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第167話 中米諸国連合

3月14日の朝。明日から予算会議という日に急報が入る。また、各所から悲鳴が聞こえた。間違いなく予算会議に影響のある出来事だったからだ。


その報告の内容は、フラコミュがメキシコに侵攻したというものだった。


「……電報も各地に設置を始めたのに、何で2月上旬の話が3月14日まで届かないんだ。

まあ、情報の伝達速度については一旦置いておくけど、メキシコとフラコミュの戦争ってメキシコに勝ち目ある?」

「100%無いでしょう。そもそも、イギリス軍を追い落としてからのメキシコ侵攻です。休戦協定が切れたのか、それとも軍の行き場を確保するためなのかはわかりませんが、フラコミュが戦争を仕掛けたことは確かです」

「これ、大戦の引き金にもなりそうなものだけど、メキシコは孤立主義で完全な独裁国家になってしまっているから判断が難しいな。

ところで、メキシコと会談をすることが出来たという話は本当?」

「それも本当ですね。今までは軍艦が出て来て追い返されていましたが、フラコミュに攻められる立場となった今、藁にも縋りたいのでしょう」


愛華さんが纏めた情報によると、フラコミュがイギリス軍を駆逐したから次はメキシコ軍だと言わんばかりに殴りかかったようだ。メキシコはいざ攻められる立場になると負けそうになったのか、今さら外交を頑張り始めた。舐めてるとしか言いようが無いけど、会談が実現したのは嬉しい。まあ、両国ともに身分がそれほど高くない者同士が情報交換をしただけだけど。


メキシコが負ければ次はアラスカを保有する日本の番かもしれないので、メキシコには頑張って貰わないと困る。漁夫の利を得られれば最高だけど、最悪の場合でもフラコミュ相手に出血を強要出来ればそれで良い。当分の間はメキシコから銃の設計図を買って、メキシコ製の銃や弾丸を大量に生産して提供しよう。


「メキシコに支援をするのですか?」

「……怜可さんに言っておくけど、メキシコに好意を持って支援するわけじゃないからね?メキシコが速攻で轢き潰されると困るから支援するんだ」


フラコミュの勢力拡大は望ましく無いから、メキシコを支援する。そう怜可さんに伝えると、怜可さんの顔には何故フラコミュを攻撃しないのと書かれていたけど、今攻撃してもメリットが薄いし、最悪日本とフラコミュの戦争という事で世界から傍観される恐れもある。


1対1なら絶対に勝てる戦争じゃないと、戦争なんてしたくはないし、仕掛けてはいけない。今の日本で、フラコミュと1対1の戦争は自殺行為だと思う。物量作戦を発動すれば負けは無いのかもしれないけど、せっかく成長し始めた国力を磨り潰すような真似はしたくないというのが本音だ。だから、メキシコを通じて間接的にフラコミュを殴る。


ちなみに、メキシコを支援するのは日本だけではない。メキシコの南にある中米諸国連合もメキシコの支援を表明している。


……中米諸国連合は、グアテマラを中心とする中米諸国の寄り合い所帯だ。メキシコが南へ領土欲を示した際に、メキシコに抵抗するだけの国力が無かったグアテマラやエルサルバドル、ニカラグアなどが集まって出来た1つの国だ。いや、国と言うのは違うのかもしれないけど、実質的には国だと思って良いだろう。中々に結束力があるらしい。


この中米諸国連合の存在を、今の今まで知らなかった日本はかなりヤバいということが分かる。フランス人達が言ってなかったのは、知っていて当たり前のことだからだろう。完全に盲点になっていた地域だ。成立したのもかなり前のようだと報告にあったので、中米についての情報は200年前で止まってそうだな。そもそも、俺自身も関心が薄かった地域だし。今後はこういうことが無いように、白地図を用意して隅から隅まで聞いておこう。これで2度目だし。


……恐らく、日本の他にもイギリスやプロイセンがメキシコに対して支援を送るはずだ。強国を陥れるためなら、仮想敵国と方針が被ったとしても気にしないはず。だけどフランス海軍がのさばっている大西洋を横断してメキシコを支援するのは、かなり無茶な気もするから難しいかな?


「メキシコとの国交は強引でも良いからこっちが主導権を握るぞ。向こうは日本からの支援が無ければ亡国に一直線かもしれないような状況だからな」

「分かりました。メキシコ製の銃を生産するのは、軍の装備品を統一させるためですか?」

「そういうこと。まあ、設計図を売ってくれるかが問題になるけど」

「日本が生産して受け渡すことを条件にしていれば、さほど問題にはならないと思います」


怜可さんに質問されたので答えるけど、銃の設計図をわざわざ買う理由はメキシコ軍を混乱させないためだ。どうやらこの世界はどこの国も装備を統一する気風があるらしく、メキシコも恐らく最新式の銃のみを使用しているだろう。装備の更新を行うより、大量生産によって数で補うという考え方だ。


……完全に日本の影響を受けているな。しかし装備を統一するメリットは言うまでもないので、悪い事でも無い。軍の指揮官にとって、財布を握る者にとって、戦う者にとって、シンプルな方が良いのは明らかだからだ。


圧倒的に日本の銃の性能が良いという状況でもない限り、メキシコ製の銃を生産する方が向こうも戦いやすいはず。設計図は言い値で買うしかないけど、向こうも考慮はしてくれるだろう。もしメキシコの銃から何らかの技術を得られれば、日本の技術力向上にも繋がるかもしれない。

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