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第183話 ロシア帝国

ロシア帝国の領土はソ連に近いものだと把握した。極東地域は日本が先に制圧しているため、極東ロシアは失っているが、代わりにカザフスタンやウクライナは全てロシアの統治下だ。中々に広大な領土である。


そしてこれはまだ想像だけど、アフガニスタンの大きさが少し大きいように思える。イギリス、ペルシア、ロシア、中国と隣接していたから、何かがおかしいはずなのだけど、それが何なのかは分からない。まあ、アフガニスタンはこれから嫌というほど関わるからその内違和感は解消されるはずだけど。


「皇帝や貴族が支配する帝国で、それに異議を唱え続ける反ロシア政府組織……というか、共産主義者達が活動しているという状況なのは分かっていたけど、思っていた以上に厄介な状況だな。暴力的じゃない分、皇帝にとっては面倒だろうし」

「ヴァシィさん達のような軍人が皇帝に忠誠を誓っている時点で、安泰では無いのですか?」

「暴動を起こすのは共産主義者と言えども民間人だからね。同じ国民に軍人が引き金を引くのを見れば、民意が変わる可能性は高いよ。軍で暴力的に解決するのも手段の1つとして存在するけど、悪者になっている時に叩かないと、共産主義は勝手に正義になる可能性がある。まだロシア政府は共産主義勢力が各地で裏工作を行っていると暴いているから問題が起きてないけど、対応が追い付かないようになれば状況は変わるよ」


例え共産主義勢力が過去に悪行を重ねていたとしても、今を生きる人には関係ない。被支配層に、支配層の過去を気にしない人が一定数存在するからだ。帝国が維持できるかは、民意に寄るところも大きい。倫理観やマスコミの発展は、帝国の維持を考えれば障害になることが多々ある。


今の日本が帝国として維持出来ているのは、管理社会の日本が生きる上で良い国だと思っている人が多いからだ。しかし束縛は嫌だという民意が広がってしまえば、即座に日本は不安定な状態に陥る危険性を孕んでいる。まあ、今の管理社会より管理社会が崩壊した後の社会の方が不味いという理解が進んでいるようなので大丈夫だと思いたいけど。


怜可さんは軍人が国に忠誠を誓っているのであれば安泰だと思っていたようなので、そこら辺は訂正しておこう。結局は国民が国に対してどう思うかが問題だから、軍人が国の命令を聞けるかどうかはあまり関係ない。マスコミが発展していればいるほど、民意は揺れる。


危険物を投げる悪者に対して軍人が正義の引き金を引いたか。それとも、何の罪も無い一般国民が軍人に撃たれたか。どう民衆に伝わるかは、その時の情勢によって決まる。


ロシアにいる共産主義勢力がどれぐらい広がりを見せているのかはまだ詳細に分からないけど、既にロシア帝国では共産主義が禁止されていることを考えると、そこそこの広がりを見せているはずだ。留学生の1人が喋ってくれた内容では、共産主義者を確保、収容して強制労働を行わせているとか。殺すと不味いことは理解しているらしいが、収容するのも不味い気はする。放置も不味いから、どうするのが正解なのかは難しいな。


「我が国でも、共産主義を禁止しましょうか?」

「……ロシアと歩調を合わせるという意味では良いのだけど、今の日本は格差前提の共産主義だから考えさせて」

「アフガニスタンの共産主義者達の考え方について纏められた資料を読みましたが、日本とは大きく違いませんか?」

「違うよ?違うけど、共産主義でもあるから悩んでいるの。

というか怜可さん、アフガニスタンにいる共産主義者達の考え方を纏めた資料があるなら渡してよ」


格差を肯定し、個人の資産を認め、職業選択が自由。そんな自由度の高い共産主義が今の日本だから、共産主義を禁止するのには俺自身にも更なる知識が必要だ。……これで国有企業の比率が高く、集団農場や食糧の配給があるのはかなり狂ってると思う。ロシア人留学生達のほとんどが1番学びたいと思っているのは日本の社会形態だそうで、思想が日本寄りに染まらないか心配ではある。


そんな感じで纏められた資料を読んでいると、豊森家の内部で告発が起きた。何事かと思えば、ロシアと外交を行っていた美雪さんの側近が、賄賂を貰っていたとのこと。何処から貰っていたのかは聞かずとも分かるだろう。ロシア帝国だ。


……このタイミングでロシア関連の不祥事発覚はヤバいなと思っていたら、即座にその人の家宅捜索が行なわれる。えげつないスピードで不正が暴かれていく様子を見ていたら、美雪さんが謝って来た。


「申し訳ありません。私が気付くべきでしたね。交換留学の話は元々、彼が持って来た話でもあります」

「いや、気付けない方が普通だよ。むしろよく気付いたね?」

「彼の部下が感付いて告発を行いました。本来であれば持ち得ない量のロシアの金貨が発見されたため、黒と断定します」

「……部下が上司を陥れるために告発した可能性はありそうだけど、この騒ぎで嘘の告発だったら立場が不味くなるだけだからそれは無いか?」

「もちろん、自作自演だったのかは徹底的に調べます。久々に、厄介な事件が起きました」


腐敗しやすい共産主義で、あり得ないほど浄化作用のある告発制度は、今日も仕事をした。告発者は褒め称えられ、万が一告発のせいで勤めている民間企業とかが潰れても、国有企業が正義感の強い人物として好待遇で受け入れる。


……改変前の日本で置き換えると社長や上司の不正を暴いた人が、世間では凄い人として紹介され、正義感の強い人物として警察庁で歓迎される感じか?俺の持つ価値観がぶっ壊れそうだな。今の日本で1番気持ち悪い部分であると同時に、これが機能していなかったらと思うとゾッとする。

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