1章 終わらない世界
目を開いて見る。なにもない世界がただ広がっている。ここが別の世界…当てもなく歩き始める。周りにいるのは一人だけ。たった一人の世界。元の世界で過ごした二年をふと思い返して見る。二年間で積み上げたもの。それはたった一度の拒絶で壊れるほど薄かったのか?心の何処かで今までのように期待していた自分がいる。どうせ無理だと自分の中のもう一つの声がいう。あの時の選択は正しかったのか。今となっては後戻りもできない。
"ごめんな、◯◯…"あいつの優しい笑顔が浮かぶ。ふと頬を触ると暖かいものが流れ落ちている。なぜ?理解できない。気持ちの整理がつかないまま、涙で霞んだ目に光が映った。
目がいたくなるほどの眩い光。突然、なぜか走りたくなった。暗いところを抜けた先には、
広大な大地が広がっていた…
ここはどこ?死後の世界ではないのか?色はほぼ二色と言っていい。地面の茶色っぽさと、雲一つない空の青。遥か彼方は景色が揺らめいている。人の姿もなく、この広大な大地に一人残されたことを理解する。"ここは一度、状況を整理する必要がありそうだな。"冷静になろうと努力するが、答えは一つしかない。ここは死後の世界。俺はそう結論づけた。とりあえず歩いてみよう。何かわかればどうにかなるだろうと思い、広大な大地を歩く。人が誰もいないことに幸せを感じてしまう自分にウンザリしながらも、上の世界での今日の出来事を思い返してみる。今日は上から何が降ってきたのか。思い出せない。あれほど苦しい記憶でも、八年半のうちのたった1ページに過ぎない。心底自分に嫌気が差す。考えながら空を眺める。雲一つない。"上の世界なら秋空といったところか。"清々しいそらと心のモヤモヤが正反対にきている。ふと歩いていると大きな岩がある。"あぶな…"体が反応する前に、世界が再び回転する。次の瞬間、再び視界が暗闇に包まれた。