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第132話 中華併合

10月9日に中国共産党が無条件降伏を呑み込んだので遠慮なく併合を行ったという報告が届いた。反感を持つ中国人とは降伏後も戦闘があったようだけど、丸裸の民間人と完全武装の軍人が戦ったみたいで、日本軍側には被害が出ていない。本当に容赦がないけど、世界統一を目標に掲げる以上、容赦はしていられない。そもそも中国は元から併合する計画があったようだし、個人的にあと十数カ国ぐらいは地図上から消す予定だし。


思っていたよりも呆気なく中国との戦争が終わったけど、戦場から遠く離れると戦争の実感が薄くなるのは経験済みだ。実際は、最後まで抗戦されて、その部隊をきっちりと倒してから降伏を促したのだろう。過剰とも思えるほどの軍人を中国へ送り込んだけど、元中国領にいる軍人の半分ぐらいが治安維持用の部隊となった。


武装しているけど、警察も銃は持つし、警察のような存在になるのかな。戦争の結果、日本軍の被害は死傷者18万人で戦死者は10万人を超えている。一方で中国軍側は合計で230万人以上が死んだので、特に若い男は根こそぎ動員され、死んでいる感じだ。


そんな状況で日本は占領下に置いた若い中国人男性10万人を戦争中にも関わらずさっさとオーストラリアへ運んでいる。反抗的なのは牢に入れているだろうし、中国の沿岸部にはもう数少ない老人と女性だけがいるような状況だ。猿でも日本がやろうとしていることには目星が付くな。子供は日本本土へと輸送中なので、洗脳教育が始まるはず。そして今これを止めることは、今の日本にとっては害でしかない。


「……統治って難しいな」

「秀則さんは、立派に領地を統治していたじゃないですか。少なくとも大規模な反乱が起きていなかった時点で、統治者としての資格はあると思いますよ。……私以上に」


仁美さんと2人で、日中戦争の経過を纏めていく。思っていた以上に、南の戦線にいた軍団長が優秀だったみたいだ。今の日本の軍人で無能な人を探す方が難しいかもしれないけど。キルレシオは全体で23:1かな?武器の性能の差もあるけど、中国軍は飢えとも戦っていたし、日本軍に慈悲の心が無かったから妥当な数字に見える。


……本当に、中国はこの食糧事情でよく10月まで戦意を保っていられたな。小麦もそうだけど、米とか野菜とか軒並み戦争中は収穫量が2割程度にまで落ち込んでいた感じだから、餓死との戦いでもあった。中国奥地の都市部では、餓死による死者数も相当なものだろう。


「……10万人の日本人が、亡くなったのですよね」

「正確には、10万2092人だな。でも、仁美さんが1人で抱え込むものでもない。俺が殺したようなものだし、何なら中国の白痴化を狙っていた常久中将が大体の原因じゃない?」

「それでも私は豊森家の当主である豊森美雪の一人娘ですし、責任は感じるものがあるのです。……だから、必ず彼らの死を無駄にはしません。中国という戦果は、きっちりと日本国民に還元します」


仁美さんは今回の戦争が、初めて関わった戦争なのだと思う。前回が15年前の海戦だから、仁美さんはその時まだ6歳か。10万人なら、街が1つ消えるようなものだ。230万人なら、小さな国の国民が全員死に絶えたのに等しい。


……上の立場に立つ人間は、死ねと命令するしかない状況がある。特に今回の日中戦争で中国側は、そういう状況が散見して厭戦気分が蔓延していた。国を守るための戦いなのに、厭戦気分が広まっていたのは国家への帰属意識が低かったのも原因だろう。


日中戦争では多くの人が死んだ。これから、もっと多くの人が死ぬだろう。戦争がこの世から無くならない限り、戦争で人が死ぬ数は増え続ける。そして複数の国が世界に存在する限り、戦争が起きることで儲ける人間がいる限り、武器が生産され続ける限り、この世に戦争は無くならない。


人類は人種が違っても同じ人類だから分かり合えるはず、という思想は正しいのかもしれない。しかし、人種が違えば思考の根本が違う。黒人と白人は、21世紀になっても完全な和解は出来ていない。むしろ、今まで抑圧されてきたものが表に出てきていたのではないだろうか?


まだ、この世界では人種差別撤廃条約なんてものが無い。人種の違いが、運動能力や学習能力の違いだと訴えても良いのだ。そもそも、人種間の運動能力の差はスポーツで話題となっていた。野球で外国人枠なんてものがあるのは外国人と日本人の運動能力の差を認めているようなものだ。サッカーではワールドカップで複数回優勝する国もあれば、日本のように優勝する可能性が見出せない国もある。


……運動能力の差は人種間の差を認めるのに、学習能力だけは違いが無いというのは正しいのだろうか?別に日本人が賢くて優秀だと言い出すつもりも、その根拠も無いけど、倫理観が事実すら捻じ曲げるのも良くないことだと思う。


まあ、多民族国家なんて失敗例も多いし、日本人化はある意味効率的な日本人の増やし方でもあるのだろう。それに中国という広くて肥沃な土地が入ったことは、これからの日本にとって非常に大きい。そのために死んでいった者達への感謝は忘れないし、弔う気持ちは常に持ち続けている。


とりあえず、中国を骨抜きにしてしまった豊森常久さんとは一度会って話をしてみたい。いや、37歳で中将で参謀次長な時点でただ者では無いことはわかるし、忙しそうな人だということはわかるけど。たぶん、次期参謀総長に最も近い人物だろう。


……戦争に負けてから、相手が卑怯な手段を使ったと文句を言うことは出来ない。戦争に汚いも綺麗も無いから、常久さんは個人的に好きな部類の人間に入る。戦争をする場合、その準備段階で勝敗が決まることが普通だ。常久さんは軍人として、当然の提案をしていただけだな。

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