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第146話 お年玉

「明けましておめでとうございます。ぷろーじっと!」

「明けましておめでとう。ドイツ語の勉強も始めたの?」

「はい。ロシア語とドイツ語の勉強をしています。ドイツ語は少しパターンが多いので、覚えるのが難しいです」


今年9歳になる山田アリスちゃんは、日本語フランス語英語スペイン語に加えて、ドイツ語とロシア語の取得も目指しているらしい。六ヶ国語を話せるのは何と言うのか分からないけど、思っていた以上にアリスちゃんはヤバい奴だという事は分かった。


「秀則さんが、外国語を沢山話せる人は賢いというなら、私も十か二十ぐらいの言語を覚えましょうか?」

「……彩花さんの頭はどうなってるの?」

「外国語なんて、1週間もあればマスター出来ますよ?」


そして彩花さんがアリスちゃんに対抗心を燃やし始めた。今でも英語やフランス語は分かるようだし、ロシア語も必要かもしれないからと覚えたようだけど、その他の言語も今から取得するようだ。お腹が大きくなってきたから安静にしないといけない時間も増えるだろうし、彩花さんにとって外国語は1週間で覚えられるようなものらしいから、サンスクリット語でも覚えて貰おうか。


「一般人の平均獲得言語数って、どれぐらいなの?」

「平均にしてみれば1.2を下回るでしょう。日本語しか話せない人も多いですから」

「ああ、良かった。俺だけ話せないのかと思った」

「しかし豊森家の平均となれば、2を超えるでしょうか?」


英語を話せる愛華さんによると、豊森家の平均言語獲得数は2を超えるらしいので、俺は平均以下らしい。……英語は正直に言うと、ちゃんと発音が出来ているのか怪しいぐらいで苦手だし、日常会話は難しいレベルだと思う。それにしても外国人の受け入れは出来ないのに、外国語を学んでいるのはやっぱり違和感があるな。


「あ、これお年玉ね。あまり入って無いけど」

「え!?あ、ありがとうございます!嬉しいです」


アリスちゃんにはお年玉をあげたけど、アリスちゃんは日本人への外国語指導で月に3万円程度を稼いでいる。週3回3時間で月3万円なら、労働時間は月36時間だから時給830円前後かな?食券販売所に座っているおばちゃんが時給400円だったことを考えれば、妥当か少し安いぐらいだと言えるだろう。混血人になると一気に甘くなるとか思っていたけど、単に貢献度が日本人と変わらないだけか。


そんなアリスちゃんはフランス人に対しても日本語指導をしているので、そちらは別途お金をもらっているようだ。9歳の幼女が月に5万円ほど稼いで貯蓄している姿は微笑ましいというか、逞しいというか……。


……もう少しお年玉は入れてあげるべきかとも思ったけど、俺のお金でも無いのであまりばら撒くわけにもいかない。加藤さんや島津さんは戸籍上俺より年上だし、11歳以上は大人な世界で18歳19歳を相手にお年玉をあげなくても良いだろう。


「本来のお年玉は供えたお餅を分け与えることだったのだけど、見事に現金化してたしなぁ」

「でも、秀則さんも慣れた様子でお年玉袋にお金を入れてませんでしたか?」

「改変前も現金化してたから。風習は、どう足掻いても変わる時は変わるものだな」


お年玉の起源は年神様へ供えたお餅を分け与える年魂が由来だ。数え年だったから、正月に歳を加算する意味も含まれていたな。俺が数え年を廃止させたから、いずれ現金化するだろうとは思っていたが、結構古くからお年玉は現金となっていたようだ。


「お年玉、私は貰えないのですか?」

「えっ、仁美さんは子供じゃ……子供限定って訳でも無いの?」

「家長が家族全員に渡すものなので、子供限定というわけではありませんよ?」

「そうだったのか。大人でも貰うものなら、知っている人全員に渡してくるよ」


アリスちゃんにお年玉を渡してから、妙にそわそわしていた仁美さんにお年玉は子供限定では無いことを伝えられ、仁美さんや親衛隊の隊員達、受験生となった3人娘にも渡していく。お年賀とお年玉で相殺している気がするけど、まあ良いか。アリスちゃんに渡した時と同額で、全員一律1万円だ。渡したのは豊森邸の中にいる人達だけだけど、結構な額のお金を使うことになった。


年魂は、家族全員に渡すようなものだったな。そりゃ、子供限定とはならないか。大人はお年玉を貰わないイメージだったけど、よくよく考えてみれば大人にも貰う権利はある。


この後、外は未だに長蛇の列を為して参拝客が訪れているので中庭で餅つきを行い、お雑煮を食べることになった。餅つきの方はぺったぺったと杵でついていると、餅つきの際中なのに餅が驚異的な粘りを見せ始めたので凛香さんに任せることにする。杵が持ち上がらないレベルでコシがあるって、老人に食べさせたら駄目なやつだよな。


お雑煮の方は昆布だしベースのいたって普通のお雑煮。立派な海老や丁寧に皮が取り除かれた鶏肉が汁物に入っているのはいつものことなので美味しく頂く。別に鶏肉の皮が嫌いなわけでは無いし、むしろカリカリに焼き上げられた鶏皮とか好きな部類だけど、お雑煮の鶏肉は皮が無い方が個人的には好きだな。


お雑煮に入っている驚異的な噛みごたえのお餅を食べながら、降って来た雪を眺める。お正月に雪は、京都だと珍しいかもしれない。1年弱過ごしただけだから断言は出来ないけど、平均気温は改変前の日本と比べて下がっているはずだ。温室効果ガスとか地球温暖化とか、あまり真剣に考えたことは無かったけど、肌で実感するようになるとは思わなかったから早めに対策も考えようか。


……経済成長に影響の出ない範囲での規制にはするつもりだけど。それでも公害防止とか環境保全とか、工業化する際に出来そうなことはしておこう。

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