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第154話 自動車

1月20日にガソリンエンジンの公開実験が開かれた。どうやら自動車が完成したようだ。いやまさか、指示を出してすぐに完成までこぎ着けるとは思わなかった。完成したとは言っても、大きな台車の上に置かれたガソリンエンジンが後ろの車輪を回転させただけだけど。それでも人を乗せて動いているのだから大きな前進だろう。速度は、時速10キロも無いが。


「自動車については、秀則さんの知識も大きかったですよ?」

「後輪をエンジンと連携させる仕組みは、何となくだけど覚えていたからな。……後方にエンジンを積むと、車室が狭くなりそうだけど」

「自動車の大きさを大きくすれば、問題無いと思います」

「自動車のエンジンの馬力が今はまだ低いから、大型化したら動かなくなると思うよ?」


エンジンで後輪を動かす、俗に言う後輪駆動の方向で自動車の研究開発は進めることになった。仁美さんが言う俺の知識は、後輪を動かすという発想に加えて、前輪とハンドルの連動についてのことなど、技術的には大したことが無い。


後輪駆動、前輪駆動という言葉は、MT車とAT車の違いを調べていた時に見かけた言葉だ。親父が将来、MT車の免許代なら出してやるとか言ってたから……久しぶりに、親父の事を思い出したな。この世界の親父は、どういう風貌何だろう?改変前と同じく、側面が白髪になっているのかな?


戦国時代にタイムスリップしてから、あまり両親については深く考えて無かったし、意識して無かったけど、今なら会おうと思えば会える。たぶん、改変前の記憶とか持ち合わせてないし、5歳の頃に豊森家が引き離したから親子の情があるのかもわからないけど。しかも、元の人格は乗っ取っていると言っても良いしな。どっちも森田秀則で変わらないはずだけど。


……まだ、両親には会わないでおこうか。とにかく改変前の親父のお陰で、後輪駆動が一般的だったということを俺は知っている。前輪の役割を方向転換に限定することも出来るし、今のところは後輪駆動で間違いないはず。


「自動車のブレーキも考えないといけないけど、油圧式という言葉しか知らないから難しいな。油の圧力?」

「今のままだと、ブレーキはかなり大掛かりな仕組みになりそうです。本当に後輪を止める方向で良いのですか?」

「前輪が急ブレーキをかけたら前転しそうだし、後輪ブレーキじゃない?いや、早いスピードだと全部の車輪を止めるべきなのか?でも自転車は後輪からだし……ブレーキに関しては、実験で色々と確かめて欲しい。

あ、そう言えば自転車はどうなったの?」

「今は試作第2号を作っている段階です。年末の報告書の中に設計図の完成と、試作第1号の失敗は書かれていたと思います」

「ごめん、流石に全部は読み切れなかったんだ。そうか、じゃあ自転車はもうちょっとで完成するんだ」


ブレーキの話をしていると自転車についても気になったので、仁美さんに聞いてみると報告書は提出されていたみたいだ。失敗だったとのことだから、見逃していたのだろう。自転車は自転車で重要技術だけど、簡単そうなのに思っていたより苦戦している。


仁美さんが覚えている限りを話して貰うと、試作第1号はチェーンが外れやすくて困っているようだ。だから一体型にするようで、チェーンもカバーみたいなもので覆う案を試している最中とのこと。自転車はもうすぐで商品化も可能そうだな。自転車が普及すれば……馬が要らなくなるからどう処分するのかも考えないとな。


今でも、わりと移動に馬を使用しているところは多い。というか鉄道網が届かない部分をカバーしていたのが馬だ。それが不要になったら、馬の産業に関わっている人の多くは大打撃を受けるな。まあ、ほとんどが国有企業だし実質ノーダメージだけど、馬の大量屠殺が想像出来てしまう。


せめて、馬肉の消費が追い付けるように屠殺も計画を立てるよう言っておくか。まだ大量屠殺を実行するとは決まって無いけど、行き場を失った馬を養育するにもお金がかかるしな。


「自転車は軍にも使えるから、自転車の大量生産が容易になったら陸軍の訓練には自転車に乗る訓練も追加しといて」

「自転車は、専門の部隊を作っても良いのではないですか?」

「自転車大隊は作る予定だけど、乗れる人は多い方が良いと思う。連絡役とか今まで以上に気軽に移動できるだろうし」


愛華さんが自転車について、専門の部隊を作ろうと提案して来たけど、出来れば一般の兵士も乗れるようにして欲しい。自転車は大量生産が容易だと思うし、乗れる人が多いと取れる戦略の数も違って来る。


……何だかんだ言って、自転車は速いからな。今の軍人の身体能力だと時速20キロは余裕で出せそうだ。地面を舗装する必要はあるけど、それでもメリットが多すぎる。悪路でも、ある程度は走れるし。試作第2号で安全性が確認されれば、2月の頭には豊森邸に自転車が数台寄贈される予定だから、今から楽しみだ。


「秀則様!見て下さりましたか!」

「うん、見てたよ。本当に良くやって……田中さん、何日寝て無いの?」

「あっはっは、まだ5徹目です。いやぁ、ギリギリ公開日に間に合って良かった」

「安香さん。何でこの人完成してないのに公開しようとしていたの?」

「この人は、締め切りが無いと本気で働かないので。私がギリギリを見極めて公開日を決定しました」

「そういう安香さんが1番ダメージ受けて無い?ちゃんと寝てよ?」


自動車の公開実験はすぐに終わってしまったけど、十数分間は自動車が時速6キロから8キロぐらいでゆっくりと、でも意外と早く走っていた。持続性や安全性も、確保してそうだな。そう田中さんに言うと、前に1度爆発しているから、安全性は特に意識しているとのこと。その後、田中さんは倒れた。この人、止まったら死ぬマグロみたい人だな。


普段から100%を出していると思うけど、150%でも働けるから働かされたのか?そんな感じで安香さんに聞いてみると、田中さんが自ら追い込むようなスケジュールに設定しろと言って来たようだ。期待に応えた安香さんは、本当にギリギリのスケジュールを組んだということだな。


……天才たちの考えていることはよく分からないけど、締め切りギリギリの方が頭の回転は早くなるのは何となく理解出来る。宿題とか授業10分前が1番捗るし、間違ってもないから注意し辛い。とりあえず、休暇は与えようか。

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