3章
グロテスク注意
「お兄ちゃん、大丈夫?」
そう言った広武は普段は全く発してない凛々しい雰囲気を出していた。
「広武…何でここに…?」
僕は広武に少し恐怖心を抱いた状態でそんなことを聞いてみた。
「いや、江成くんが玉手川高校に行ったって聞いてね。あこそでは楽器を武器にして戦う競技をしてるんだ。」
僕は広武の言っていることが全く理解できなかった。
「そんなの許されるはずがないだろう?玉手川の顧問は何をしてるんだ?」
広武はため息をついた。呆れてる様子だった。
「お兄ちゃん、あそこの顧問が考えだした競技だよ?許すもなにも無いだろう?」
僕はさらにわけが分からなくなった。
「まずなぜお前がそんなこと知ってるんだ?」
その時僕は広武が怖くて仕方がなかった。
「僕は玉手川高校の顧問が経営してるワインドファイトの専門塾に通っているんだ。」
広武の口元は少し緩んでいた。
「ワインドファイトとは?」
「ワインドファイト、略してワイファイ。吹奏楽を英語にするとwind music。楽器を武器に使っていて、もはやmusicではないからそこをfightに換えただけ。Do you understand?」
広武の口元は完全に緩んでいた。
「なるほどな。江成、お前はワインドファイトをこの高校に持って帰ってきたわけだ。早速俺らもワインドファイトを始めてトップ目指してやろうぜ!」
僕はそう言った瞬間、衝撃の光景を目の当たりにした。江成は大量出血で瀕死の状態だった。僕と広武は気づけば30分も会話をしていたようだ。
「江成!お前はこんなとこで死ぬタマじゃないだろう?ワイファイで全国制覇の夢はどうすんだよ!」
僕は少し涙目になった。
「雄大…俺の代わりにワインドファイトで1位になってくれ…ワインドファイトでは強い者同士で戦うと、楽器がこすれた時に素晴らしいハーモニーを出すらしい…それを人は”ハーモナイゼーション”と呼ぶらしい…それを鳴らしてこい…頑張れ…」
江成は安らかに死んだ。広武は泣いた。
「広武。今日のことは忘れよう。お前は悪くない。」
「あああああ########」
広武は奇声を発した。
次の夜、僕たちの顧問が逮捕されていた。殺人容疑だった。僕たちが帰ったあと広武が1人で残ってなにかをしていた。上手いこと罪をなすりつけたんだろう。
さて、来週の僕の予定は修学旅行だ。持ち物の用意をしなければならなかった。
服などの用意をしていた。その時僕は無意識に長い棒状の物を握りしめていた。それは江成のコントラバスだった。僕はそれを静かにキャリーバックの中に入れた。