表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/76

第71話「茨の城」




「……《ムリネ》」


彼は警備している兵士を眠りへ誘った。


ノイム達が屋上で大暴れしていた頃、ドワーフ男のワードは魔術師の補助呪文である《ムリネ》を使用してスニークミッションを開始していた。


次々と屋上に駆けるプレイヤー達がノイム一行の場所を教えてくれる。


手薄になった地下へ足を運ぶと僅かなプレイヤーが牢を警備していた。


「侵入者だ!屋上に侵入者が来たぞ!!」

「成果はァッ、僕のだぞぉッ!!」

「邪魔だ邪魔!!」

その僅かなプレイヤーも黒髪のオーガ男に追い立てられて援軍へと駆り出されて行く。


「よし……ヒメカツさん!!何処ですか!」

「(?!)」


シンッ…と静まった地下牢に黒髪のオーガ男の声が木霊する。

それを陰から聞いたワードは声の主の顔を見て、そして思い出す。両手にサーベルを装備してる彼は。


「……グッド、そこを動くな」


「ッ……?!アンタは、ワード、さん、か?」


短杖を突き出しながら呪文をストックしつつ牽制すると、グッドは構えかけた武器を慌てて仕舞う。


「ヒメカツさんが見当たらないんです、もう一階は調べ尽くしてて」

「それが本当だと俺はわからない……なんで協力してくるんだ」


グッドから敵意は全く感じなかった、それ故にワードは動揺した。


「借りは、作りたく無いから…………っ!ワードさん、演技お願いします」


グッドが突然俺に迫り羽交い締めにする。

不意を突かれた突然の行動だったが、あまり籠らない力加減を信じて捕まってしまったフリをする事にした。


「(ッ!!ヒメカツ!!?)」

「(ヒメカツさん!?)」


ローゼリアの後ろに静々と従うその瞳に意思の光は無い。


「グッド、そいつは?」

「先程捕まえました。牢に入れておこうと思い地下へ来た所です」


ワードが身体をグッタリするフリをしながら聞き耳を立てる。


「檻は魔法もスキルも使えないが、物理的に破壊は出来る。しっかり手足を縛れ」

「はっ」


そう言って最奥の壁に描かれた美神スティングローズの紋章にヒメカツを操って触れさせると、彼女の身体が光り宙に浮いた。


「丁度良い時に現れた親和性の高いエルフだ、死ぬその時までしっかり働いてくれるだろう」


怪しい輝きを放ちながら空中に浮かぶヒメカツの腹から花の芽が湧く。

ダラリと力が抜けた身体に突然力が入るようにビクビクと脈打ち、瞳の輝きが戻ってまた燻む。それは痛みなのか、覚醒の輝きなのか、傍目からは判別出来なかった。


「あ…!アァ…くぅ、っ!」

「大人しく術を受けていれば、これ以上の苦痛は与えないぞ」


突然発音した彼女の様子に驚いたワードが顔を上げると、覚醒したヒメカツが目を見開く。そのままハクハクと口を動かして酸素を求め、次の瞬間ヒメカツは、恐らく拡散器として使用していたであろう《スピリット・ボイス》のスキルを無詠唱で発動した。


『皆城から出て!!!早く!!!!』


「ッ解いたのか!《苦痛の棘》!!」


ゲームに存在しなかったスキルをローゼリアが発動させる。ローゼリアの髪から現れたムチ状の植物がヒメカツの胸元を引き裂き、弾けた血液が腹に咲いた白薔薇を紅く染めた。


『ヒゅァぁァアあああああ!!!』


その直後この世の物とは思えないヒメカツの絶叫が《スピリット・ボイス》で拡散器され、その場にいた全員が堪らず耳を塞ぐ。

ワードは片耳のみ塞ぎ、背中に隠されていた短杖をローゼリアに向け呪文を放つ。


「ッ《ブリザード》!!!」


アイス系の最上位魔法がローゼリアを襲う。背後からの奇襲に対応出来なかったローゼリアをを1秒とかからない状態で吹雪が覆い尽くして自由を奪う。


代償としてワードの片耳の聴覚が消失したが、それに構う事無くヒメカツへ応急処置の《リベヒール》をかけて降ろそうと試みるがイバラの棘が全身に巻きついていて、腰から咲いた花は内部から芽を出しているのを触れて確認した。

後ろでは分厚い氷の檻に閉じ込めたローゼリアが無数のツタを振り回して檻を壊そうとする音が聞こえる。


『……城…から、出…て』


「ッヒメカツ!!!絶対また来るから絶対生きろ!!耐えてくれ!!!」


《ブリザード》で作られた檻にピシリとヒビが入った。このまま留まっても事態は解決しない事を察知したワードはグッドと共にその場から逃げ出した。


「なんで…ッなんで…!!」


あまりの無力さにワードの瞳から涙が溢れる。


『…いきて、皆』


上がりそうになる嗚咽を頬肉を噛むことで痛みにより誤魔化し、走り出すが、その足取りは後ろ髪を引かれているからか遅い。


こうしている間にも、パラディール城を包む呪いの茨が刻一刻と迫っていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「助けにきたわよぅ、セラちゃん」


「はるちゃん!皆、やっと隠れなくて住むわ……っ、?」


「もっと早く来れなくて、ごめんなさいね」


街中をモンスター達が蠢く様を見て、彼女が何を思ったのか。


言葉を失った森人の母が、猫人の子を抱き寄せる。


「さぁ、脱出しましょ?」


そう言って、彼は、否。


ーーーーー彼女は、笑った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