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織田信長の天下統一を手助けして現代に帰った俺が何故か祭り上げられている件について  作者: 廃れた二千円札
第八章:外国との関係

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第191話 ジューンブライド

6月28日の正午に結婚式が行われ、その後にパレードが行なわれた。……仁美さんと俺の、結婚パレードだ。ついでに次期当主となりそうな、久仁彦のお披露目の場でもある。お披露目が早いことには突っ込まない。乳幼児の生存率が高いということだしな。まだ生後1ヵ月の赤ちゃんを外に連れ出しても大丈夫なのか不安だったが、数日前に肌や健康状態の検査で問題無しと出ているので大丈夫だと思いたい。


京都近郊に敷設されたアスファルトの道路を、ゆったりとしたペースで走った自動車。時速5キロも出ていなかったので、予定していた距離を走り切るのに1時間近くかかった。そしてすぐ近くにまで迫る観衆の山が、祭壇のある建物までずっと続いていた。何人の人が来ていたのかは分からないけど、軽く10万人は超えてそうだ。今までの豊森家の当主の結婚式はパレードに馬車を使っていたそうだから、今回は真新しいという理由もあるかもしれない。


結婚式の方は一生の愛を誓い合い、三三九度というお酒を飲む儀式を行って、ケーキ入刀をするというごちゃまぜな式だった。ある意味で、1番今の日本らしさを感じる。なお、結婚式自体は彩花さんとも同じことを繰り返し行ったので、時間の方はカツカツだった。


着る物に関して、俺は真っ黒な浴衣のような衣装を用意されたが、仁美さんも彩花さんも豪華な着物姿だ。着物には綺麗な一枚絵が描かれていて、2人ともとても似合っていた。結婚式は最後、宴会になるようなので出席者にあいさつ回りをしていたら、思いがけない人物と出会った。


「父さん?」

「……よく分かったな。最後に会ったの、12年前だぞ?」


俺の親父が、結婚式に参加していた。岐阜の方から仁美さんがわざわざ呼び寄せたとのことで、心の準備をする暇も無い再会となった。白髪は無くふさふさで、出っ張ったビール腹も無い親父。それでも俺は、それが父親であると認識した。


「お兄ちゃん?」

「お兄ちゃんだ!」

「兄ちゃん!結婚おめでとう!」

「……妹と弟、か?」

「はは、12年前に秀則が連れていかれたから、初めて対面したんじゃないか?

……父さんからも伝える言葉がある。結婚おめでとう。綺麗な嫁さんじゃないか。大事にしろよ?」


そして本来ならばいないはずの、妹と弟に結婚の祝福をされる。2人の妹は10歳ぐらいで、弟はまだ5歳ぐらいか?弟の方は母の年齢からすると今の日本ではかなりの高齢出産になっていたはずだけど……親父の2人目の嫁さんとの子供だった。家族構成は、随分と変わっているようだ。


片方は純粋な妹で、もう片方の妹と弟は異母兄弟になるのか。一人っ子だったから、兄妹がいるということに少し感慨深いものがある。いやまさか、世界を変えたら兄弟が増えるとは、思ってもみないことだった。


……東京から岐阜の営業所に飛ばされて、それでも頑張っていた親父はここにはいない。今の親父は農家達のまとめ役として、この世界ではブドウの農園と酒蔵の管理をしているようだ。自分でも収穫のために外へ出て仕事をしているからか、身体は若干筋肉質であり、体格も少し違う気がする。そんな親父に付き従う母は改変前よりも仕事と育児で大変なはずなのに、若く見えた。


何よりも驚いたことは、家族全員が高そうな衣装を用意していたことだ。招待状と往復の運賃と宿の手配まではしたけど、衣装までは用意していなかったと仁美さんは言っていた。しかし、両親や後妻の人はもちろん、弟や妹達まで着飾っている。子供の衣装なんて、高い上にすぐに着れなくなるのに。あと、後妻の方は普通に美人で若い女性だった。お義母さんが増えているのが、この日1番の衝撃かもしれない。


「酒蔵の管理もしているのか。それは知らなかったよ」

「そりゃ、秀則が出て行ってから酒造りを始めたしな。地元では好評だよ。

商品として大量に持って来ているけど、ここで飲んでみるか?」


何の因果か分からないけど、森田家はこの世界でも岐阜に住んでいた。ブドウはブドウでも特に甘いブドウを生産しており、加えて最近ではブドウ酒も作っているらしい。ワインはそこまで好きじゃ無いけど、飲んでみると凄く甘いお酒だった。まるで子供が想像するような、甘くて飲みやすいワイン。地元で好評というのも頷ける味だ。


ずっと家族との再会は避けていたけど、今日会えて良かったと思う。親父も母さんも、凄く元気そうだった。あの後で親父のブドウ酒は話題となり、豊森家が特許としてブドウ酒の作り方を買い取った上で親父にブドウ酒作りをお願いしていた。傍から見ていただけだけど、かなりの額が親父の懐に入ってそうだな。どうやら親父には、商才があったらしい。


ブドウの農園自体は国営の農園で、その酒蔵は個人経営だったから今まで豊森家も把握して無かったのだろう。本来ならば廃棄されるような規格外のブドウを使っていたようだけど、今の日本の法律上では問題の無い行為らしい。命令されていた出荷量を超える分には、個人的な使用が認められているのか。


「廃棄する農作物も、あるってことか」

「サイズごとに仕分けて、最低基準値以下なら廃棄することも珍しくは無いです。そもそも、食糧の生産は過剰気味なので大きな傷が付いている果物などは出荷しませんね」


結婚式が終わった後に愛華さんと廃棄される農作物について話していたら、仁美さんと彩花さんに連行される。家族との再会のインパクトが大きすぎて、これからの家族を置いてきぼりにし過ぎたらしい。友花里と久仁彦も一緒に、5人で一緒の写真を撮る。


すぐに現像が行われたが、中央に映る俺の笑顔は何処か不格好に見えた。……あと、こうして写真で見ると仁美さんも身長は高いな。中央に映る人物が学生にしか見えないので、結婚式の写真と言われると違和感が残る。2人は気にしていないようだけど、もうちょっと2人に釣り合うような男だったら良かったのに。

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