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第163話 少尉候補生

プロイセンへの留学を希望した士官学校の生徒の中から、ドイツ語の上手さや成績、人間性や意欲を加味して美雪さんが選出を行った。結果、プロイセンに留学する若者達は以下の8人になった。


陸軍:豊森(とよもり) 栄一郎(えいいちろう)今川(いまがわ) 忠治(ただはる)佐藤(さとう) 健太(けんた)香川(かがわ) 幸一(こういち)

海軍:豊森(とよもり) 明佳(あきよし)豊森(とよもり) 香保子(かほこ)北目(きため) 智佐代(ちさよ)織田(おだ) 緩菜(かんな)


陸軍のまとめ役として品川(しながわ)義永(よしなが)大尉が、海軍のまとめ役として吉良(きら)概助(がいすけ)大尉がプロイセン行きとなった。これで合計10人だ。陸軍の方は、知っている人が多いな。品川さんは確か中尉だったはずだけど、昇進したのかな?栄一郎さんにいたっては、日中戦争で共に戦った秀一郎さんの息子という。


今川さんは陸軍士官学校の見学の時に知り合ったけど、成績優秀な上にドイツ語も出来るのか。海軍の方は香保子さん、智佐代さん、緩菜さんが女性。ドイツ語選択者が女性に偏っていたようだから仕方ない。まとめ役の吉良さんは、この年代にタイムスリップして最初の頃に会っていたような気がする。確か紅海海戦について語ってくれていたけど、大尉だったのか。


……海軍はその紅海海戦で高級士官が減っているから、吉良さんでも出世出来たのかな?何だかんだ言って、上に立てる人材は貴重だ。兵数が2万人と1万人の戦争の時、兵の力が同じという前提で、単純な野戦を考えれば前者の方が勝つけど、2万人の方の指揮官が1人で1万人の方の指揮官が100人なら後者が勝つと思っている。


指揮官が1人で100人分の力を発揮するというわけでは無いけど、100人の兵の力を200人以上の力に増やすことが出来るから、指揮官の存在は大きい。逆に兵の力を減らすような指揮官も、時々見かけたけどな。


「10人中、3人が豊森家か。もっと豊森家の割合は高いのかと思ったけど、そうでも無かったな。男女比率も7対3だし、バランスは良さそうだ」

「ドイツ語の成績と、卒業時の成績を加味して希望者の中から上位を選抜した形になりますが、豊森家の比率が高くなり過ぎないようにはしています」

「最終的には美雪さんが面接をしたと聞いたけど、送り出す人員としては最適?」

「最適です。私が実際に会話をして、今の若者達の中でも特に意欲ある者達をプロイセンへ留学させることにしました」


年齢的には吉良さんが最年長で29歳、品川さんが26歳、卒業予定者たちが16歳なので非常に若い。高校生2年生がドイツに留学とか、改変前の世界でも珍しいだろう。士官学校の卒業生は少尉の見習いとして一定の期間、軍で勤務をするけど、正確には少尉候補生という名前のようだ。士官学校の成績によって、この候補生時代の期間も決まる。


16歳の彼ら、彼女らは士官学校の成績で上位だったので、留学決定と共に少尉候補生という期間を飛ばすことになる。プロイセンに行って、帰ってきたら少佐が確定している大尉扱いだろう。将来には日本軍の中枢を担う可能性もある。何はともあれ、無事に帰って来て欲しい。


「プロイセン王国軍大学は、3年で卒業だよね?……10人がプロイセンで3年間暮らすために必要なお金は、結構な額になるんだな」

「こちらの紙幣は使えないので、金塊を持たせることにしました。学費以外は留学生の母国が用意する決まりです」

「まあ、物価とかが全然違うからそうなるか。この10人は4月27日に京都から出発して船に乗って、半島で汽車に乗り、ロシア国境付近まで行ったらシベリア鉄道に乗ってプロイセン国境まで移動したら、そこからはバスか。……6月の入学までに間に合う?」

「余裕を持って間に合う計算ですが、シベリア鉄道はよく止まるそうなので間に合わない可能性もあります。しかし、少しの遅れなら向こうで調整してくれるでしょう」


プロイセンまでの道のりは非常に長いけど、シベリア鉄道を利用出来るお陰で予定では1ヵ月もかからない。美雪さんによると、プロイセンの交通網は発達してそうだから、プロイセンについてしまえば何とかなるだろう。入学の時期に関しては統一されている訳では無いようなので、入学式とか卒業式は存在すらしない。


気になる点は、この10人の中にロシア語を話せる人が1人しかいないことだな。……TRPGで遊んだり、岩壁登りで苦労していたあの今川さんが、ロシア語もドイツ語も話せるとは思わなかった。


ロシア側も日本語が出来る人を用意してくれるようだから心配は要らないし、英語とドイツ語を話せる人もいるのでこれも何とかなるはずだけど、ロシア領を通過するということは意識するべきだったと思う。学生達が語学堪能過ぎるような気がするけど、周囲にいる人にも複数の外国語を話せる人が多いから感覚が麻痺してきた。10人の中にトリリンガルが2人、バイリンガルが8人。今の日本の教育水準は上澄みだけだと、凄く高く感じるな。


「プロイセンの軍人は基本的に男性だけで凄く屈強そうだから、今川さんは心配だな。少しは筋肉も付いたと思うけど」

「秀則様は、今川君と会ったことがあるのですか?」

「士官学校に行った時、知り合ってね。女顔で体型も華奢だったから素で女と間違えたよ。忠治という名前を知って男だと分かったけど、それまで女性だと思って会話してた」

「華奢ということで心配するのであれば、女性陣を心配した方が良いでしょう。プロイセンの軍は男社会のようなので。……海軍の士官学校を上位で卒業した女性陣は、中々に鍛え上げられていましたが」


外国の軍人とか、イメージがゴリラのような男達なので心配は尽きないが、日本の軍人も一通りの体術を身に付けているようなので大丈夫だろう。……プロイセンは、実際に俺自身が行ってみたいな。ベルリンとかキールが、どんな風に発展しているのか見てみたい。

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