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第156話 自転車

2月10日に海軍幼年学校の合格発表があり、島津さんは首席で合格。加藤さんが合格最低点で合格というある意味予想通りの結果に終わった。木下さんも結構危うかったが、無事合格したので一安心だ。


……周りが11歳や12歳ばかりなのに、18歳の彼女らが苦戦していた所を見ると軍に所属していなかった人間は本当に優秀な人しか受からないのだろう。面接があれば年上は不利だから、島津さんの首席合格はあり得なかったな。加藤さんや木下さんに関しては、優遇措置をしているかもしれない。


4月から彼女らは金沢にある海軍幼年学校で1年間の間、勉学に励む。途中で退学する前提なので、階級は貰え無さそうだけど。飛行機が完成して空軍が設立出来るようになったら、空軍の方で階級を用意する予定だ。


また、この日は自転車が豊森邸に届けられた。ほぼ俺のイメージ通りだった自転車は、無骨なフォルムでちょっと格好良い。試しに乗ってみると、ペダルが重いけど普通に走る。これは凄い。


「開発はアンドレさんが率いるチームが行いました。フランス人達の研究開発チームのリーダーの1人です」

「フランス人達が関わっているだろうな、とは思っていたよ。気球や自転車が彼らによって開発されたのは、本当にありがたい。うん?自転車の後輪と前輪は、同じサイズなんだ?」

「その方がタイヤの量産は楽だと言われました。マレーシアの領主達にはゴムの量産を始めるように伝達しています」

「マレーシアは……ほとんど全域を織田家が管理してたか。ああそうだ、織田信弘隆信(おだのぶひろたかのぶ)さんがマレーシア方面の元締めか」


ゴムはマレーシアで良質なゴムが採取出来るそうだけど、管理は織田家が行っている。まあ現在は一定の価格で取引が行われているし、マレーシア以外でもゴムは採取出来るから専売も何も無いが、ある程度の特権階級にいることは確かだ。


一度マレーシアには行ってみたいが、特産品以外は街並みもほとんど一緒だろうから行く価値があるのか微妙だな。ある程度は領主の特色も出るそうだけど、住宅街の建物の敷地の区分けの方法とかは全く一緒だ。お金があるならオリジナリティのある家も建つけど、普通の家の3倍近い価格になるから職人さん達も嫌がっているというのが感じ取れた。


……実際、既定の方法で組み上げる今の家は災害の多い日本や東南アジアにおいて合理的でもある。木のサイズとかその通りに採寸して柱にしてストックしてしまえばいつでも建てられるし、金太郎飴のような家はすぐに出来上がる。玄関の鉢植えとか増築具合で個性を出している地区もあれば、出していない地区もあるな。子供はすぐに迷子になりそう。


大量生産で規格化は凄く大切な工程だし、今さら規格化を否定したくも無いけど、最初から規格化するのは何か変な気がする。どちらかと言えば商品が世に出回ってから、サイズや機能をニーズの高かったものに均一化する工程だから、最初から規格化するのは言葉的にも間違っているように感じられた。


ブレーキは前輪が左手、後輪を右手にしておいた。入れ替えられるようにもしておいたけど、これはどっちが正解か俺には分からない。日本の自転車は右ブレーキが前輪だったけど、これは前輪を止める方が止まりやすいから利き腕のブレーキを右にした、みたいな理由だった気がする。……それなら、自動車も前輪ブレーキの方が良いのか?


自転車に関して言えば、日本は坂道が多いからスピードは出やすいし、スピードが出た状態で前輪を先に止めるのは危ないから結構悩む。


……というか、自転車のブレーキがよく完成したなと思う。フランスでは靴底がブレーキだったようだようだし、フランス人もブレーキの作製には四苦八苦したらしい。思いついてしまえば簡単な制御機構になったとは言っていたけど、時間がかかっただけのことはあって、きちんと止まる。


見た感じ、ブレーキを引くとチューブが引き上げられてタイヤに硬いゴムみたいなものが押し当てられている。タイヤを挟み込む部分のチューブが引き上げられるから、チューブが取り付けられているのとは反対側の部分でタイヤを挟み込むのか。気付いてしまえば簡単な仕組みだな。俺が改変前の世界で自転車のブレーキの仕組みを調べて無かったのが悔やまれる。


両側から挟み込んでいるためか、ブレーキはかかりやすい。ブレーキでタイヤに接触する部分は、耐久力を重視しているようであまり弾力性のあるようなものでは無かった。これは、自動車のブレーキにも使えそうな気がするけど駄目なのかな?いや、急に止まり過ぎるから自動車だと中の人が危ないかもしれない。


「まあ、何にせよこの自転車は商品化までさっさと持って行って、売り出そう。軍には最優先で配備だな」

「……身長が高い人のために大きなサイズの自転車や、子供用に小さなサイズの自転車も必要だと思います」

「……ああ、愛華さんだと小さいのか、サドルを上げたらマシになる?」

「いえ、純粋に窮屈です。タイヤに関しては、サイズごとに生産しても良いのでは無いですか?」

「まあ、タイヤのサイズは均一化する必要無いと思うから、サイズごとに作らせようか」


自転車の試運転は、凛香さんや愛華さんなどの身長が高い人にとって少し苦痛を感じるレベルで窮屈なようだ。……今気づいたけど、愛華さんも凛香さんも自転車に初めて乗るのに目を離した数分で乗れるようになってるな。身体能力が高いから、体幹もしっかりとしているのだろう。


結局、サイズは5段階ぐらい用意することになった。元々、研究チームにも170センチ台の人間しかいなくて、サイズのことが頭から抜けていたようだ。子供用も欲しいし、タイヤは別に何種類用意しても生産能力が格段に落ちるということは無いだろう。


そして本日、加藤さんと木下さんの接触事故が起こり、初めて日本で自転車同士の交通事故が起こった日にもなった。2人にとっては自転車が大きすぎたようで、初めてだったこともあり上手く乗りこなせなかったらしい。幸い、加藤さんが擦り傷を負った程度だったので一安心だけど、自転車が危険な乗り物だと認知されてしまった気がする。

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