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第8話「それぞれの進路」



包囲網が出来上がってから5分が経過していた。


「ズゴゴゴッゴクッ…にゃ!クモノ!」


大量の補助魔法の酷使でMPはカラッポ。

魔法の聖水を飲み会の要領で一気しながら秒速で飲み干す。



小学校の牛乳瓶早飲み選手権第1位の称号は伊達ではない。


「なんだあの飲み干す速度は…。」


「給水器で水を飲んでるハムスターの顔してる。」


顎がしゃくれてるって言いたいのか畜生。


鳴くぞ、ヂヂィッって。




周りを見る余裕が出て来たのか会話がチラホラ聞こえてくる。


「もうモンスターの援軍はいないようね」


「し、死ななくて良かったぜ……」



モンスターの動きが包囲網で固定されることによって高火力の攻撃魔法が当たるようになった。



下級魔法のアイスから中級魔法のブリザード、上級魔法のツンドラがモンスターの包囲網を凍らせていく。


溶けそうな所は盾スキルのアイスシールドで再凍結させる。


ランブにあるヘンゼル広場、その中心部分に巨大な氷塊が出来上がるのに時間はかからなかった。


表面にいるモンスターの息の根が止まりピクリとも動かなくなる。


最後は貫通攻撃魔法の雷魔法をプレイヤー全員が使い、ヘンゼル広場の氷塊は魔法の練習台となっていた。


雷魔法によって内部に残っていたモンスターも存命不可能となり息絶える。




こうして、ランブの町で起きたモンスターの群れの襲撃は幕を下ろした。



ーーーーーーーーーーーーーーー




「ノイムちゃん!良かった無事で!」


「あー!にいさまー!にいさまも無事だったのだな、良かったぁ!


あれ?いつも人間スタイルなのに今日は珍しく魚人マーマンになってるのだ?なんで?」


メインストーリーを進めると人間が選択出来るようになるのだが、今の所人間スタイルの人は見当たらない。


「わからない、俺も自分の家で起きた時にはこうなってたんだ」


魚人マーマンは人間の耳に当たる位置にヒレが存在する。


背中には背ビレがあり、身体の体表は青い鱗に覆われている。


髪型や顔付き、体格などがキャラメイキングで変えられるようになっているので、見た目だけでも区別が出来るようになっている。


ルトテッカ大陸のイケメン枠として他の種族からの嫉妬を買っており、ナンパ好きな種族としてのレッテルを貼られ風評被害に晒されていた。


「なんか、リアルのにいさまに雰囲気が似てるのだぁ」


ソウルの髪型は片目が隠れるタイプのストレートで、髪色は緑色、顔はタレ目型下まつげ付き二重パーツをしたキャラクターメイキングだった。


ところがその目つきはタレ目ではなく普通の目になっている。


中身を知ってる人間が見れば本人と認識出来るだろう程度にリアルの顔に近くなっていた。


とりあえずイケメンは爆発すればいいと思う。



「ノイムちゃんはタレ目二重のままだなぁ。まつ毛だけ上向きじゃなくて下向きになってるけど、

元気っていうより大人しそうな顔になってるよ。


リアルに似てるかと言われたら難しい所だね。こんなロリっ子じゃないし」


珍しくにいさまが失礼な事言ってる…⁈


「あははっ、フグみたいだよノイムちゃん!


リアルだったらもっと大人っぽい印象だからなぁ、そこがギャップ萌えってやつか」


屈んだにいさまに膨らませていた頬っぺたを突つかれて口から空気が抜ける。


「あにゃぁ、やめるのだぁ」


「さて、世間話も何だし別の話をしようか」


「にゃ?にゃうー‼︎」


頬っぺたを摘ままれ横に伸ばされる。


「いらいえふのらぁにひさまぁ」


「家に居てって言ったでしょうが、これはその分のお仕置きです。


…にしてもよく伸びるねこの頬っぺ」


「うぇぇー……ごめんなはいなのらぁ……」


「無事だったから良しとするけれども」


ソウル手を離すとパチンと音を立てて頬っぺが元に戻る。




「んで、住宅村を飛び出した経緯を詳しく聞こうか」



「にゃ、たわしの弟がこっちに来ちゃってたのだけれど、

外にモンスターがうろついててコクホウ大陸中都市ボーフゥの住宅村から出られないみたいなのだ。それを助けに行こうと。」


「なるほど、そういえば、コウモリブタで言おうとしてたのって何だったんだい?その事?」


ふと思い出した表情でソウルが問いかける。


「あー、ゲームの頃の畑の制限が消えてたのだ。にいさまもなんか育てた方が良いぞぉ」


モリブタバザーの事について話す。


「食料問題か、気がつかなかった。俺に育てられるかなぁ…」


この様子だと、にいさまはゲームだった頃に作物を何回も枯らしているようだ。

この戦闘狂め。


「あと、にいさまの種族のウォーブルー大陸なんだけど、


トージの町でなんか起こってるみたいで…。

たわしのチームのセラさんって人が巻き込まれてるのだ。」


「あそこって出会いの場所として暇なプレイヤーがたむろしてるっていう…、


あぁ、なんか凄く嫌な予感がするな。


それに、ノイムちゃんのその様子だと助けに行きたいけど手が足りてないんだね?」


たわしの心境を読み取ってか、にいさまがあやす様にたわしの頭をポンポンと撫でる。


「うぅ…たわしスライムじゃないから分裂出来ないのだ、どうか救出をお願い出来ませぬか?」


「俺は男だからね、本物の無法地帯になってるかもしれない場所に女の子を送り出す事なんて出来ないさ。


もちろんそのクエスト、受けるよ」


「(本物の無法地帯…?)」

ピロンッ


「にゃ?」



《個人クエストが受理されました!》


「何、これ」


「NPCからしか受けられなかったクエストがプレイヤー間で出来る様になってるのか…。


よし、キリがいい。


新しい事もわかった事だし、早速行動を開始しようか」



「う、ここでうにゃうにゃ言ってても仕方ないものな!張り切って行くのだ!」



一人と一匹は、それぞれ違う道を選ぶ事になった。






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