回るペースで栄えた。琵琶湖の水が枯れるということは無く、今でも琵琶湖はたぶんそのままの大きさだから、実際にやってみないことには分からない、ということは多い。


その敦賀へと行くと、運河の堤防は随分と高い。一応、治水対策は万全のようだ。船で運河を移動している姿も確認できるので、今でも十二分に活用されているのだろう。作業には随分と時間がかかった気はするけど、断行して良かったと思える。


魚の養殖を行っている現場へ行く途中、ふらっと飲食店に立ち寄って天然物と養殖物の両方の刺身を食べ比べてみた。養殖物と天然物、どちらが良いか選べと聞かれたら天然物とは答える。だけど養殖物も養殖物で美味しいし、そこまで大きなこだわりは無い。ずっと食べ続けているけど、差はあまり感じられないしな。


「漁獲量の推移を見るに、鮫は勝手に増えたって感じか。知能はそれなりにあるって聞いたことがあるから、面倒ではあるな」

「鮫肉自体が人気なのでそれほど大きな問題にはなっていませんね。海水浴場での出没が増えているようなので、その点では問題視されていますが」

「ああ、海水浴場で出没は困るな。鮫肉は刺身も食べたけど、新鮮なら刺身でも普通に美味い。赤身の方は少し硬いけど、淡泊な味で好きだよ」

「昔は臭かったために工夫をしないと食べられなかったそうですが、ちゃんと血抜きをすれば問題無いですね。加えて今は鉄道網と冷凍技術があるので、日本全国で食べられていますよ」


鮫の増殖が問題視されているけど、鮫に関しては漁獲量の上限を撤廃しているから漁獲量が増えて増殖しているように見えている説や、栽培養殖のせいで餌が豊富になり勝手に増殖している説。無許可で勝手に鮫の養殖をしている犯罪者が存在する説などがあって、結局どれが正しいのかは分からない。


ただ、供給過多にはなっていないようだから、問題は少ないようにも思える。実際に起こっている問題点として海水浴場での被害が増えていると愛華さんは言っているけど、それぐらいしか目立った被害は無い。海の生態系を考えれば問題ではあるのだろうけど、それはどうしようもない気がしている。


鮫肉はフカヒレもそうだけど、白身は淡泊で肉として美味い。赤身部分は歯ごたえがあるけど、めちゃくちゃ硬いというわけでも無いし、煮付けやステーキで食べても良い。まあ、今日は養殖業の視察という名目で新鮮な海の幸を食べに来ただけだから、鮫の増殖については真剣に考えて無い。上限を撤廃したせいで、いつの間にか日本人が鮫を食べつくしてしまうと困るな、ぐらいの認識だ。


実際に養殖業の把握を始めると、完全養殖を行っているのはマグロやタイなどの人気のある魚で、常に供給量を確保したいものが中心だった。逆にそれ以外では栽培養殖をしている魚が多いな。完全養殖のための生け簀の確保も問題になっているのか。


鮫の養殖は鮫のメンタルが弱くてすぐに死んでしまうことと、危険性が高いとのことから計画が1度立ち上がっただけだった。そりゃ、人も食べるような鮫を養殖するのは難しいだろう。実際に今でも鮫に足を食われた人とかいるそうだし。


マグロを中心とした完全養殖についてだけど、野生の雄と養殖の雌を交配させているようだ。面倒な作業だけど、これをしないと遺伝的に劣化が避けられないとか言っているから、一度劣化したことがあるのだろう。ずっと養殖された鮪だけで交配させるのも、危険なのか。


逆に栽培養殖に関しては、野生の魚も含めて回収しているので気にしていないとのこと。栽培養殖は、改変前の世界で栽培漁業という名前だった気がしたけど、面倒なので訂正しないことにした。栽培養殖、完全養殖の方が名前的に分かりやすいしな。


「敦賀では鯛の養殖が盛んなのか。……沖合にある網の中の生け簀で育てて、生け簀ごと収穫とか色々と凄いな」

「この方法が1番確実でかつ、大量に養殖することが出来ます。餌は練った魚の身を小麦粉で固めたものが使われています」

「魚って小麦粉も食うの!?

いや、栄養的には問題無いのか。毎日欠かさず餌を与えて、育てるのは楽しそうだな」

「実際、収穫時以外は忙しい仕事ではありません。時々魚の体調を確認して、餌の量を調節する程度です。餌は別で作られますし、あまり一箇所で大量に養殖するのも難しいので」


怜可さんから鯛の餌に小麦粉と魚の身などを練り混ぜたものを使用していると聞いて少し驚いたが、冷静に考えれば小麦粉は別に問題無いのかな?養殖業に携わる人は仕事が細かく分担されており、餌を作る人や投げ入れる人、魚の体調を確認する人などで分かれている。


出荷先について悩まなくても良いから、あまり人員が多いようには感じられないのだろう。今の日本は、営業職の人が少ないのだと思う。改変前の営業職の人の割合を知らないからはっきりとは言い切れないけど、確実に減ってはいるだろう。


すり合わせや価格交渉の必要性が無いから、その部分に人員のリソースを割く必要が無いのは良いことなのだろうか?……何とも言えないな。良くないとは、言い切れない。

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