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第92話 お盆休み

7月28日の朝、夏季休暇について具体的な説明を受ける親衛隊員に交ざって俺も今のお盆休みの制度について確認をしておく。天下統一後の話になるけど、俺はお盆休みの期間、経済の停滞を防ぐために墓参り等は8月中に行えば良いという風習を打ち立てた。そのためか、今の日本では8月中のどこかで大型の長期休暇を取得することが普通になっている。


……この件に関しては俺が意図的に常識を歪めた事柄なので、常識なんて所詮は誰かが決めた俺様ルールに過ぎない、ということがよく分かる。戦国時代には既にお盆休みという風習があった日本で、それを分散するという方針は最初こそ抵抗があったものの、わりとすぐに受け入れられた。今の日本の夏季休暇は10日間までとされ、8月1日から8月10日、8月11日から8月20日、8月21日から8月30日と、3つの期間に区分けされている。


俺の想像通りの結果となっているから、テコ入れは要らないだろう。……まあ、職場の三分の一の人間が消える訳だから仕事が滞らないわけが無いのだが。汽車の本数とか8月中のみ2割減るし。


親衛隊では8月の上旬が彩花さん、中旬が愛華さん、下旬が凛香さんの休みとなった。普段は休日が無いという激務なのでゆっくりと骨休めして欲しい。本当に激務と言えるのかは微妙なところだが。


「隊員も、上旬組と中旬組の二手に分かれるのか。……何で二手なの?」

「戦力的には、これでちょうど3分割されています」

「凛香さんが1人で小隊規模の戦力はあるってことになるんだけど」

「秀則様、凛香さんは1人で小隊規模の戦闘能力を持ってます」


平の親衛隊員も上旬と中旬に半数ずつが長期休暇に入るけど、三分の一ずつ休むようにしない理由を愛華さんに聞いたみたら、戦力的には三分の一ずつだという返答だった。彩花さんも、真顔で凛香さんを個人で小隊扱いしている。実際、小隊ぐらいを相手なら1人で鎮圧してしまいそうな凛香さんだけど、流石に可愛そうだ。


「彩花さんは、母方の実家に帰るのかな?」

「はい。北海道まで友達と、女友達と旅行に行って、最終日にはお母さんに会いに行く予定です」

「へえ。北海道か」


彩花さんは数日後から女友達と北海道まで旅行に行くそうだ。わざわざ友達と、と言った後に女友達と、と訂正してきたけど意味はあるのだろうか。


「秀則様が本気で激怒した事の中に、側室の姦淫というものがあったので……」

「……何でそんなことまで記録されているんだ。いや、確かに怒ったけど、屋敷から追い出しただけだよ?」


原因を聞いてみると、俺が嫁の浮気にガチ切れした記録が残っていたようだ。俺自身が浮気というか多くの女性と関係を持っていたのに、自分の事を棚に上げて怒っていたから、正直に言うと黒歴史だ。というか戦国時代にいた頃は大体の行動が黒歴史。たぶん今も現在進行形で黒歴史を量産している。


「あれは、俺の子供じゃないのに女が『あなたの子供です』とかわけのわからないことを言っていたから怒っただけだ」

「名前すら口に出したく無いのですね……」

「……まあ、思い出したく無いぐらいに嫌いではある」


子供が十月十日で生まれることは、戦国時代でも広く知られていた。まあ正確に十月十日、280日後に生まれる訳じゃないけど、10ヵ月ぐらいで見積もっておけば間違いは無い。


そしてその女性は、どう見積もっても予定より3ヵ月は早いのに、普通の赤ん坊より大きなサイズの赤ん坊を産んだ。しかも直感的に俺の子では無いと悟ってしまったので、追及を始めるとまだ特定して無かったのに浮気相手が勝手に切腹し、遺書で懺悔をしていた。


その事件を聞いて女性も自白したので赤ん坊を持たせて屋敷から追い出し、一連の事件は解決したことになっている。俺も鬼じゃないから出産後、体調が良くなるまでは屋敷に置いたし、少ないけど路銀も持たせたから、怒ってはいたけど激怒したとは思ってない。というか部下や嫁の中でも過激な方々が殺そうとしていて、それを止めるのにわりと労力を割いた感じだ。


……身寄りの無い17歳の女に赤ん坊を持たせて僅かなお金と共に追い出したのは、冷静に考えると、十分にきつい仕打ちなのかもしれない。僅かとは言っても、50貫は持たせたけど。お金には余裕があったし。


「まあ、彩花さんは信用してるし、旅先でも大丈夫だと信じてる」

「そうですね。もうお腹には秀則様の子供もいますし」

「……えっ」

「あれ?言ってませんでしたか?あの時から生理は来ていませんし、妊娠初期の兆候も出ていますよ?」

「…………いやいやいや、聞いてない聞いてない」


彩花さんは大丈夫だと思っていることを伝えたところで、妊娠したと報告を受ける。どうやら少し前から生理が来ていないらしく、間違いなく俺の子だと断言していた。


……仁美さんが妊娠のために色々と頑張っていたのは知っていたから、仁美さんから妊娠の報告が来るのはわかる。一番多く同衾していたし、回数も多かった。それなのに仁美さんを差し置いて、数回しか同衾していない彩花さんが妊娠するとは思わなかった。


「俺も北海道に行くわ」

「えっと、秀則様も一緒に来てくれるのですか?」

「実家に帰る予定もあるんでしょ?こうなったら婚前旅行だ」


既にお腹に子供がいると聞いて、1人で北海道に行かせたく無くなったので、俺が一緒に行くと言うと、バタバタと慌て始める彩花さん。何で慌てる必要があるのか気になったので当然追及する。


「……北海道で、誰かに会いに行く予定だったりするの?」

「お、お爺さんには会いに行きます。男です!」

「いや、彩花さんは俺と出会ってから他の男と会った形跡がほとんど無いし、怪しんでいる訳じゃないから安心して?落ち着いて?」


その後の追及で、お馬さんに会いに行くことをカミングアウトした彩花さん。牡馬に乗るだけで浮気だと思われる可能性があるから、少し慌てたそうだ。馬鹿にされているのかと思ったけど、世の中には牡馬とイチャイチャしただけで浮気だと訴えた人もいるから、彩花さんは警戒していた模様。


……牡馬を相手に「妻が浮気した」って、凄い言いがかりだな。当然裁判では妻を訴えた夫側が負けて、誰も得をしない騒動となったようだ。

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