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第10話 帰還後の世界 

一通り、現状が把握出来てしまったのでまとめよう。


まず最初に、この改編後の世界は戦争がとても多い。改変前も多かったが、それより遥かに多い印象だ。帝政の国が多いことは、戦争だらけの世界に拍車をかけているのだろう。平和主義者とかいなかったのかな?


あと、未だに国際法の概念すら無い。この原因の一端は、日本が西欧の植民地を強奪していったからだと思う。1600年代後半から1700年代前半にかけて、日本人は勝手に他国の支配下である東南アジアの土地に勝手に居住し、勝手に都市をつくり、勝手に人や物を本国に持って帰った。怒った西欧諸国に攻撃されると、この年代にしては強大な軍で反撃。西欧諸国の艦隊を次々と木端微塵にして東南アジアから白人を追い出している。


宣戦布告無しの戦争は、ここから始まったらしい。


現在世界各地で起こる戦争は、ほとんど宣戦布告というものが無い。物騒過ぎる世界観だけど、全ての国が宣戦布告無しの戦争を仕掛けて仕掛けられいて、もうどこの国も文句を言うことが出来ない。


そして現在の大日本帝国は、はっきり言ってしまえば物量で誤魔化しているだけの技術後進国だ。それを知ったイギリスが、何故日本に対して総攻撃を行わないか。


その理由は現在アメリカの利権をフランスと争っているから、となっているけど、これだけは正確な情報のようだから仁美さんや愛華さんを信用する。


そこから一歩踏み出して、大日本帝国という太った怨敵を放置し、アメリカに向かう理由は何故か、ということを宿舎でじっくりと考えた。


考えた結果、アメリカの石油を奪い合っているのではないか、という思考に至った。


「……石油が、もう使われているのかな。そりゃ、イギリスとフランスは争うわけだ」

「石油、ですか?たしか秀則様の書にもあった中東でよく採掘できる燃料、ですよね?」

「中東にもあるけど、アメリカの方も多かった気がする」


石油と言えばサウジアラビアやイラン、イラクと言った中東地域だけど、アメリカも石油産出国だ。それを争って戦争を継続しているとなれば、フランスやイギリスは既に石油の有用性を見出しており、長年の戦争を継続させてでも獲得するべきものだと理解していることになる。


まだ飛行機が開発されてなさそうだから、石油の重要性は極まってないか。というか、飛行機を開発したことで有名なライト兄弟はアメリカ出身だったし、発明の父エジソンもアメリカ出身だ。ずっとアメリカの地で大国が何度も激突していれば、近代文明の幾つかが遅れるのは当然か。それでも世界全体でここまで遅れているのは解せないけど、日本以外の国は度重なる戦争で改変前より人口が減少しているだろうし、近世以降に生まれる筈だった発明家が生まれてなかったりするのだと思う。


……飛行機が本当に他国で開発されてない、とは断言出来ないんだよな。イギリスとかフランスとかで既に開発されている可能性が無きにしも非ず。


「アラスカで石油の発掘は……無理だな。寒すぎるし、何処にあるかどうかも定かでないものにお金はかけれない」

「その、石油が確かにある場所はどこなのですか?」

「確実にあるのはペルシアとサウジアラビア……じゃなかった、ヒジャーズ王国だった」

「ヒジャーズ王国はオスマン帝国の庇護下にあるため、オスマン帝国との全面戦争になると思います。しかしペルシアであれば……ロシア帝国とオスマン帝国がどう出るかわかりませんが、仕掛けることは出来ると思います」


現在、俺がはっきりと場所を覚えている油田地帯は中東のイラン、イラク、サウジアラビア、クウェートと南北のアメリカ大陸。あとはロシアとペルシアだ。その事を伝えるとまず戦争で奪いに行く、という発想が出る愛華さんが怖い。


石油産出地で地名を言えるのはバクーとアバダン、マラカイボぐらいか。ベネズエラ辺りは今どこが保有しているのだろう?


