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第160話 バレンタインデー

この世界の日本でも、2月14日はバレンタインデーだ。元々は聖ヴァレンタイン?という名前の人間の誕生日だったはずだが、俺が何かの拍子で喋っていたので文化として根付いていた。ちなみに聖ヴァレンタインがどういう人物なのか、俺は全く知らない。


いや、名前だけは知っているから全く知らないということは無いな。たぶん、キリスト教に関係する人だとは思っているけど。バレンタインデーはチョコ会社の陰謀だとも思っているので、正確な所縁とかは分からない。


改変前の世界だとチョコは貰えない側の人間だったけど、というかそもそも周りに女性がいない環境だったけど、貰える側になってると自覚した時には広めていた気がする。今の日本でも、この日は異性に贈り物を送る日だ。


……異性に、贈り物を送る日である。女性から男性へと渡すだけでは無く、男性から女性へのプレゼントも渡す。ホワイトデーなんて日は消えて無くなった。ホワイトデーの方は、どうやら定着しなかったらしい。そもそも俺が広めて無いし、俺自身もバレンタインデーにお菓子を渡していたからだろう。


「本来は、チョコレートという食べ物を送るそうですね?」

「……何でそういうことは記録に残っているのか不思議だよ。チョコは再現できないどころか、カカオ豆の用意すら出来なかったから、結局はお菓子になったな」

「今でも民衆が好意ある異性に送るものはお菓子ですけど、豊森家では恐らくチョコレートだと思われる食べ物を送る日になってますよ」

「そのために、創作お菓子の日にもなっているのか。……凛香さん、毒見はさせないからね」


彩花さんによると、チョコを送るという記録までは残っていたようだけど、俺自身がチョコを諦めていたのでチョコがどのような食べ物なのかは広まっていない。しかしカカオ豆を使ったチョコのような食べ物は存在するそうなので、それをチョコだと言っておいた。


……酸味が少しあって苦みが強いから、甘いチョコを想像ながら食べると凄く不味い。カカオ豆はイラストのイメージ図なら頭の中にあるけど、実物を見たことは無かった。カカオの木自体は、アフリカから盗んだようだ。というか結構な数の植物や動物をアフリカから奪っているので、生態系への影響は出ているだろう。


インドからも香辛料の類は盗んでいるし、やっていることが海賊と一緒である。南アフリカ王国の周辺で日本の海軍が活動していた時期があるとか、一瞬脳が理解を拒否した。


「……チョコに砂糖って、こんなに入れてたの?」

「昔のことですが、砂糖を入れれば美味しいという報告はあったようです。しかし甘みを感じるまで砂糖を入れるのは身体に悪いという健康上の理由で破棄されていますね」

「ああ、そうか。砂糖を取り過ぎたら病気になると言ってしまっていたか」


チョコレートを今なら再現出来そうなので、諸々の問題を頭から追い出してチョコを作ってみた。結構な数の女性からお菓子を貰ったし、チョコを纏めて作って渡そうという魂胆だ。子供の頃、チョコレートが出来るまでという本を読んだ気がするので大まかなイメージは朧げながら僅かに存在する。とりあえず、カカオ豆を焼いて中身を取り出して過熱していれば何とかなるだろう。


……チョコを渡す予定の愛華さんに手伝って貰いながら、周囲の女性に渡すためのチョコを作るのは心苦しいというか、情けない気持ちになった。俺が包丁で指を切り落としたところで再生するから心配は要らないはずなのだけど、それでも仕事としてカカオ豆の中身を包丁で切り刻む愛華さん。こういう時、料理が出来る人が傍にいるのは嬉しいけど、凄く複雑な気持ちだ。


彩花さんも料理は出来るけど、大きなお腹が目立って来て、中の赤ちゃんがお腹を蹴るようになったので座ることが多くなった。お腹を蹴ることが多い赤ちゃんは総じて元気に産まれやすいけど、彩花さんは痛みを感じているようなので少し不安。


「痛みを伴う場合、赤ちゃんは大きいことが多いので、私としては痛いことが嬉しいですよ」

「痛いのが嬉しいとか言うから、愛華さんや仁美さんからはそういう目で見られているのだと思うよ?」

「……はっ!?」


知識があって頭の回転も良くて、読心術に近いことも出来るのにたまにポンコツになるのは演技なのか素なのかわからないから反応に困る。まあ、彩花さんが少し特殊な性癖なのはもう周知の事実だから、今さら彩花さんは言い繕えない。


食事には常に気を遣っている彩花さんが、調理風景を見ておいてチョコを受け取ってくれるか不安だったけど、実際に食べて美味しいですと言ってくれたので時間をかけた甲斐があった。……よく食べていた甘いチョコの砂糖の量を知って、確かに健康に悪そうだとは思った。


砂糖を入れれば入れるほど、お菓子の類は美味しくなってしまうから困る。俺は幾らお菓子を食べたところで太らないし、1ヵ月以上飲まず食わずでも痩せないから大丈夫だけど、愛華さんは太った感じがするから貰ったばかりのチョコをパクパクと食べているのは少し心配だ。元々、191センチあるのに80キロを切っているから痩せすぎだとは思っていたけど。


……逆に凛香さんは、体重が重いのに太っているとは思えない。筋肉が前面に出て主張しているからか、80キロを超えているけど体型に違和感は無い。そんな凛香さんは甘さの調整をしていた時に作った苦みの強いチョコを希望したので、そちらを渡す。


ずっと一緒に過ごしてきて、甘い食べ物が苦手だとは思わなかったから、ほろ苦い感じのチョコが好きになったのだろう。一方で仁美さんは苦いチョコが駄目だったので甘いチョコを渡した。ハート型に成型する技術は無いので、平らなチョコだ。


チョコは中毒になる人もいるぐらいに美味しいものだけど、この味は世に広めないと損だろう。しかし身体に悪いという健康上の理由は、俺の言葉だけではなくて実験の裏付けもあるから、食べ過ぎないように規制は設けるべきか?……いや、これは個人の意思で何とかなるレベルだろう。


規制や制限をするべきところとしなくても良いところは、しっかりと見極めて判断を下そう。特に俺個人が断定してしまっても構わないような問題は、時間の短縮のために判断を下すべきだ。チョコのために賢人を集めて会議を行わせるのは、凄く時間が勿体無いような気もするし。


規制が少なければ自由度は高くなる。基本的に自由度は、高い方が良い。高めすぎるのも良く無いことだと、考え始めたけど。

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