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第166話 退職と昇進

2021年3月11日の午後、東北・北関東大震災の10周年追悼式が開かれた。この世界では俺の予言書がピンポイントで時間まで示唆していた地震だったために大きな被害は出ていなかったが、津波で街が全壊したり、行方不明者が出たらしい。それでも死者が少ないのは、近年の大きな地震に関して言えば的中率が100%だったため、未曾有の大災害だということを全日本国民が信じてくれたお陰だ。


宗教を全否定しておいて、弔う意思だけはっきりしているというのは変なのかもしれない。わざわざ宮城に行って追悼式典を行い、全員が黙祷したのは無駄な行為なのかもしれない。ただ、この黙祷だけは参加したいという気持ちが勝った。


ちなみに仁美さんも彩花さんも不参加。仁美さんは予算会議の準備で忙しいし、彩花さんは昨日で親衛隊を退職した。2月末まで働くとは言っていたが、結局3月10日まで働いていたな。予定日まであと3週間ほどだから、時期的にはそろそろ安静にしていないといけない。……この調子だと、本当に4月2日に産みそうだ。何処まで狙っていたのか、今となっては分からない。


後任の副隊長は怜可さんに決まった。あまり本格的に踏み込んだ会話はしてなかったけど、本当に良くできたお嬢さんという感じ。彩花さんと一緒に親衛隊として入って来たグループなので、かなりの美人さん。今年で怜可さんは17歳だから、戸籍的には同年代になる。今までの隊長副隊長が軍人出身だったから、非軍人出身だと思うと護衛としては不向きそうだ。


そんな思いは、怜可さんがいつも持っていた鞄を持たせて貰うと霧散したけど。


「この髑髏マークは?」

「過剰摂取禁止です」

「こっちの髑髏マークは?」

「毒薬です」

「……薬は何種類入ってるの?」

「複合薬も含めて、100種類以上ですね」


いつも大きな鞄を持っているなと思っていたら、中身は全て薬や毒。中には配合薬も入っていて種類が凄く多い。毒を検出するための道具や、薬を調合するための道具まで入っている。1人で薬局を開けそうなぐらいだ。


その効能は全て理解しているようだけど、原理は不明瞭なものも多いからこの点については何とも言えない。細腕なのに十数キロはありそうな鞄を軽々と片手で持っているので、力は思っていたよりもありそうだな。


「半年ぐらいは怜可さんも頼ると思うから、これからもよろしくね」

「はい。よろしくお願いします」


礼儀正しく見えるけど、同僚の鈴香さんとの会話を聞いているから結構口が悪い事は知っている。何言ってるのよ、とかあんたアホなんじゃないの、とか声が高いせいで良く聞こえて来るし。出来れば素で喋って欲しいけど、難しいだろうな。そもそも、彩花さんと打ち解けるのも2ヵ月はかかったし。……打ち解ける前に、色々と迫られたし。


なおこの機会に親衛隊の増員を検討されたので却下しておいた。今いる30人だけで十分なのに、さらに30人も増やすとか無駄でしかない。最悪、どんな状況でも死なないのだから護衛は要らないとも思っている。秘書として凄く有り難い存在だとは思っているけど、現状は秘書30人という体制だから余っている感じだ。余っている分で護衛をしているから、傍目から見ると忙しそうには見える。


「愛華さんがきっちりとローテーションを管理してるし……彩花さんが抜けた穴って大きい?」

「重要な案件は増えて来ているので、人員の増加は素直に有り難いのですが」

「怜可さんは現状、辛かったりする?」

「辛いと言う程忙しくはありません。まだ私の処理能力内で納まる仕事量です」

「……んー、彩花さんの能力が高すぎた可能性はあるか。怜可さんが辛いと感じたら3人ぐらいは増やして良いよ」


大まか書類の分類や指示の出し方が上手いのが愛華さんで、書類の細部までしっかりと把握や記憶が出来るのが彩花さんだったけど、2人が揃っていたお陰で回っていた事実は否めない。なので、怜可さんが大変だと思い始めたら増員することにした。……17歳とは思えないほど大人びているというか、もう大人だから大丈夫だとは思うけど。


「それにしても、京都から宮城まで汽車で9時間かかるのか。思い付きで移動する距離じゃ無かったな」

「秀則様は東京を経由していたがっていましたが、何か理由があったのですか?」

「いや、改名させたし一度ぐらいは見てみたかっただけだよ。本来なら首都……正確には首都じゃ無かったけど、実質的に首都だった場所だからね。京都から宮城だと、日本海側を経由した方が早いとは知らなかっただけだ」


怜可さんが東京について聞いて来たので、念のために改変前の首都だったということも織り交ぜて説明していく。京都から線路は伸びているため、東海道は存在しているが、東北の方へ汽車で移動するなら日本海側を通った方が時間的に早い。斜め移動しているようなものだしな。


東京は、一応他の都市よりか発展しているようだ。元々、平野が広くて海にも面している関東は発展しやすい条件を満たしている。それでも京都や大阪の方が発展しているようなので、期待しているほどの大成長はしていないだろう。それでも東海道を中心にして、インフラを整備していく予定だ。


「何だかんだ言って、東海道に沿うように発展しているしな」

「経済規模で言えば岡山、広島、山口辺りの山陽地方も負けていないですよ?」

「それは知ってる。京都から見ると大阪・和歌山方面、山陽方面、山陰方面、北陸方面、東海方面に向けて伸びる線路が、そのまま発展の基盤になってるし。ずっと京都が中心だったのがよく分かるよ。

……山陽道と北陸道も直にインフラの整備は始めるけど、東海道が終わってからだな」


愛華さんが聞いて来た山陽道や北陸道も重要なことは分かるから、なるべく早く基準決めを行わないとやるべきことが多すぎて行政がパンクする。……日本って、狭いようで広いから困るな。

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