「ベネズエラがある南アメリカ大陸は……ほとんどスペインが領有してるのか」

「南アメリカ大陸にはスペイン帝国とポルトガル王国、オランダ王国が入植しています」

「……それは何年前の情報?」

「……20年ほど前です」


世界最大規模の油田であるマラカイボ油田を保持している国を確かめたらスペイン帝国だった。この世界、わりとスペイン帝国が幅を利かしているので、もしかしたらマラカイボ油田に気付いているかもしれない。


……いや、確実に気付いているか。それにしても、明確な世界地図というものが作れないのは痛い。アメリカで行われているイギリスとフランスによるアメリカ争奪戦がどうなっているのかがわからないし、アフリカの植民地が今どうなっているのかもほとんどわかっていない。小競り合いで獲得した捕虜が言っていることも大体は古い情報だし、正しい情報とは限らない。最後に纏まった捕虜を獲得したのはインパール会戦じゃなくて、その前のダッカ侵攻の時だし。


「早急に、ロシアとの国交正常化を目指すのは正しかったわけだ。唯一日本と戦争をしてない国だし、プロイセンと同盟関係にあるんでしょ?」

「はい。ロシア帝国とプロイセン王国の同盟関係が長く続いていることは確かです」

「プロイセンとロシアが、ね。メキシコは……フランスとスペインに挟まれている形になるのか。そしてどちらとも仲が悪い、と」


この世界で一番仲の良い同盟は、皮肉なことにプロイセンとロシアの露普同盟だ。他に、わかっている限りの国家間の関係から信憑性の高いものを纏めると……



大英帝国とフランスコミューンは険悪

フランスコミューンとスペイン帝国は険悪

スペイン帝国とプロイセン王国は険悪

プロイセン王国とフランスコミューンは険悪

フランスコミューンとイタリア王国は険悪

イタリア王国とオーストリア=ハンガリー帝国は険悪

オーストリア=ハンガリー帝国とオスマン帝国は険悪

オスマン帝国と大英帝国は険悪


大日本帝国は全西欧諸国と険悪



……戦争しまくっている世界だからか、険悪関係の国同士で繋げると世界一周が出来る異常事態。いや、それは改変前の世界でも同じかな?


露普同盟や、スイスとイタリアが相互援助したりしているから、全ての国同士が不仲という訳では無い。全方位が敵という国はイギリスとフランスぐらいか。イギリスはまだスペインと関係構築しているようだからマシだけど、フランスは本当に周り全てが敵だ。まあ、共産主義化していたら他国にとっては仲良くするメリットが皆無か。


一昨日、仁美さんに出した指示……外交関係で最初に選んだロシア、メキシコとの関係構築はかなり重要になりそうだ。造船所の改造も、敵の海軍技術が上なら必須だろう。船舶の大型化を目指して、内燃機関の開発を目指す。内燃機関の詳しい原理とか方法とかはわからないけど、蒸気船の時と同じで実験を繰り返せば何とかなるだろう。何とかなって欲しい。


後は石油だけど、日本にあるとしたら新潟と……インドネシアのパレンバンだっけ?パレンバンがどこにあるかピンと来ないけど、かなり南だったはずだ。後は満州に石油があったはずだけど、満州の何処にあるのかがわからない。今の中国との国境線より内側にあれば有り難いけど、どうだろうか?


とりあえず思いつく限りの場所で、石油があるかどうかの調査を始めようか。幸い人口は多いし、掘りまくれと言えば油田が見つかるかもしれない。


……油田を見つけるためにとにかく掘れ、と言ったら日本全土が穴だらけになりそうだから、指示の出し方は注意せざるを得ない。

歴史のジャンル別日間、週間、月間ランキング1位にランクインしていました(2018年9月15日)


沢山のブクマや評価、本当にありがとうございます。



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