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第11話 豊森秀則という人間

早目にやっておきたいこと、後回しでも良いけどいつかやるべきこと、やってはいけないことを頭の中で考えて整理していると、頭が痛くなってきた。例えば、すぐにでも今の日本の政治体制や戦術は改めたいのだが、この二つは俺が基礎を作ってしまっている。


……今の国の仕組みや、ドクトリンを批判すると、この国全体が信仰している『豊森秀則』の批判となる。もしもこのような批判や改革が積み重なった場合、最悪俺が偽者扱いされるだろう。実際に衝角戦術にどん引きした俺を見て凛香さんは不思議そうな顔をしていた。幸い、国の全権限を持っている美雪さんや、その娘である仁美さんは俺のことを本物だと妄信しているようなので問題無いけど、仁美さんもかなり反応の悪い部分があったから不安しかない。


まだあまり指示を出してない時にこのことを気付けて良かった、と言うべきか。研究機関の新設ならば豊森秀則らしい行動だろう。とにかくこの世界で実績をつくるまで、俺が昔にやらかした事を問題視をしない方が良さそうだ。全体主義的な思想や独裁政治は現状だと手を加えることも出来ない。まあ、全体主義的な思想に関しては変えるつもりが無いけど。国を運営するにあたって、国民の反発というものが無いのはそれだけで有り難い。


海軍の戦術はノートに空母の事や飛行機の事を多く書いているので、両方を開発し終えれば自然と変えられるだろう。空母を開発し終えるまで何十年かかるか想像すら出来ないけど。空母で衝角戦術をしようとするなら救いようがないから諦めて説明する。


陸軍の戦術は信長が天下統一する目前、俺が九州を平定する時によく使っていた大量の大砲を並べて敵陣地をぶっ壊す、出て来た敵を大量の鉄砲隊で迎撃する、という戦術が未だに使われている。一応、無問題かな?大砲や銃に関しては進化しているけど、火力面や飛距離面での改良はあまり重視しておらず、信頼性の向上と耐久性の向上を重点的に行っていたようだ。信頼性と耐久性だけは18年前のイギリスより上だと思う。


……これは、戦場ですぐに使い物にならなくなった大砲を俺がよく愚痴っていたからだな。飛距離を伸ばす前に耐久性を上げていたのは事実だ。


空軍に関しては、飛行機が開発されてないことは本当に予想外だった。せめて外観と簡単な構造の説明さえノートに書いていれば、飛行機の原型ぐらいは作製されていてもおかしくなかったのに。


飛行機を開発するには、エンジンが必要だ。とにかく内燃機関を開発しないといけないのが今の問題となっている。飛行機の羽を開発するためには……ハンググライダーで実験しようか。


「ハンググライダーってある?」

「はんぐぐらいだー、ですか?」

「大きな羽を人が背負って、丘や建物の上から飛ぶ感じ。三角にした鉄枠の上に薄い羽みたいなものを付けたやつ」

「そのようなものは無いですが、飛行機と何かつながるものなのですか?」

「ハンググライダーにエンジンを積んだら飛行機になる……のかなぁ?」


とりあえずハンググライダーのようなものも無いそうなので、自作するしか無いだろう。構造なら大まかなものは書けるし、細かい部分は試行錯誤で何とかなる。


「そう言えば、飛行機に関しては飛行機という言葉だけが独り歩きしているのか」

「……飛行機の開発は、今までに何度か行われましたが、全て頓挫しています」

「へえ。実際に何度か取り組んだのなら何かしら残ってそうなものだけど……その顔は残ってないのね」

「はい。申し訳ありません」

「愛華さんが謝ることじゃないよ。それじゃあ飛行機の前段階のハンググライダーの開発のために、明日から背の低い人を探すよ」

「あの……私達は使って貰えないのでしょうか?」


ハンググライダーの実験をしようと決めた後、背が低くて体重の軽そうな人を探そうと考えていたら、愛華さんが捨てられた子犬のような目で見つめて来た。愛華さん、身長が190センチぐらいありそうだし、他の親衛隊の方々も身長が高くて筋肉があるからかなり重いと思うけど……。


「……愛華さん、体重何キロ?」

「77キロです」


失礼だと思いながらも、試しに愛華さんの体重を聞いてみると77キロとの返答が。俺より20キロ以上も重い。190センチで77キロなら普通、なのか?やっぱり筋肉が重いのか、大きなお胸が重いのか。他の親衛隊の人も60キロを切ってそうな人はいないので、小柄な人を見つけるしか無さそうだ。


「具体的に、どれぐらい軽ければ空を飛べるのでしょうか?」

「最初は小さなもので実験したいから……50キロ以下?」

「わかりました。頑張ります」

「……体重を減らすつもりなら、全力で止めるからね?大型化すれば愛華さんでも飛べると思うし。

それに最初は上手く飛べずに怪我をする恐れもあるし、最悪死ぬだろうから……更生の余地の無い犯罪者とかを使いたい」

「そのような犯罪者を秀則様に近づける訳にはいかないので、今すぐ募集をかけますね」


ハンググライダーの知識は造形以外皆無だけど、体重の軽い人の方が飛びやすそうだと思っているから、愛華さんや凛香さんがハンググライダーの実験に関わることは無いだろう。一応護衛だし。筋肉があって頑丈そうなのは魅力的だけど、流石に重すぎる。


夜になって、布団の上に寝転がる。愛華さんに1人で寝たい、と贅沢を言ったら1人で寝かせてくれた。部屋の中に、護衛の人もいない。この世界に来てから初めて1人になれた気分だ。部屋の外には護衛の人がいっぱいいるけど。


……この世界に来てから、今日で3日が過ぎた。想像以上に日本は遅れているし、諸外国からは嫌われている。だけどまた好き勝手に生きていられるなら、好き勝手に生きて日本を発展させよう。

これで1章の現状確認編は終わりです。閑話を挟んでから主人公が主体的に動き始める2章が始まります。

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