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第119話 姉弟

8月21日になり、愛華さんが親衛隊に戻って来た。休暇中も前半は結構な頻度で会っていたような気がするけど、後半は遠出をしていたようなので会うことは無かった。服を大量に買い込んだらしいが、普段は軍服だし、着る予定が無さそう。


今日からは親衛隊の最大戦力である凛香さんが休みに入るが、凛香さんの兄弟姉妹に会ってみたいので凛香さんの帰省にもついて行く。凛香さんの家は彩花さんと同じく大きい上に、道場があって数十人で泊まっても大丈夫なようだ。お義母さんの1人が、温泉宿も経営しているらしい。


凛香さんの父は、無手勝流の道場を開いていると言っていた。無手勝流は戦わずして勝つ、もしくは自分勝手に戦うという意味だったと思うけど、その道場を開いているとはどういうことだろう。そんな事を考えながら凛香さんの実家がある三重まで移動すると、大きな道場が駅からでも見えた。


「……あそこがお父さんのいる道場。無手での戦いで生き残る術を教えてる」

「ああ、単に無手での戦いを教えているだけなのか。……お母さんの1人が宿を経営しているってことは、他にも何人かいるの?」

「うん。私のお母さんは、お父さんの7番目のお母さん。他にも7人ぐらい、お義母さんがいる」

「計8人と重婚か。……豊森家の人間に、嫉妬をする人がいるのもわかるわ」


凛香さんには兄弟姉妹が多くいるそうで、凛香さんの実家へ向かう途中では凛香さんの妹の安香(やすか)さんと出会った。姉妹の中で1番身体の小さな彼女は陸軍に所属していたようだけど、春から研究者にジョブチェンジしたと言っている。元軍人だから、頭の方は良いのだろう。


「待って、安香さんで1番身体が小さいの?」

「私が1番小さいですね。末妹です」

「……身長175センチで、1番小さいのか」


安香さんは22歳で、凛香さんも22歳。双子では無いとのことなので異母姉妹だろう。22歳で末妹ということは、凛香さんのお父さんはかなり高年齢な予感がする。


「まだ私の下に、弟が3人います」

「ああ、妹は安香さんしかいないってだけで、弟はいるのか。凛香さんのお姉さんって何人いるの?」

「9人。私達2人を加えて、11人姉妹」

「……それが全員、身長175センチオーバーか。全員揃った時の姿を見てみたいよ」


姉が何人いるのか凛香さんに聞いてみると、姉は9人いるから11人姉妹だと答えられた。凛香さんは身長187センチだからか姉妹の中では2番目に背が高く、姉妹の中で1番強いそうだ。体格の良い兄弟相手でも無双するようだから、強い一族の中でも一際輝く戦闘能力を持っているのだろう。その後は家での凛香さんの様子でも聞きつつ、道場の方へお邪魔する。


「おらぁ!」

「キィイィヤァァアア!!」

「ァァァアアアアィイ!!!」


……道場の中に入る前から凄い奇声が聞こえているけど、近所迷惑になって無いのかな?あ、近所が全員近縁の親族なのか。それなら大丈夫、なのか?




道場の中に入ると、凛香さんの父が出迎えてくれた。今年で62歳とは思えないほど鍛え上げられた身体で、ムキムキの巨漢だ。ちなみに来年、9人目の嫁と結婚するそうで、まだまだ現役らしい。結婚相手とは、40歳差ぐらいになりそうだな。父と娘以上の年齢差だ。


そもそも既に歳を食っていた状況で凛香さんという色々と圧倒的な存在を生み出したから、凛香さんの父はかなり期待をされているようだ。というか凛香さん以外にも文武両道な軍人が多く、父親としてかなり優秀と評価をされている。父親としての評価は、端的に言うと子供を作る能力だろうな。


「父としての評価って、ちゃんと網羅してるの?」

「はい。優秀な子供が複数いる親であれば、きちんと把握されていると思います」

「最低でも、2人以上は優秀な子供がいないと評価されないのか。となると、豊森家が有利なのか?」

「いえ、どちらかと言えば平均レベルの親が優秀な子供を産む方が分かり易いので、豊森家が多いとは言えません」


愛華さんにそこら辺を聞いてみると、父親としての能力は、数を産める豊森家の人間が有利かと思ったら、そうではないらしい。親世代や自身以上の子供じゃないと評価され辛いので、平均レベルの一般人の方が評価はされやすい模様。それでも重婚が有利になるから、豊森家の人間の方が有利そうに思える。


道場の中では奇声が飛び交っていて非常に五月蠅いので、少し離れた温泉宿まで移動する。その旅館の女将さんは、凛香さんのお義母さんの1人だ。凛香さんのお姉さんも2人、働いているようなので会ってみると凛香さんより筋肉の主張は控えめだった。……40歳間際なのに、太ももや脚に筋肉が残っているだけでも凄いと思うけど。


「あれ、最初の姉がもう39歳ってことは、甥や姪と歳が近い?」

「……うん。1番上の兄さんの娘が、今23歳だから私より年上」

「……年上から、叔母さんと言われるのか」

「そう言ったら、怒ることにしてるから、みんなに凛姉って呼ばせてる」

「なるほどね。凛香さんが怒るところとか、想像したくないな」


凛香さんの兄弟姉妹は合わせて25人だ。その内の20人が元軍人だったり現役軍人。子供の8割が軍人とか、色々と凄いな。そんな凛香さんの甥や姪の中には、凛香さんより年上の人もいるそうだけど、凛姉と呼ばせているようだ。そう言えば安香さんも凛姉と呼んでいたな。呼びやすいし、親しみやすい呼び名だ。


今日は凛香さんがよく喋ると思っていたら、安香さんから普段はもっと喋っていることを教えられる。やっぱり、家の中では雰囲気や態度も変わるのだろう。……これ以上によく喋るという凛香さんが、あまり想像出来ないな。

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