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第117話 軍事演習TRPG

3d6で、18が6連続で出る確率は216分の1の6乗か。試しに10d6を彩花さんに振らせてみると、10個全ての6面ダイスで1が出た。久しぶりに、背筋が凍る思いをした気がする。


……本気でかかってこい、とは言ったけど、ダイスの目を操れるとは思わなかった。流石に全ての場面で6を出されると勝てる見込みが欠片も無いので、親衛隊の中でもまともな人間である鈴香さんと怜可さんにダイスの代役をお願いをする。彩花さんはTRPGで手加減が上手いという理由も察したけど、きっといつもダイスの目を操ってギリギリで負けてきたのだろう。


ちなみにこれ、凛香さんも9割以上の確率で出来るようなので豊森家の人間の恐ろしさを知った。この世界ではTRPGを始める時に、ダイスの目を操る事が出来るのか確認をしないといけないのか。


ダイスの代役という発想のお陰で彩花さんのチートの一部は封じられたが、そもそも素の頭脳がチートなので最初の戦略フェイズで行き詰まる。最初の戦略フェイズでは大きな衝立を真ん中に立てて軍を配置するが、今回は日中戦争で実際にあった北京防衛戦の再現を行っているので、若干攻撃側寄りに衝立が置かれている。俺が攻撃側、中国軍の総司令官で、彩花さんが防衛側の日本軍の総司令官だ。


数は北京防衛戦があった当日と同じく攻撃側が西に12万人、防衛側は東に10万人。現実とは違い、この中国軍には疲労が無くて装備も日本軍と同等だ。とりあえず地形を見た時、左翼側、北側から攻め込めそうだったので左翼偏重にしていたら読まれていた。見えている範囲だけでも、最初の戦略フェイズで負けてそうなことがわかる。


「今回は時間短縮のために1ターンを2時間とします。そのため、計略と策略の使用回数は実質半減するので注意して下さい」

「ああ、倍速でも出来るんだ。大軍だから動かすのにも時間がかかるし……うん、大丈夫」


本来よりも倍の速さで戦場を移動する四角い駒達。積み木のように重ねることで、最大で10個まで重ねられる。1つで1000人なので、1万人まで1つのマスに置けるということだ。今はまだそこまで重ねられている戦場が無いし、見えていないということで後方に置かれている駒も多い。


「南西から秀則様の軍が侵入しました。数は8000です。彩花様の軍と接触するため、局地戦に移ります。道幅はやや広い、ですね」

「ん、やや広いでも伏兵っているの?」

「はい。秀則様の軍は大砲がありますから、初手で5箇所にまで砲弾を撃ち込めますよ」

「じゃあ……C54、D51、O46、R32、T35の5箇所に砲撃」

「……えっと、全弾命中です。彩花様は損害判定をして下さい」


局地戦フェイズではお互いに振り返って後ろに置かれている机で行い、相手の軍が見えない状態で行う。これ、GMが1人だとやっぱり過労死しそうだ。現在は今川さんを含めて3人で分担しているお陰でスムーズに戦えているけど。


局地戦フェイズに入る度、彩花さんは軽く悲鳴を上げるが、隠れられそうなマス目は30箇所ぐらいしか無いので当たる時は当たる。そうこうしている内に日本軍の本陣まで迫れそうだったので一気に攻めると、奇襲部隊にこちらの本陣が襲われた。


「秀則様の運の値は7ですね。奇襲部隊の規模は2000のため、2d6で8以上を出せないと同ターンでの決着になります」

「5、だな。もう振り直しは出来ない。

ってことは……」

「では秀則様の将は討ち取られました。彩花様のターンですが、本陣の戦意が10を下回るので自動的に壊走します。本陣の陥落により、秀則様の勝利条件を満たしました。……同ターンでの決着により、引き分けとなります」

「また引き分けか。これって引き分けが多いの?」


結局、戦略の差で終始こちら側が劣性だったけど、戦術の差でひっくり返して、最後に頓死した。引き分けが多いゲームなのか聞いてみると、2連続で引き分けはかなり珍しいとのこと。接待されているような気分になったが、今川さんも彩花さんも全力で首を振って否定していたので2人を信じよう。


「それにしても、軍の規模を増やすと時間がかかるなこれ」

「本格的に行う場合は、1週間近く続けますよ」

「マジか。それで引き分けだったりしたら、余計に疲れそうだ」


軍規模は多くすると多くする分だけリアルで余計に時間がかかるので、短時間で行う時は数万人規模で戦うのが一般的のようだ。今回は、少し数が多かったのだろう。前回よりスムーズに進んだのに、前回より長引いてしまった。


「引き分けは、倍速で行うとなりやすいですが、早々起こるものではありません。……勝った時のお願いは、今考えると秀則さんに迷惑をおかけするようなお願いだったので、引き分けで良かったのかもしれません」

「今の言葉で、何をお願いしたかったのかは大体予想が出来たわ」


結果は引き分けだったが、彩花さん相手に引き分けなら別に良いだろう。ルールブックを片手に長時間ダイスを振り続けるのも、わりと疲れる。


ゲームが終わった後、どのようにしてダイスの目を操っているのか凛香さんと彩花さんに聞いてみた。


「……私は同じ動きが出来るから、6の目を出す動きを再現して、出す」

「私はどう振ればどの目が出るのかわかるので……回転中に出る目を言い当てましょうか?」


すると、凛香さんはまだ理解が出来る方法だった。6ゾロの目が出る動きを保存して、その通りに身体を動かすのならば、分からなくもない。ギリギリ人が出来る範囲内だろう。彩花さんは、完全に人の域を超えているので何も言えない。


確率的には競馬で20頭の馬の着順を10レースとも狂いなく当てる方が難しい気もするが、より身近なダイスで216分の1を6連続で出された方が怖かった。身近なものだと、より一層異常性が理解出来るな。

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― 新着の感想 ―
[一言] ダイスタワーとか賽の目操作がしにくいのを導入しないと。
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